第58話
イベントが完了したので俺も晩御飯を食べた後にお酒を飲む事にした。
《日本ではお酒は二十歳になってから》
リッチさんがアンデッドダンジョンから超レアドロップアイテムのウィスキーを持ってきてくれた。
なんと……50年物の樽。
最初はショットグラスでそのまま飲んでみる。
アルコール度数60度を越えているウィスキーが信じられないようなレベルでまろやかになってる。
喉から食道を通り胃に落ちていくのがわかる。
味ものど越しも最高だわ。
錫のグラスを2つアイテムボックスから取り出して、ロックアイスとウィスキーを放り込んで……まずはリッチさんと乾杯する。
チェーサーはアニーが持ってきてくれた霊峰水。
大きめの2つのジョッキに霊峰水を入れてテーブルにおいた。
ツマミにはアイテムボックスに大量に余っているオーク肉を使ったチャーシューとジャーキーとソーセージ。
「ホープラーの言うとおり錫のグラスだとまろやかさが増すな。」
「元のウィスキーが旨いからね。」
「ダンジョンコアからホープラーに渡してくれと頼まれてたウィスキーだよ。」
「あー、そういや成人のプレゼントで何が欲しい? ってダンジョンコアに聞かれたから、簡単に手に入らないダンジョンならではの酒が飲みたいって言っておいたわ。」
「ホープラーのおかげでダンジョンのレベルが何回か上がったから、ようやく手に入れられるようになったとダンジョンコアが言ってた。お礼もついでに言っといてとも頼まれてたわ。ホープラー、ありがとう。」
「いえいえ、どういたしまして。また大量のヘラカイオンが手に入ったから明日にでもダンジョンに送るよ。」
「すまんな、いつも。助かるよ。」
「こんなに美味しい酒をもらったしな。」
「確かにこれは美味し過ぎるな。」
ユーとミーはキャンプの後のトレーニングで疲れきっていたみたいで、おやすみなさいと言いながら目を擦り自分のベッドにノロノロと歩いて行った。
俺とリッチさんは酒と話を続ける。
「そんなにヘラカイオンが大量発生してたのか?」
「汽水湖の森の木に深刻なダメージが出始めてたよ。皆で2千頭以上を討伐したことで少しは落ち着いたと思うけどね。パシーももう大丈夫だろうと言ってた。汽水湖の森自体が広がっているし、森の木はパシーが補修してるから。」
「汽水湖の森は面積の30%ぐらいは汽水湖なんだけど……2千は多過ぎるな。」
「俺のアイテムボックスに千以上あるから。定期的にアンデッドダンジョンに送るよ。」
「それはありがたい。それと……」
リッチさんがキョロキョロしてから小声で話しかけてきた。
「ユーとミーはどうなってた? 恋愛は上手くいきそうか?」
「俺も恋愛マスターって訳じゃないし、これから先はわからないけど……とりあえず仲良くデートしてたよ。」
「うんうん。あの双子は龍の森の子供なんだから幸せになって欲しいな。」
「間違いない。」
「それはそうと……ホープラーの方はどうなんだ?」
「グレタと上手くやってるよ。俺がのんびりし過ぎているからグレタに時には怒られるけど。明日はデートする予定があるし。」
楽しくて美味しい酒と話が止まらないまま夜が更けていく。
翌朝は俺は1人で龍の森の岩山の頂上で日の出を拝んだ。
リッチさんは朝の散歩に行ってそのままアンデッドダンジョンへと帰ると言ってた。
岩山の頂上は既に雪と氷の世界になってる。
ハイエルフには何も関係ないけど。
真っ白な息を吐きながら新鮮な冷たい空気と日の出の太陽光を浴びていると、自分自身が光合成を行っているような気分になって気持ち良い。
リッチさんとつい先程まで飲んでた酒も光合成で体内のアルコールまで抜けてるような気分がする。
……ハイエルフの新陳代謝の良さですぐに消えてしまうだけなんだけど。
15分ほど深呼吸を繰り返しているだけで心身共にリフレッシュできる早朝のこの空間は、俺のお気に入りで特別な癒しの空間。
世界樹に大量に汚れた魔素が集まり、世界樹の力で浄化されて世界中の地下を走る龍脈へと流されていく。
魔素の循環。
俺が龍の森の住処に帰ると気配に気付いたエイス達も目覚めた。
左手からスラリンに魔力を与えながら、右手はエイス達を順番に撫でる。
今日の朝食はお粥にした。
ユーとミーのリクエスト。
おかずで出した塩サバや塩鮭、梅干しや沢庵などの漬物だけでなく、食べるラー油やネギ味噌なんかも出してある。
お粥のお供が沢山あるのでハフハフしながら食べる。
食後はのんびりコーヒーを飲んでると、ユーとミーからアーリンドル王宮前広場まで転送して欲しいと頼まれた。
今日は近衛騎士団と聖騎士団との合同トレーニングと模擬戦かあるんだと前から聞いてたな。
夕方に迎えに行くからと伝えてから転送魔法で、アーリンドル王宮前広場にエイス達も一緒に送ってあげた。
エイス達も訓練に参加して欲しいと聞いてたからエイス達も行きたがってたしね。
俺は今日はグレタとデート。
ラハティカンナス獣人国に2人で行って昼食とお買い物デートの予定。
待っていたらグレタに渡した念話の魔道具から連絡がきた。
転送魔法で龍の森にグレタを呼び寄せた。
「ヤッホー、ホープラー。キャンプの引率お疲れ様。」
「ヤッホー、グレタ。疲れてはいないよ。
ちょっと面倒な事があっただけ。」
「ちょっと? ホントに?」
「ちょっとだよ。参加してくれたメンバーが楽しんでいたからそれでよしだね。」
「ユーとミーはキャンプはいつも楽しんでいたけど、今回はさすがに疲れてたんじゃない?」
「龍の森に帰ってきた後でハードトレーニングをしてたから、キャンプではそれほど疲れては無さそうだけど……肉体的な疲れはそれほどでもなくても、精神的な疲れはあっただろうからな。昨夜は晩御飯を食べたらすぐにうとうとしてたからな。」
「それは結構疲れてたからなんじゃない?」
「それもあったからハードトレーニングをして肉体的に疲れさせれば熟睡出来て、心と身体の疲れが取れるんじゃないかって思ってた。彼らもそれは理解してたからハードトレーニングを黙々とこなしてた。」
「彼らは若いから熟睡するだけでもリフレッシュ出来るわね。」
「今日のユーとミーはアーリンドル王国近衛騎士団と聖騎士団との合同訓練に参加してるよ。前から楽しみにしてたし嬉しそうに出てったから疲れは残ってないと思う。エイス達も訓練に参加してるから何か異変なあれば気付いてくれるだろうから。」
「じゃあ、大丈夫ね。それはそうとホープラーはラーフィー王からラハティカンナス獣人国について何か聞いてる?」
「何かって?」
「ラハティカンナス獣人国が別の大陸から移動してきて、大量の獣人が移動してきたこの状況を利用して別の国で迫害を受けている獣人が移民を希望しているって噂があるのよ。」
「ふむふむ。」
「だけど迫害を受けている獣人というのは奴隷に近い扱いを受けている人々だから、勝手に移民はさせないと他国では凄い反対されていて、便利で安価な労働者が減るからと移民希望の声が黙殺されて……それでもなお声をあげる獣人に奴隷魔法で声を出せなくしているという情報が集まってきてるの。」
「そんなヒドイ事しててアニーにバレたら国ごと滅ぼされるじゃん。」
「その情報を我が国に持ち込んだのがトルベッケトラース通商衛星国の本国なのよ。アニーさんに連絡取りたいんだって。」
「ん、わかった。」
俺は念話魔法でアニーに連絡すると即座にトルベッケトラース通商衛星国の本国へと移動して詳細な話を聞いてくるってさ。
「アニーさんに連絡したらトルベッケトラース通商衛星国の本国へとすっ飛んでいったよ。」
「良かったわ。アーリンドル王国首都フェリクスからの定期便で今朝の手紙の中にラーフィー国王からの至急の暗号連絡があって、ホープラーと話がしたいってのがあったのよ。」
「わかった。」
俺はラーフィーにも渡してる念話通信用の魔道具に連絡しようとしたらグレタに言われた。
「いうのを忘れてたけど……ラーフィー王とミクリー宰相が渡されていた念話の魔道具が動いてないんだって。昨夜に使おうとして壊れてる事に気付いたみたいだから私に至急の暗号連絡がきたのよ。」
「だからか。グレタに手紙出すまでもなく俺に連絡してくれればいいのにって不思議に思ってたよ。」
「じゃあ、どうする?」
「フェリクスのラーフィーのところでモーニングコーヒーの飲み直しだな。じゃあ行こう!」
グレタと手を繋ぐように右手を差し出すと、グレタは笑顔になって左手を出して俺の右手を握る。
そのまま転移魔法で王宮執務室の横の控室という俺専用の転移部屋に移動した。
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