閑話 16
思い付いて勢いで書いてしまいました
~王都に住む、ある青年の視点~
僕が彼女を見掛けたのは、建国記念祭の初日だった。
宝飾品に使われる真珠のような真っ白な肌。
薄紅色の絹糸のような髪。
吸い込まれそうなルビーの瞳。
朝露に濡れたような艶やかな唇をした美人だった。
おまけに、慈愛がたっぷりと詰まっているであろう、女性としての証が眼に止まった。
僕は思わず彼女を尾行した。
声をかけようと思ったからだ。
決して、彼女の宿泊先を突き止めて、そこに宿泊しようだなんて思ってもいない!
僕は栄光ある王立学術院の学術院生なのだから!
そのうちに彼女は商業ギルドに入っていった。
そうか!彼女は大きな荷物を背負っていた。おそらく彼女は行商人なのだろう。
ならば、男爵家の子息である僕が贔屓にしてやれば、僕に感謝し、僕に好意をもってくれる筈だ。
なので、意気揚々と商業ギルドに乗り込んだが、彼女の姿がない。
受付に問いただしたところ、
『個人情報はお教えできません』と、返された。
そのあとも夜遅くまで商業ギルドの前で待ち伏せていたが、彼女はでてこなかった。
翌日は、彼女を見つけることは出来なかった。
くそっ!商業ギルドめ!
僕と彼女との愛の育みの機会を邪魔しやがって!
その翌日は、運良く彼女を見つけることができた。
が、同時に嫌な奴等にも出くわした。
僕より頭が悪い癖に、教職員を家の権力で脅迫して成績順位をあげているクズ共だ。
もしこいつらが彼女を見つけたら、ちゃんと段階を踏んでから話しかける僕と違い、家の権力で無理矢理つれていってしまう!
そんなことをさせるわけにはいかない!
僕は連中を挑発し、彼女から引き離すべく尽力した。
ふらふらになりながらもミッションを成功させた僕は、運良く彼女が図書館に入るところを目撃した。
僕は歓喜した!
彼女も僕と同じで読書が好きなのだ!
彼女はどんな文学が好きなのだろう?
それともエッセイなのだろうか?
僕は流行る心を押さえながら、図書館にはいっていった。
はっきり言おう。
読書をしている彼女は美しかった…。
まるで女神の彫像を眺めているようだった。
いま彼女も僕を意識しているのだろう。
ふと、目が合う瞬間が何度もあった。
その美しい顔を眺めているだけで、僕は心が蕩け、目蓋が下がってしまう。
そして気がついた時には、閉館時間になり、彼女は居なくなっていた。
おかしい。
あれから1週間。
彼女を見ていない。
商業ギルドに図書館。
市場にメリック商会と探してみたが、見当たらなかった。
いったい彼女はどこへ行ったのだろう?
本当なら今ごろ、彼女と相思相愛のスゥイーツな関係になってるはずだ。
いや!
お互いの心の中では、既に愛し合っているんだ!
僕は彼女を探しまくった!
しかし時間だけが虚しく過ぎていった。
「マスター…もう一杯…」
「飲み過ぎですよお客さん」
「うるさい…愛し合う彼女が行方不明なんだ!飲まなきゃやってられないんだよ…」
「どんなお嬢さんだったんです?」
「髪は美しいピンク色。肌は白くて、胸も大きくで…うへへへへへへへ…♪」
「ん?そんな感じの娘を、この間いった馴染みの娼館で、新人だと紹介されましたね」
「なんだって?!」
酔いは一瞬で覚めた。
なんてことだ!
彼女がそんなことになっていたなんて!
そうか!商業ギルドにいったのは身売りのため!
会えなかった日は品定めをされた日!
最後に会った日は、自由な生活の仕納めだったんだ!
図書館での視線は、僕への救難の合図だったんだ!
「マスター!その店はどこ?」
「色街の3番地にあ『BS』って店だ」
「色街3番地の『BS』だな!」
俺は金を乱暴に置き、猛ダッシュした。
しばらく猛ダッシュした後、僕は『BS』という店をさがしだし、即座に飛び込んだ。
「いらっしゃい。どんな娘をお望みかしら?」
「ピンクの髪で色白で、巨乳の娘がいるはずだ!」
「ああ、あの娘ね。新人なのによくしってるわね」
「いいから早く彼女に会わせてくれ!」
「はいはい。ちょっと待ってて」
受付の女が係りに声をかける。
待っててくれ!すぐに君を助けてあげるからね!
そして僕達の愛の巣にかえるんだ!
「おまたせ。ご指名のビビアンちゃんよ」
「怖かっただろう?さあ僕の胸に飛び込んでおいで!」
そこにいたのは、ピンクの髪に白い肌で巨乳の女性だった。
しかしその姿は、まるでオークのメスにしかみえなかった。
「あだしのごどぞんなにぎにいっでぐれるなんて…二度とはなざねえどー!ぶっちゅうぅぅぅぅぅぅぅっ!」
そのオークのメスは、僕を抱きしめ、無理矢理にキスをしてきた。
そのあと、僕の記憶は無い。
~王都に住むある酒場のマスターの視点~
私の、話を聞いた青年は慌てでていってしまった。
そんなに大切な女性だったのだろう。
あの若い2人に幸あれ。
~王都に住む、たまたま酒場にきていた客の視点~
「なあ、ここのマスターの馴染みの娼館ってたしか『ブス専』ってやつだろ?」
「ああ。物凄いのがいるらしいぜ…」
「あいつ…可愛そうに…」
その後、彼の姿を見たものは居ない。
彼はストーカー一歩手前です。
彼が嫌っていた連中は、別にそんなことはしていません。全て彼の被害妄想です。
成績が低いのも彼の実力です。
つまり彼は残念な人です。
最後には幸せ?になったのかもしれませんが
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