01
その日コーデリアは夢を見た。
コーデリアは公爵家の騎士達に連れられて、敷地内にある貴人用の牢、北の搭に収容された。
「わたくしを誰だと思っているの!お前達、こんな事をしてただで済むと思わないで!」
体格の大きな騎士達に気丈に食ってかかるが、なす術もない。騎士達はコーデリアを搭に閉じ込めると、何も言わず立ち去ってしまった。
泣こうが喚こうが、返事をする者は誰もいない。
部屋は寒々しい石造りで、調度は立派だが、窓は小さく鉄格子が嵌められており、手を伸ばしても届きそうにない。
日も射さない暗い室内で、いつしかコーデリアはうたた寝をしていた。
コーデリアを目覚めさせたのは、鉄製のドアが小さく軋んで開いた音だった。
そこに居たのは、夜の帳から抜け出たような漆黒の髪と瞳、衣装も喪服を思わせる黒一色の男だった。死神を思わせるその出で立ちにコーデリアは小さく息を飲んだ。
「ご機嫌如何ですか?姉上」
その男の持つカンテラが、死人を思わせる男の青白い顔を照らした。
「なぜわたくしをを牢に繋ぐのです。なんの権利があってお前は――」
「公爵閣下も納得してくださいましたよ。あなたには、公爵夫人殺害の嫌疑がかかっております」
「わたくしではないわ!あの女が勝手に飛び降りたのよ!」
「言葉巧みに屋上へ誘いだし、言葉を重ねて母を詰り、あなたに立てられた、社交界での心無い噂に気鬱で塞ぎ込んでいた、あの人の背中を押したのはあなただ。なぜそこまで母を、いや、俺を憎むのか、俺が憎いなら俺を殺せばいいものを――」
そこで初めて男の瞳に感情の揺らぎが見えたが、その揺らぎはすぐに消えてしまった。
「あなたから何も奪うつもりなど無かった……始めから、俺も母も……いやもう何を言ってもあなたには届かないのだろう」
「……わたくしをどうするつもりなの」
「公爵家がどんなに手を尽くして揉み消そうとしても、人の口に戸は建てられませんからね、醜聞まみれのあなたは、一生この檻の中ですよ」
「……お前が、わざわざ噂を振り撒いたのね」
「さあ、どうでしょう」
男――義弟のロイドは、搭の鍵は自分しか持っていない事、獄吏に色仕掛けをしても出られない事、食事は一日二回、扉の小窓から出てくる事、火事になったら困るので火の気はない事、身の回りの世話は自分でやるようにと、それだけ言って帰ってしまった。
「待って!ねぇお願いここから出して!わたくしが悪かったわ!ロイド!ねぇ誰か助けて!」
コーデリアの叫びは夜の静寂に飲み込まれて消えた――。




