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第51話 届いて欲しい祈り

この作品での新年初更新です。

メリックさんの店を出たころには昼食の時間になっていたので、屋台の食べ歩きをしてみることにした。

前世では出来なかったことだ。

肉の串焼きや、具だくさんのスープ。

カットされた果物に素朴な焼き菓子に焼きたてのパンなど、前世とはラインナップこそちがうが、どれも本当においしかった。


絡まれたりするトラブルもなく食べ歩きを終え、カッカル豆を試してみたいのでサヘラさんの屋敷に帰ろうとしたところ、小さな教会が視界にはいった。


僕はその時、神様達を思い出した。

文字通り地獄から助けていただき、知識と技術と祝福をくださった恩神(おんじん)

届くかどうかはわからないが、元気でやっていると祈ってみようと思った。

そう思った時には、すでに教会の扉に手をかけていた。


教会の中には余計な装飾はなく。

礼拝のための椅子が並び、正面には女性像が鎮座し、その前に教壇があるだけ。

ここはパウディル聖教の教会だから、あれがパウディル様なのだろう。

実は教会にも聖堂にも入ったことがないので、見るのは初めてだった。

だからなのかはわからないが、物凄く神聖な感じがした。


僕は一番後ろの椅子に座り、両手を組んで眼を閉じ、最高神様や智嚢神様・技能神様・闘神様の姿や言葉を思いだし、感謝の言葉を心の中で呟いた。

それと、僕を受け入れてくれたこの世界の主神パウディル様にも、お礼をいっておく。

僕のような異物を受け入れるのは、大変な苦労もあるだろう。


「熱心に祈っていたようですね」

そのお礼と感謝の祈りが終わると、不意に声をかけられた。

その声の主は、ラーナさんとは違う雰囲気の修道女(シスター)さんだった。

もしかすると、お祈りが不味かったのかと考えてしまい、

「す…すみません。産まれた土地が田舎過ぎて司祭様から礼拝の仕方を習ったことがないので適当にやってしまって…」

思わず謝ってしまった。

智嚢神様からは、礼拝のやり方にとくに決まりはないと習ったのだけれど、現在はかわっているのかもしれない。

しかし修道女(シスター)さんは怒っている様子はなく、にっこりと微笑んでいた。

「大丈夫ですよ。神パウディルも、欲にまみれた司教や枢機卿の正しい礼拝よりも、真摯に神への感謝を捧げる貴女の簡素な祈りの方がお慶びになります」

そう言っている修道女さんの顔には、うっすらと怒りが沸いているのが分かった。

「そうだと嬉しいです…」

その怒りが僕への簡素な祈りに対してで無いことを願うばかりだ。

「ところで貴女、何か悩み苦しんでいる事があるのではなくて?」

修道女さんのその不意の言葉に、僕はピクッと反応してしまった。

その僕の反応に気がついたのか、修道女さんは申し訳無さそうに声をかけてきた。

「ごめんなさい。誰だって悩みくらいあるわよね。無い人の方が居ないくらいだもの。拝金主義の司教や大司教や枢機卿は、そんな風にいって悩みを解決するふりをしてお金をむしりとるのよ。そのせいで敬虔な信者がどんどん減って…」

が、後半はまたもや怒りがこみ上げてきたらしい。

「ああっ!ごめんなさいね!…おっほん!悩める者よ。その悩めることを話してごらんなさい。少しでも救われるかもしれませんよ?」

仕切り直してきたその言葉を聞き、僕の脳裏には様々な事がよぎった。


僕に命令をしてきた冒険者ギルド長の暴挙により、町の人達に迷惑がかかった。

僕を逆恨みした受付嬢のせいで、街が滅びるかもしれなかったし、亡くなった人もでてしまった。

スタンピードの時にアンジェリカさん(修道女さん)に励まされたものの、その時の思いが消えないわけではない。

僕さえ居なければその人達は…

そう強く思った時に、

「私は…この世界に産まれて来て良かったのでしょうか?」

僕は思わずそう呟いてしまった。


その瞬間、僕は修道女(シスター)さんに抱き締められた。

「もし神パウディルが貴女を拒絶するのなら、排除しなければと思ったなら。貴女は今ここには居ないわ。ここにいるということは受け入れられたということ。安心しなさい。神パウディルはそんなに狭量じゃないわ」

普通に考えれば、気休めの言葉でしかない。

でもこの修道女(シスター)さんの言葉は、なぜか自然と受け入れることができた。

何故かはわからないが、技能神様に抱き締められた時のような感じがした。

「それと、もし感謝を伝えたいなら御供物を供えてみては?そうですねえ。神パウディルは甘いものがお好きだそうですよ♪」

修道女(シスター)さんは僕を抱き締めたまま、神様の好物という名の自分の好きなものを要求してきた。


もしかしてこの世界に甘いもの好きが多いのは、神パウディルの影響なのだろうか?


教会を後にしてサヘラさんの屋敷に戻ると、早速厨房を借りてチョコの試作を開始する。

カッカル豆の発酵・乾燥は終わっていたので・焙煎・粉砕をへて、カカオマスからカカオバターをつくりカカオバターを取ってないカカオマス・砂糖・牛乳(キムル)をまぜる。

そうして固めてできたものがチョコレートだ。


試作品を、ヨハンさんやノリクさんを始めとした使用人さん達に食べてもらったところ、なかなかに好評だった。

特に若いメイドさん達には、崇拝されかねない勢いだった。

そんなおりに、建国記念の宴からサヘラさんが帰ってきた。

「ん?なんだいこの匂いは?」

帰ってくるなり、屋敷に漂っているチョコレートの匂いに気がつくと、その足で厨房にやってきた。

「あ、お帰りなさい」

「やっぱりあんたかい…何をやったんだい?」

サヘラさんはため息を付きながら、作業台を眺めていく。

「カッカル豆を使ってお菓子を作ってみたんです」

「あの苦い豆でかい?」

サヘラさんは置いてあったチョコレートを手に取り、おもむろに口に放り込む。

そうしてしばらくもごもごしていたが、チョコレートが溶けて甘さが広がると、眼を見開いた。

「…いったいどうやって作ったんだい?」

「それは秘密です…」

きっちり飲み込んだ後、僕を睨み付けながら訪ねてきた。

が、エクストラポーションの件があるので、かわしてみることにした。

意外な僕の反撃に、サヘラさんは少し驚いたあと、

「ちょいと頼みがあるんだが、いいかい?」

真剣な表情で、そう持ちかけてきた。

今回はこの世界での魔法の種類です


精神魔法(無属性魔法)

術者の魔力のみで行使される魔法。多種多様なものがあり、なかでも運動エネルギーを扱うものが多い。

属性のつかないすべての魔法がここに分類され、細分化されている。

超能力をイメージすると分かりやすい。

『探知』『伝達』『物体操作』『運動エネルギーへの干渉』『付与』『付加』『障壁』『感覚器への干渉』『時空間への干渉』『生活補助』など


・生活補助

精神魔法のなかでも、生活に便利な魔法のこと。

『発火』『水生成』『冷却』『送風』『照明』『清掃』『消臭』などの魔法がこれにあたる。

術者の魔力によっては、できることの幅が広がる。(『気流操作』は『送風』の上位版)


・時空間への干渉

精神魔法のなかでも、時間と空間を操る魔法。

空間拡張は使い手(マジックバッグ制作者)が多いが、転移魔法・時間魔法は皆無。



精霊魔法

光・闇・雷・風・火・水・氷・土・樹の9属性の精霊の力を借りて行使する魔術。



治癒魔法

治癒に特化した魔法。

神の力を借りなくても行使できる。



神聖魔法

創造神・女神パウディルと生命神・女神ヴィルタナに認められた者しか行使できない魔法。

神職に着いていなくても習得できる場合がある。

なお『拝金主義者の僧侶』は習得できない。



暗黒魔法

創造神・女神パウディルと冥界神・男神モルテスに認められた者しか行使できない魔法。

神聖魔法の対極だが、魔法の効果を『神の罰』と考えているため、使い手が差別や迫害をされることはない。

神聖魔法と同じく、『拝金主義者の僧侶』は行使できない。



召喚魔法

力ある存在を呼び出す魔法。

召喚対象によっては殺される場合がある



七草粥をつくったのですが、なぜか異様に美味しかったです。

寒かったからでしょうか…


無属性や生活補助にはこんなのがあるよという方は、教えていただけると嬉しいです


ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします

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― 新着の感想 ―
無属性魔法だと時空間系で千里眼、未来視などは有名どころではないかと 他にも伝心とか魔力視(魔力を見る)、魔力視覚(視力の代わりに魔力で周りを見る。能動型と受動型がある)とか 生活魔法だと浄化、殺菌、殺…
[一言] あけおめ、今年も楽しみに読ませていただきますね。 なんか色々溜まってそうなシスターさんですね(笑)、教会の腐敗は深刻そう。 さてサヘラさんはどんな頼みごと?その教会関係かな。
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