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《①》
言葉もよく知らず字もろくに読めず
痩せこけた子供
どこをどう歩いたのかなど
もう覚えてなどいない
どうやらオレは金と引き換えに老人の養子になったようだ
子供心に覚えているのは親父と老人がオレについて口論をしていたこと
そして親父が知らぬ男達に袋叩きになっているところ
オレの意思とは無関係に
本の山の小さな木造の家での老人との2人暮らしが始まった
老人は週に何度か家を空けるが部屋の奥で本を読んでいた
オレはやることがない毎日を本で時間を費やした
寝床は積み重ねれられた本の上に煎餅布団が敷かれた1番奥の片隅
せめて平坦にしようと抜き出して手に取った本が俺の最初の本だった
その本の中には空間に浮かぶ星という存在が散りばめられていた
老人がオレに与える物は紙と鉛筆
食い物や衣服などは与えられた物だけで欲するという概念が無かった
別に監禁されていたわけではない
ただオレにとっての外界はこの家の手入れされていない庭だけである
ラジオという耳から得る情報で
言葉を知り
家の外には人の世界があることは理解していたが外に出ようという発想がなかった
何かを聞くと老人はどこかから引っ張り出した本をドサッとオレの前に放り出した
24時間鳴っているラジオを聴きながら
本という世界に生きていた




