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おに、ひとひら  作者: 詠月 紫彩
焔鬼 ~ほむらおに~
28/41

譚ノ間

「おい。暁の奴が訪ねて来たぞ」

「暁が?」


 煉と大河が作った夕食を食べ、酒を飲みながら紫月は問い返す。

 しばし何かを考えたのか


「そっか。分かった。ありがとう」


 とだけ言った。

 彼女はすでに何かに気付いているのではないだろうか。

 煉と大河は目を見合せるが、彼女は美味しそうに夕食であるぶり大根と豚汁を頬張りながら、温燗にした酒を飲む。


「んー。美味しいね。このぶり大根、味がしっかり染みているし、豚汁も最高だよっ」

「お嬢。暁が訪ねてきたということは今回の火災は“鬼”が関わっているのではないか?」

「さぁねぇ。どうだろうね。寒い中、このボクが現場を見て回ったんだけど……よく分からなくてね。“鬼”ごっこをしている気分だよ」


 昼間出掛けていたのは火事となった現場を見に行っていたからとのこと。

 冬の寒い日は大概の情報収集なども煉がやっているのだが、今回は珍しく彼女が情報収集などをしているらしい。


「それで、大河。暁は何か言っていたのか?」

「いや。特には話をしていない」

「ふぅん。まぁ、またその内来るだろう」


 そこで暁の話は終わった。

 紫月はふと、テレビのリモコンに手を伸ばしてテレビをつけた。

 ちょうど、昨日の火災についての報道がなされている。

 火災が発生した原因。

 空き家が燃えたので命を落とした者はおらず、周辺の家も焦げただけ。

 周辺住民が逃げる際に若干の怪我をしたくらいだ。

 昨日、怪しい人物を見た者は誰もいないこと。

 警察と消防が手分けをして火災現場および犯人調査を行っているが、現在の所、目立った手がかりは何もない。

 皆、火元には気を付けるようにという言葉で締めくくられていた。


「誰も見ていないというのが妙だな」


 大河、そして煉はそれぞれにニュースを見て呟いた。

 誰が、何のために。

 “鬼”であるならば紫月がどうにかするのだろう。

 “人”であるならば、彼女はそれ以上動かないのだろう。


「本当に“人”の世は大変だよね。いつでも」


 紫月は酒を煽る。


「それで、現場で何か見つけたのか?」

「何も」


 何も見つけられなかった、と紫月は言う。


「珍しいな。お嬢」

「ボクだって万能じゃないからね」


 珍しい。

 目端の利く彼女が何も見つけられないというのも。


「では“鬼”か“人”か」

「うーん……まだ判断は難しいね。“鬼”が関わっているような気がするけれど……。でも……“人”の皮を被った“鬼”かも。長い時を生きて何度か出会ったよ。“人”かと思っていれば実は“鬼”だった、なんてオチはね」

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