第56話
日が傾き始めた頃までにはキャンプ地に皆で帰還できた。
まずは全員でお風呂に入ってさっぱり。
今夜の晩御飯は串焼きと串揚げの串スペシャルにした。
焼き物と揚げ物用の食材を乗せた台を作り、皆で串に刺して焼いたり揚げたりしていくセルフサービス。
焼き台と揚げ物用の天ぷら鍋は複数用意してあるので、皆が思い思いの食材を串に刺して焼いたり揚げたり……王族にとって『自分でする』ってのが全部新鮮だから、ワイワイと楽しんで食べている様子がうかがえる。
バーベキューの楽しさの一部に『自分で焼く』というのがあるから、彼ら彼女らは普通のコース料理の何倍もキャンプ料理を楽しんでいる。
エイス達は少し離れた場所でバキバキと骨ごと噛み砕きながら食べている。
ライチは丸のみなんだけどね。
成人メンバーは酒のツマミに串焼きと串揚げを楽しんでいる。
成人メンバーからは銀杏の串焼きが意外と大人気だったりする。
昨日今日とのヘラカイオン狩りで疲れているのもあるだろうけど。
俺は今夜も深夜までヘラカイオン狩りをする予定なんで、酒は飲まずに食べる事に専念して串焼きと串揚げを楽しむ。
焼きたてパンをカゴに入れて各テーブルの上に山盛りにして置いてあるので好き勝手にとって串の合間に食べてリセット。
スープは昨日パシーが持ってきてくれたアサリを使ったクラムチャウダーを作る。
日が沈むと途端に涼しくなる秋の夜にピッタリ……心と身体が暖まるスープ。
テントの中で砂抜きしていたアサリが美味しい。
大きな寸胴で煮込まれたクラムチャウダーが美味しく出来上がったので大満足。
小さめにカットされたホウレン草や玉葱などの野菜がトロトロでフーフーと息で冷ましながらすする。
野菜と同じぐらいに小さくカットしたベーコンを少し焦がしてから投入してあるので歯応えと塩加減もちょうど良かった。
スープをすすりホッと一息つける暖かさが心地好いな。
一息ついてからまた串を食べまくる。
食べ終わるとまた少しテントから離れた場所に、草原の上に置いたスラリンに背をもたれさせて寛ぎの時間。
今夜は大きなスープカップにクラムチャウダーを入れて横にある小さなテーブルに置く。
濃厚なミルクの柔らかい甘さとアサリの旨味が思考力を低下させてフーーっと疲れた心と身体を優しく癒して落ち着かせてくれる。
クラムチャウダーを飲み終えると、今日はホットコーヒーに多めにミルクを入れてコーヒー牛乳に。
落ち着きすぎてフワフワとしてくる。
思考力が無くなりただただ満月を眺めて時々コーヒー牛乳を飲む。
夜の10時を過ぎる頃には……恋人達の語らいも、俺から少し離れた場所でのんびり酒を飲んで月見酒を楽しんでいたメンバーも、テントの中でボードゲームをしていたメンバーもテントの中の自分のベッドに戻り……全員が眠りについた。
全員が寝静まると俺とエイス達は動き出す。
昨夜と同じように深夜のヘラカイオン狩りをしながら、エイス達と遊んで過ごす楽しい時間。
俺もエイス達もヘラカイオン狩りをしながらはしゃいで遊んでいる。
2日間で狩りメンバー達が狩ったヘラカイオンが500に少し満たないぐらいで……
俺とエイス達も2日間プラス深夜の3時までの狩りで合計2000を越えるぐらいのヘラカイオンを狩った。
とりあえず700ぐらいのヘラカイオンをアーリンドル王国に渡す。
だからラーフィーから渡されていた収納袋に700頭分のヘラカイオンの素材を入れて仕分け完了。
狩りメンバー達が解体練習したヘラカイオンは彼等のお小遣いになるので、各々の収納袋に入れて持って帰るようにしている。
今夜も朝までテントの外でモフモフに包まれて眠ることにした。
エイス達が凄い喜んで甘えてくれるしね。
翌朝は天気は最高。
しかし放射冷却で少し寒い朝となる。
俺が朝食の準備をしていると匂いで起きたユーとミーの双子が走りよってきて手伝い始める。
他のメンバー達も目覚めたようでダーフィットも俺の横に来て料理を学ぼうとしてくる。
寒い朝にピッタリなオニオンスープを作る為に、玉葱を炒めながらダーフィットにコツも教えていく。
シンプルながら美味しく作るには目も手もはなせない。
焦がすと不味くなる。
途中からダーフィットに任せて玉葱を飴色になるまで炒めさせる。
嬉しそうに……それでいて真剣な表情で優しく炒めてる。
ミーは横で邪魔にならないように会話してる。
なので、今朝のオニオンスープはダーフィットの手作り。
今日も枝にパン生地を巻き焚き火でパンを焼く。
子供のメンバーだけでなく王族全員が楽しんでいるのが見ててわかる。
失敗して焦がしたメンバーには新しい枝とパン生地を渡した。
そんなに時間はかからないし……今日は昼までのんびりと自由時間を過ごして、また皆で昼食を食べてからキャンプを終えてアーリンドル王宮前広場に帰還だからね。
だから今日の朝食は時間をかけてキャンプ飯を堪能してるメンバーが多い。
焚き火の火を利用してヘラカイオンのモモ肉を皆に振る舞う。
まだまだ熟成は甘いがこれも経験なんだからと、薄くスライスしたモモ肉に塩コショウをふってパンと共に食べる。
独特な鹿肉の旨さとパンの甘味が絶妙だな。
テーブルの上にあるサラダから野菜をいくつか一緒に挟んでパンと共に食べると、野菜の甘さも加わって更に美味しくなったな。
俺が美味しそうに食べているのを見て、皆も真似して野菜を挟んで食べ始める。
かなり好評で皆がおかわりでパンを次々と焼きまくる。
満腹になって満足した俺はエイス・フーロー・ライチを引き連れてテントから離れる。
今日は彼等と遊ぶ。
俺と2頭と1羽は2日間ヘラカイオン狩りをしまくったので、今日の午前中は完全休憩にあててリフレッシュする。
外の草原に歩いてくとモフモフ好きなメンバーが後ろについてくる。
俺が棒やボールやフライングディスクを投げるとブッ飛んでいって空中でキャッチ。
咥えて戻ってきて俺に渡す。
俺は投げたモノを受けとると頭や首をワシャワシャと撫でまわす。
俺が撫でてる時にモフモフ好きなメンバーが交代交代で、エイス達に抱きついたり身体を撫でたりして凄い嬉しそうにしている。
俺もエイス達もメンバーも皆が楽しい時間。
メンバーも投げたそうにしていたが、距離も速度も出せないので……結局、俺が1人で投げている。
エイス達が満足するまで俺が投げてエイス達が走り回った後は、草原の上で皆でゴロ寝してモフモフと羽毛のフワフワを満喫。
俺はスラリンにもたれ掛かってうたた寝。
この熟睡一歩手前のうとうとと微睡んでいる時間が大好きだ。
日本のブラック企業で社畜していた時は持てなかった幸せの時間。
無駄と睡眠時間と命を削っての過労死だからな。
だからこそ余計に楽しい時間と言えるのかも知れないが。
日が昇り日光の熱で気温が上がってきて、微睡んでいるのが更に気持ち良くなる。
ハイエルフに生まれ変わり無限の時間の中で……寿命という枠が消えて時間の概念が変わっても、日本での記憶が残っているからこそ微睡んでいる時間の幸せを噛み締めている。
生まれ変わって10年以上が経過してハイエルフとしてのんびりした時間を日々満喫していてもまだ……
前世でずーっと欲しがっていたのんびりと幸せな時間を過ごす事への渇望が強く残っている。
俺はまだ満足出来ないでいるのだろうか?
そんなくだらない事を頭の片隅で考えながら微睡んでいる。
日が昇り少し暑くなってきたので土魔法で四隅に柱を立てて上に蔦で屋根を作り巨大なタープテントのようなモノを作る。
日陰になると草原を走る風が暑さを吹き飛ばして心地好い。
テントにいたメンバーやデートしていたメンバー達もタープテントの中に入り、各々側収納袋から取り出したクッションの上で寛ぎだす。
人が増えたので柱を増やしてタープテントを更に巨大化。
昼食の時間が近付きパシーとアニーまで食材を持ってやって来た。
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