適性
訓練場に向かうと、すでにマリーが待ってくれていた。その横には、アスターの姿もある。
「アスターも来てたの?」
急いで駆け寄ろうとすると、マリーが
「ゆっくりでいいですよー。」
と叫び返してきた。その声に応えつつも、待たせてはいけないと走り続ける。
「お邪魔でしたか?姉上。」
上目遣いで見てくる可愛い弟には、どうしても勝てない。
「全然大丈夫よ。」
あー、本当に可愛い。妹や弟って、こんなに可愛いものなのね。
私は早速、と、2人に話しかける。
「2人は、何を鍛えたいの?」
剣、弓、魔法、体術。この世界には、自分を守る術はたくさんある。
「分からないなら、鑑定で見せてもらえると助かるんだけど。」
ゼラと昨日相談したのだが、鑑定を使えば、神の加護の効果でまだ発現していない未来のスキルや職業までわかるらしい。
「いいですよ。お姉様。見てください。」
許可さえもらえれば、官邸は人にも使うことができる。
「姉上、私もお願いします。」
私はこくりとうなずいて、2人の頭の上に手をかざした。そして、心の中で鑑定、と念じる。すると、私の両手の上に2人のステータス画面が現れた。それはどうやら2人も見えるようで、2人は目をキラキラさせながらステータス画面を見ていた。2人とも見たことがないのだろうか?
「ステータスを表示できるのは、鑑定を持った人と神の加護を持ったカトレアくらいだよ。」
ゼラはフハハ、と笑って私をからかった。なんでもいいから早く適性のある闘い方を教えてやってほしい。
「そうだなあ。マリーは勇者らしく剣、アスターは弓ってとこかな?バランスいいんじゃない?カトレアは魔法だし、うまいこと散らばって。」
そう答えるゼラの声はどこか適当だ。飽きてしまったのだろうか。けれど、こればかりは付き合ってもらわなくてはならない。
「マリーは剣、アスターは弓だって。」
ゼラの言葉をそのまま伝える。うまいぐあいに散らばっているのは置いておいて。
「ええ……やったことないです。」
「私もないですねえ。」
ゼラ、あなたが2人に直接指示することはできないの?
ゼラの言葉を私が伝えるのでは、少し面倒だし、ゼラの功績を横取りしてしまったようで申し訳ない。
すると、ゼラは待ってましたといわんばかりに
「あるよー!」
と元気な声で答えてきた。きっと、私越しではなく、直接2人に教えたかったのだろう。
「じゃあ、ちょっと今から不思議なことが起こるけど、驚いちゃダメだよ?」




