穂波1 プロローグ〜出会いは 互いの道の上〜
主人公とヒロインの名前を変更しております。
主人公→下総築
ヒロイン→高田穂波
また、主人公、ヒロインの「ある要素」を削除しました。
今で読んでいただいていた方、混乱させてしまい申し訳ありません。
9月の夕方の公園、暑さも多少和らいだ中、今日も夕焼けを追いかけながら走る。
空に残る今日の光を追いかけて、掴もう、掴もうと足を回すも、今日も置いていかれてしまう。
掴めないのがわかり、道の途中で立ち尽くす。息を整えてるのに、気持ちは整わない。
私、高田穂波は何もない。普通の人だ。他人の目には、どうにも映らない。
大学を卒業し、社会人になって、何か始めたいなんて考えた時に、特に何か思いつくわけでもなく始めたランニングは、かれこれ4ヶ月以上続いている。元運動部だっただけあって、慣れてくれば楽に走れるし、スマホのランニングアプリに溜まるログも、継続を後押ししてくれる。
だんだん日も短くなってきて、そろそろ仕事終わりのランニングじゃ、夕焼けも見納めかな?なんて思うと、ランニング意外に何も始められていない自分に焦り始めてくる。
歩きながら息を整え、持ってきたボトルで水分補給をし、広場でストレッチをする。見渡すと、帰り支度をする母子や、犬の散歩をするおばさま…あと、やっぱり今日もいる。
私と同じ歳か、ひょっとしたら少し上くらいであろう、男性。毎週月曜日、ランニングのあとだろうか…息を整えながらストレッチをし…あ、始まった。
右足を前に出し、手を前に出し、戻す。それをずっと繰り返す。時々首をひねりながら、もう一度。終わったら、左足に変えてもう一度。
その後、また右足を前にして、手を顔の前に上げて、下ろす。
すごく、怪しい動き。初めて見たときは、宇宙と交信でも始めたのか、新興宗教の祈りでもしてるかと思った。でも、空を見上げてもUFOがいる様子はないし、変な祈りの言葉をつぶやく様子もない。
私は頭のなかで、彼を「奇行の彼」と呼ぶようになった。
周りを気にしている様子もないことから、彼にとっては恥ずかしい動きではないのだと思う。また、彼も最近は私を認識し始めたようで、公園を出るときはお互い無言で会釈をして挨拶するようになった。悪い人ではないようで、私に向ける笑顔は爽やかである。
今日は、魔が差したんだろう…4ヶ月以上ランニングをしても、動きのない自分の人生に対して、少し気分を晴らしたかった。そんなときは、いつもこの曲を口ずさむ。
奇行の彼がふと反応する。まぁ、突然女が歌い始めたら、びっくりもするだろう。
構うものか。こっちは気分を上げるためになりふり構わず歌っているのだ。
しかし、Bメロに入り、そろそろサビというところで、奇行の彼が急に同じメロディを口づさみ始める…
…
少し、楽しくなる。私が好きな曲をお互い知っている人が、合わせて歌ってくれているというのに何かときめいたものも感じた。もともと落ち込んでいたのもあり、多少タガが外れていたのだろう。それに、この人、歌がなかなか上手だ。
…
ワンコーラスを歌い終わり、ふふっと笑い声が漏れる。向こうもおかしそうに笑う。笑い方が、なかなかに豪快だ。
一通り笑い終え、彼が私に問いかける。落ち着いた、丁寧な問いかけ。
「その曲、私も好きです。お好きなんですか?」
これが、奇行の彼…下総築との初めての会話。
そして、わからなくて、掴みたくても掴めなかったものに指が触れた瞬間だった。




