第51話
・・・ミー視点・・・
同い年のダーフィット王子と仲良くなったのはダンス練習のパートナーになってから。
背格好がちょうど良いパートナーだからといつも教師から組まされていて、他愛もない話をしながら練習するうちに仲良くなった。
ダーフィットは負けず嫌いの癖にどこかノンビリしている典型的な『良いところのお坊ちゃん』だと思う。
美味しい物が好きと少し自慢気に私に言ってくるので……私が知る最上級の食べ物をあげた。
霊峰山の森のハイエルフ『アナスタシア』通称アニーさんがくれたクッキー。
食べる前は『はぁ? たかがクッキーが最上級だって?』と鼻で笑っていたダーフィットはクッキーを一口で食べて泣いた。
感動で泣きながらトリップしている。
……だから言ったのに。
まず始めは少しだけ噛れって。
じゃないと意識も全部持ってかれるからと。
私も経験してるんだから。
アニーさんは子供好きで会うたびにお菓子をくれるから大事に大事に少しずつ食べている。
アニーさんにもっと欲しいと言えばいつでもくれるから、なくならないように大事にしてるんではなくて……
今でも少しずつじゃないと意識と時間を持ってかれるからね。
ハッって気付くと1時間持ってかれるとかが普通だから、禁止薬物でも入ってるんじゃないかと疑いたくなる狂気すら感じるレベルの美味しさ。
それ以来……ダーフィットは料理に目覚めてしまい、王宮の厨房で下働きみたいな仕事の手伝いをして、空いた時間に料理をシェフから教えてもらったりしてんだと教えてくれた。
本格的に料理人を目指すという訳ではなくて趣味として目覚めたみたい。
父親に料理がしたいと説明しながら相談したら……そんなに美味しいクッキーを是非とも再現してくれとお願いまでされてお手伝いから始める事になったんだってさ。
熱弁するダーフィットを見てると微笑んでしまう。
だけど、お兄さんも言っていたけどアニーさんの料理スキルの域に達するには人の人生では不可能……目指すのは自由なんだけど千年単位の年月をかけないと近付く事すら困難だからって言ってた。
でも、趣味がないと嘆いていたダーフィットからは卒業できたようで、今は何もかもが楽しそうにしているから見てるだけで私まで嬉しくなってくる。
『ねっとすぱいだー』でダーフィットが足を滑らせて落ちた時、私は近くのロープの上にいたけど爆笑した。
私とユーがロープを掴みながら器用に手を叩いて笑っていたら、周囲で見ていた子達も始めはビックリしていたが、爆笑している私を見て我慢出来ずにクスクスと笑い始め、スライムゼリーのプールから起き上がったダーフィットも立ち上がり、爆笑する私を見て手を叩いて笑いだし最後は皆で爆笑になった。
その後はいかに面白く落下するのかという変な遊びに変わり、落下しながらロープを掴み損ねたフリをして顔面からスライムゼリープールに落下、立ち上がったら鼻血を出してたユーに他の皆が脱帽して今日のチャンプになった。
私は下から見ていたのでユーが起き上がった時に、ちょうど真正面にいたからまったく我慢出来なくて大爆笑してしまった。
チャンプをとったユーに少し悔しい気持ちがあるのは、私も大概負けず嫌いなんだろうな。
途中から変な競技みたいになって違う遊びに変化するのは私達のキャンプでは当たり前となってる……たいていは『より面白い』に変化しがちだけど。
お風呂でさっぱりした後はダーフィットと並んで散歩。
ユーが泉の縁をスティと仲良く並んで歩いて行った反対方向へ歩いていく。
「ミーは更に可愛くなったな。」
「急に何言ってんのよ、もー。」
「グフッ、レバーにパンチを入れるなよ。照れ隠しにしては痛過ぎるよ!」
「密着するまで近付いた状態から離れ際に良い角度からショートフックを入れる練習中だしね。」
「だからか! 2発目は痛いって。クソっ警戒してたのに。」
「ミーは手が小さいからガードの隙間からレバーに押し込めると、お兄さんにアドバイスしてもらったばかりだからね。」
「ホープラーさんも余計な真似を……」
「まあ、そんなどうでもいい事は置いといて……ダーフィットもカッコ良くなったわよ。」
「惚れ直した?」
「んー、どうだろうね。プププっ……」
「え? 何?」
「さっきの『ねっとすぱいだー』から落ちてる途中のマヌケ面を見たら、あまりの情けなさに恋も覚めそうなんだけど。」
「それは笑って済ませてよ。」
「確かに大爆笑させてもらったわ。料理の勉強のし過ぎで反射神経落ちてない?」
「あれは足が滑っただけだよ。」
「言い訳ですか?」
「言い訳です。」
お互いふざけてる顔のままの会話だったのでまたまた爆笑してしまった。
ダーフィットといるといつもお互いふざけてる。
ダーフィットも私といる時は王子という荷物を下ろして、普通の11才の男の子として肩肘張らずにバカをして過ごせるので楽しいと教えてくれてる。
大国アーリンドル王家の三男とはいえ王子という看板は私が想像する以上に大きくて重いのだろう。
私といる時にそのプレッシャーから解放されると言われて……正直、嬉しいと思った。
私はお兄さんから色々と自由に育てられている。
お兄さんとリッチさんから格闘と魔法を習っているのは、ユーと私が2人が強くなりたいと望んだからだし、私達の2人が金虎獣人という戦闘種族の血が望んだから。
お兄さんとリッチさんから後10年も修行すれば覇王を越えると言われているけど……ピンとこない。
今から30年以上地獄のような特訓してもお兄さんとリッチさんという山の頂上すら見えそうもないぐらいにレベル差を感じてるから。
覇王って何? って感じに思ってしまうのはユーも同じ意見だった。
ユーと2人の時に話しているのは今後の事。
ユーは15才になって成人してから、世界を回る旅に出たいらしい。
私はまだ決めかねている。
ユーと同じように旅に出たい気持ちはある。
ユーが言ってた自分達『金虎獣人』のルーツである遠く離れた大陸に渡って、自分達の先祖を探るルーツ探しをしてみたい。
それと同時に同じ金虎獣人に会いたいという欲求もユーと同じようにある。
そうすると半年や1年で済むはずもなく下手すれば10年以上かかる事になるだろうね。
ユーは既にスティに15才から10年間はアーリンドルには帰ることはできないと説明してあるんだって。
だからスティはスティのしたいようにして欲しいと言ってあると言ってた。
私は今だに悩んでいるからダーフィットには話してない。
それとダーフィットに会えなくなる淋しさに耐えられるのかもわからない。
お兄さんのいない生活も考えられない。
いつも優しく見守ってくれてるお兄さんからまだまだ自立出来そうにないかも。
奴隷の時はユーに守ってもらっていた。
今はお兄さんに守ってもらっている。
私はまだ成長できてないのかもしれないと悩む。
私の悩みと葛藤は内に秘めたままダーフィットと笑いながらじゃれあっているのは……現実逃避なのかもしれない。
キャンプが終わったらお兄さんに相談してみようと決意した。
・・・ミー視点終了・・・
キャンプが終わった後のバーベキューを終えるとまったりした時間を3人で楽しむ。
コーヒーを飲む事が出来るようになった双子と3人で語り合う時間が増えた。
ユーからは15才になったら世界をまわる旅に出たいと相談された。
もちろん快諾。
1人の生活は苦労も多いけど、その苦労がユーを成長させるんだから頑張れと送り出したいと話す。
ミーは逆に悩んでいる。
ミーは旅に出たい気持ちは間違いなくあるようだ。
だけど、俺とダーフィットと離れた生活がまだ考えられないんだと。
俺から言えるのはまだ時間があるし、15才になったら必ず決断しなきゃいけないなんて事でもない。
ユーもミーも今や立派な龍の森の住人。
どこの国の騎士団でも簡単に入団できるレベルの強さは持ってるし、詐欺の手口もラーフィーやミクリーから色々勉強しているので、子供だから簡単に騙せると油断してる詐欺師ならハメ技で身ぐるみ剥ぐぐらいは出来るとミクリーから聞いてるし。
冒険者になったなら戦闘力だけならSSクラスはいけるだろうと考えてる。
だからユーとミーに説明したのは……急いでも急がなくても良い。
旅に出たいなら出ても良いし、帰りたくなったら帰ってくれば良い。
俺と龍の森は永遠に君達を待ってここに存在してる。
君達の居場所はここに永遠に存在するんだからなと説明したら、双子に左右から同時に抱きつかれた。
泣いてるようなので優しく頭をポンポンと撫でる。
大きくなったけど、双子は出会った時のまま俺に甘えてくれるので嬉しい。
血は繋がらないが家族だから。
作者からのお願いです。
少しでもこの作品を面白いと思っていただけたら↓の好評価とブックマークの登録をお願いいたします。
皆様の応援が作者の励みになります。
是非ともよろしくお願いいたします。




