11
同名の作品がありますが、そちらをこちらに色々直してから統合するつもりです。
なので、11はそちらを読んでいないと意味が繋がりにくいかもしれません。
すみません。作業します。
それから、ブックマーク、★(評価)、イイネ、ありがとうございます!
※統合しました。
翌日コーデリアは護衛一人を共に、遠乗りに出る事にした。
最近色々あって気晴らしがしたかったのである。
厩舎を探し歩いて、目当ての人物をみつけた。
「ザック、出掛けるわよ鞍を用意して」
「お嬢、またいきなりだな。今日は勉強はいいのかい」
「……たまにはいいでしょ、先生には許可をもらったもの」
ザックはコーデリアが下町をぶらついている時に知り合った縁で雇った護衛だ。
公爵家の騎士を信用していないわけではないが、コーデリアが出掛けるときはこの男を共にする事が多い。
ザックは口の利き方はなっていないが、腕は確かで馬の扱いも上手い。馬が好きすぎて、馬丁でもないのに厩舎に入り浸っている。
「コーデリアさん、どこに行くんですか?」
そこに、ちょうど乗馬訓練をするためにロイドがやって来た。
「遠乗りに行くの。スカッとするにはやっぱり乗馬よね」
今日のコーデリアの出で立ちはシンプルなブラウスにジャケットを羽織り、女性用に仕立てたトラウザーズと、ロングブーツの組み合わせの乗馬服だ。髪も簡単なポニーテールで、幼いながらスタイルの良さが際立つ美しさだった。
一瞬見惚れたのを誤魔化すのに、ロイドは早口になった
「俺も一緒に行っていいですか?まだ公爵邸以外の場所に行った事なくて……!」
「でも、あなた遠乗りに付いて来れるの?」
ロイドはぐっと言葉を詰まらせたが、やはり行きたいと食い下がる。
「行けます!最近は速駆けも上達しました!」
「ハハ、坊っちゃんに何かあると拙いんで、良ければ俺と一緒に乗りますかい?」
男のプライドと、コーデリアと一緒にどこか行きたい、という誘惑とを天秤にかけて、圧倒的に後者が勝った。ロイドはザックの提案にのる事にした。
「……一緒に乗せてください」
「ハハハ、坊っちゃんは乗馬訓練を始めたばかりだ、上達も早いしすぐに乗りこなせるさ、そっちのじゃじゃ馬はどうか知らねぇけどな!」
「ちょっと!じゃじゃ馬って誰の事よ!」
「あっ!早く出ないと日が暮れちまう!さぁ乗った乗った!」
公爵邸を後にしてしばらくしてロイドが訊ねた。
「ところで、どこに行くんですか?」
「川沿いを進んだ先にある、ヒースの丘よ。荒れ地だから牧草も育たないし、畑にもできないんだけど、ヒースが綺麗なの。私のお気に入りの場所よ」
一刻(二時間)ほど川沿いを走らせ、小休止を挟みながら、街道を逸れて整地されていない道を進む。民家も何もないような場所からさらに半刻かけてやって来た。
そこには、地平線を埋め尽くすヘザーやヒースの花の絨毯が広がっていた。
コーデリアとザックは馬から降りると、馬から鞍を外し、汗を拭き、ブラシをかけて飼い葉や水を用意して、とかいがいしく世話をやいていた。ロイドも手伝ったが『普通の公爵令嬢って馬の世話までするものなんですか?』と訊ねたところ、ザックにしこたま説教された。ザック曰く『馬の世話を出来ない者は馬に乗る資格はない』のだそうだ。
コーデリアは両腕を空に突き出して大きな伸びをすると、スーハーと深呼吸した。
「はーここに来ると呼吸が捗るわ」
そしてそのまま大の字に寝転んだ。
「ロイドも寝転がりなさいよ。気持ちいいわよ」
ロイドはコーデリアの隣に腰を下ろして、同じように寝転んでみた。
コーデリアの方を見ると、思いがけず近くに顔があって、慌てて空を見た。
青い空と白い雲と、花の香りのする風に、ロイドはいつの間にか眠っていたらしい。
ロイドが目を覚ますと、コーデリアもザックもいなかった。遠目に二頭の馬が遊んでいるのが見える。
「ロイド、お昼ごはんにしましょ」
後ろから声をかけられて振り向くと、コーデリアが包み紙と水筒を持って立っていた。
「俺、どのくらい寝てました?」
「十分とかくらいじゃない?疲れているのね。子供なんだから、もう少し遊びなさいよ」
コーデリアはロイドの額を人差し指でつついて言った。
「二人分しか作ってないから、ロイドは私と半分こね」
そう言って手渡された包み紙には、パンに焼いたハムとチーズを挟んだだけのサンドイッチが入っていた。
「公爵令嬢が手ずから作ったサンドイッチよ、あなた達、心して味わいなさい」
ザックは『へへー』とうやうやしくサンドイッチを受け取り、大口を開けてサンドイッチにかぶりついている。『貴族たる者サンドイッチもナイフとフォークでいただくものだ』とロイドは教師に教わったが、ここでは気にしなくていいようだ。
コーデリアも胡座をかいて両手にサンドイッチを持って頬張っている。いや、その座り方は貴族以前に女子としてどうなんだ、と口にしかけて黙っている事にした。
「か~疲れた身体にこの塩気が利く~」
ザックが言うように、コーデリアのサンドイッチはちょっとしょっぱかった。
でも、汗をかいていたのでこの塩気がちょうどいい。
「悪かったわね!今度はお義母様にお弁当を作ってもらって、お義母様も誘って近場にピクニックにでも行きましょうか」
「お嬢、公爵家の料理人が泣きますぜ」
「だって料理人に頼むと、それは豪華な三段重ねのお弁当を用意されて、カトラリーやら、テーブルや椅子まで用意されるのよ。美味しいけど、これじゃないってなるの!」
「……うん、奥様に頼みましょう」
三人はそんなやりとりをしながら、笑いあってコーデリア特製、塩分マシマシサンドイッチを平らげた。
***
まだ少し時間があるので、コーデリアとロイドはヒースの丘を散歩することにした。
なぜか二人は手を繋いでいる。自分より小さいロイドを心配して、コーデリアが繋いだのだ。
コーデリアはゲーム内のあの鬼畜なロイドを知ってはいるが、あのロイドと、小さなこのロイドがうまく結びつかなくて、思わず手を貸してしまうのだ。
ザックは二人を生暖かい目で見ながら、『俺の目の届く範囲で散歩するように』と言ってその場で待機している。
「コーデリアさん……」
「ねぇ、そのさん付けやめない?」
「じゃ、じゃあリアって呼んでいいですか?」
「いいわよ、でもコーディの方が一般的じゃない?」
「俺は、リアの方が呼びやすいです」
嘘である。ロイドは他の人とは違う、自分だけの呼び名が欲しかったのである。そしてそれは自分だけに許してほしい、と思ったが、それはまだ言わないでおく。
小さくてもロイドはロイドなのであった。
――いつか、リアより大きくなって、リアを守れるくらい強くなって、またこうして手を繋ぎたい――と、ヒースの丘で綺麗な金の髪を靡かせて笑っているコーデリアを目に焼き付けながら、ロイドは強く願った。




