第50話 大発見!(本人的に)
本年度最後の投稿です
松の内の投稿は、難しいです…
サヘラさんの屋敷で宿泊させてもらった翌朝。
僕は、屋敷の料理担当をしているコックのノリクさん(おばさん)の手伝いをしていた。
いつもの時間に起きて、杖術の訓練をしている時に声をかけられ、軽く汗を流した後で手伝わせてもらうことにしたのだ。
「なんで客の癖に食事の手伝いなんかしてるんだい?」
自室からでてきたサヘラさんが、厨房で働いている僕をみて、呆れた表情をしていた。
「普段の習慣というか、おちつくっていうか…」
僕はプレーンオムレツを仕上げながら言い訳をする。
「奥様。この娘なかなかいい腕をしてますよ。お客様じゃなけりゃこのままここで働いて欲しいくらいですよ♪」
ノリクさんは嬉しそうにサヘラさんに話していた。
そう手放しで誉められると、なんとなく気恥ずかしい。
そんな事をしながらも、ブート(丸パン)にプレーンオムレツに燻製肉。生野菜にジダ茶という、オーソドックスな朝食が出来上がった。
朝食のテーブルには、僕とサヘラさんだけが座り、ヨハンさんはサヘラさんの斜め後ろに控えている。
「おや?ベリスの砂糖煮なんてどうしたんだい?」
「ヤム様がお持ちになっていたものをご提供くださいました」
「自家製で申し訳ありませんが」
テーブルに乗っていた白い小鉢に入ったイチゴジャムは、死魔の森に自生していた、神様のバッグに保存していた野いちごと、超越調達で購入した苺で僕が作ったものだ。
「なんとも有り難いねぇ。春のものがこんな冬場に食べられるなんてねぇ」
サヘラさんはベリスの砂糖煮を嬉しそうに口に運んでいた。
リガルトさんと同じで意外と甘いもの好きなのかもしれない。
「儂は昼前には建国記念の宴に出かける。昨日も言ったが、ギルドは祭り関係で色々いそがしいからね、見物は1人でいっといで。朝から市も立ってるから、珍しいものもあるだろうさ」
サヘラさんは朝食をペロリと平らげると、お茶のおかわりを口にしながら、僕ににやりと笑いかけた。
朝食がおわり、洗い物もやっておこうとしたが、流石にそこまではお客にさせられないと、ノリクさんに頑として断られたため、市場に出かけることにした。
建国記念祭一色の王都は、朝早くから人々が行き交い、露店や屋台から売り声が響き渡る。
町は色彩豊かに飾り付けられ、降り積もった雪の白いと相まって、実に幻想的に見えた。
夜ならばより一層に幻想的に違いない。
この世界。この国の人達にとっては毎年の光景。
でも僕にとっては生まれて初めての光景だった。
野菜・肉・惣菜・スープ・串焼き・焼き菓子・干し果物などの生鮮食品はもちろん。
モンスター素材・布地・工芸品・玩具・輸入品・食器・楽器・宝飾品といった日用雑貨や贅沢品。
輪投げ・ダーツ・くじ引き・大道芸・演劇小屋・見世物小屋といった出し物も数多く催されていた。
そんな光景に眼を奪われながら歩いていると、薬種・薬の材料を売っている露店を見つけた。
見慣れたローア草・テナン草・ゼーダ草などはもちろん、様々な香辛料もならべられていた。
前世の世界でも、薬として使われていたのだから、そんなにおかしくはない。
その中に、ふと引かれるものがあった。
「いらっしゃい。色々とりそろえてるよ!」
「あの…これは何ですか?」
僕は、広口の壺にはいったそれを指さした。
「こいつは南方から仕入れた『カッカル豆』だ。滅茶苦茶苦いんだが、疲れをとるにはいいらしい」
「1つ食べてみていいですか?」
「いいけど。苦いよ」
おじさんは一粒渡してくれる。
匂いを嗅いでから食べてみると、前世に母だった人物の命令で原材料からそれをつくらされ、兄だった人物の嫌がらせで食べさせられたものに間違いがなかった。
「おじさん!このカッカル豆全部ください!」
食べさせられたのは『カカオ』で、つくらされたのはバレンタインの『チョコレート』だ。
これでチョコレートがつくれる!
というか、チョコレートのお菓子を出しても、怪しまれることがなくなる。
『カッカル豆』は、結構な量だったにも関わらず、かなり安く手に入った。
店のおじさん曰く、
「炒って食べるくらいしかしねえし、疲れがとれても苦いだけ。他の薬種と一緒にまとめ買いでついてくるからどうしようもないからねぇ」
なのだそうだ。
こうして僕は、新しい食材に喜びながらも、お祭りの
雰囲気を、生まれてはじめて楽しんでいた。
そんなとき、周りより一際大きな店舗が目に飛び込んできた。
その店舗の扉には、『メリック商会』というプレートが下がっていた。
「メリックさんのお店ってここなのかなあ?」
カカオを手にいれて浮かれていたのもあって、間違いないだろうとおもいながら店にはいってみた。
店舗の中は、前世にテレビをちらっと見た時に映った、高級デパートのようだった。
はっきりいって場違い以外の何者でもなかった。
ともかく、メリックさんを呼んでもらおうと、店員さんに声をかける。
「あのう…すみません。私は薬師のヤムともうしますが、店主のメリックさんはいらっしゃいますか?」
すると店員さんは申し訳無さそうな顔をし、
「申し訳ございません。会長のメリックは現在商談のために別の都市に出かけておりまして…」
事情を説明し、丁寧にお詫びをしてきた。
よく考えたら、アポイントメントもとっていないのだから、居なかったとしても当然だ。
「そうですか。ではまた機会がありましたらよろしくとお伝えください」
僕はお辞儀をしてから、そそくさとお店を後にした。
高級品ばかりでなんとなく落ち着かないのもあったので…
なんで食品の名前を変えてしまったのか。
非常に悩んでしまいます
収穫時期。いわゆる旬は同じにしてあります。
なんとかオリジナルの野菜なり果物なり考えようと思っています。
今年の2月に掲載を初めて、なんとか続けてこれたのは、ひとえに皆様のおかげで御座います。
新年度もよろしくお願いいたします
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