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第58話 引導を渡す

お待たせをいたしました

拉致されてから、あっという間に1週間(10日)が立った。


屋敷の人に訪ねたところ、明後日には新年になるらしい。


この1週間、僕は極上品ハイポーションのみを、1日20本のペースで制作していた。

というか、1日20本しか制作できなかった。

材料のローア草・セーダ草・ビッキの実の品質がバラバラで、まずはそれの仕分け。

さらに、乾燥していないものが混ざっているため、それを生活魔法の『水生成』の上位バリエーションの『水操作』で乾燥させなければいけなかった。

作業中に配下のごろつきがやってきて身体を触ってくるので、『睡眠』の魔法で眠らせ、『夢侵入』で、5分ほどの適度な淫夢を見せる。

『魔眼』なら簡単に追い返せるのだけれど、『夢侵入』だと、その間コントロールしてないといけない。

などの理由で生産ペースが上がらなかったからだ。


そして今も、ようやく乾燥が終わったローア草を丁寧に擂り潰しているところだ。

そこに、ノックの音が響く。

ごろつきや男爵はノックはしない。

つまり、使用人のメイドさんか、

「入ってよろしいでしょうか?」

僕を騙した人ということだ。

「なにか御用ですか?」

僕は作業の手を止めることなく、リノに声をかけた。

口調が厳しくなってしまうのは勘弁してもらいたい。


リノは、しばらく無言のままだったが、震えるような声で、ようやく話し始めた。

「…妹が…いよいよ危ないの…お願いします!妹を!妹を助けてください!」

悲壮感の漂う声で懇願してくるが、どうにもならない絶対の問題がある。

「ですから、私はこの屋敷の外には出れないし、妹さんをどうやってお屋敷に招き入れるんですか?」

僕の突きつけた現実に、リノはうちひしがれていた。

そこに思いがけない声がかかった。

「妹を連れてきてもよいぞ」

その声の主は男爵だった。

「本当ですか?」

リノは男爵の言葉に光明を見いだしたような顔をする。

しかし、それは直ぐに泥の底に落とされることになる。

「ただし、入館料1億クラム。診察料2億クラム。製薬料3億クラム。薬の材料は1種類につき1億クラムだ。それを薬を飲ませる前に全額を払うなら、妹を連れてきてもよいぞ?」

どう考えても男爵が許可をする気がないのは明らか。

ただリノをいたぶるためだけに、そういうことをいったのだ。

その言葉に打ちのめされ、部屋を出ていこうとしたリノに、

「ちょっと待ってください」

僕は冷淡に声をかけた。

そして、ハイポーションとは明らかに違う、透明な液体が入った瓶を差し出した。

「これは苦しまずに死ねる毒です。口当たりも良いですから妹さんに飲ませて楽にしてあげてください」

「ほう!そのような毒があるのか!」

「薬を学ぶ者は、同時に毒も学びますので」

僕の差し出した毒薬に、男爵が反応する。

多分、気に入らない相手を殺害するときに使えるとおもったのだろう。

なので男爵が奪い取る前に、

「私は貴女にこそ、一番の恨みをもっています。私に対して罪悪感があるなら、その薬を妹さんに飲ませる事です。妹さんを苦しみから解放できますよ。永遠にね…」

僕の個人的復讐だと告げておく。

しかもできるだけ冷淡に。

「侯爵様が御入り用なら、材料をいただければ制作いたしますので」

逆に男爵には、スマイルを浮かべておく。

「そうだな。その毒はまた今度に。それより、明後日には新年の宴がある。ようやく儂が本物の侯爵に成るときが来た!薬作りは良いから、身体を綺麗にしてから儂の部屋に来い。久しぶりに可愛がってやる!」

「かしこまりました。ではまた後で…」

興奮しながら立ち去っていく男爵の後を、僕の渡した毒薬をにぎり絞めながらリノがでていった。

僕はローア草の擂り潰しを中止し、タオルと着替えを用意して浴室にむかった。

SFジャンルの別作品が好評をいただけていて、ありがとうございます。

この作品も負けないように頑張っていきたいと思います。


ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします。


良~ければ 感想を~ください~♪


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― 新着の感想 ―
[一言] 薬も多量に摂取すれば毒になる。使い方次第では毒は薬にもなる。さて渡した毒は薬か毒か。 とか書いてみたが男爵には去勢できる毒をプレゼント。
[一言] ふむ、ヤムが拉致られてる間のサヘラ婆さん達の動きが気になりますね。
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