転生守銭奴女と卑屈貴族男の長女の婚約者事情 04
かくして、無事にデビュタントは終わった。後は夜会だけ。夜会が始まってからは、ロメアと別れ、私は一人、会場を歩き回っていた。
ロメアと話をするのは楽しいけれど、今夜はそれじゃあ意味がないのだ。
ロメアには、美味しいご飯の話をしたが、私だって、本当にそれが目的なわけじゃない。
王家が開催する夜会に招待される家の者であれば、きっと父様が納得する家格の人がやってくるだろう。だからこそ、ここで交友関係を広めねばならない。
直接婚約者をゲットできなくたって、婚約者を紹介してくれそうな人がいれば、その人とお近づきになれればいい。
隣の領地か、遠くても二つ隣の領地。爵位よりは立地の方が重要。あとは家族を大事にしてくれるかどうか。そうじゃなくとも、私が家族を大切にすることを許容できるのが最低ラインだ。
それさえクリアしてくれれば、正直あとは何だっていい。先がなさそうなご老人とかでも。
そんなことを考えながら、誰に話しかけようか迷っていると、複数の女性に囲まれたテルセドリッド殿下を見つける。結構なお年ではあるけれど、美貌は健在、というのが世間の評価らしい。
私は顔の造形に興味がないので、いまいちピンとこないのだけど。だって、貴族家や王族に生まれた時点で、最低限の身だしなみや所作は保証されているわけだから……それ以外に、他人に求めるものってなくないかしら。
テルセドリッド殿下はその美しさが損なわれず、加えて配偶者がいないということで、私達の世代にも人気があるらしい。相手は王族だから、本気で婚約を狙っている令嬢は少ないだろうけど、それでも一言、憧れの方に声をかけたい、という心があるのだろう。
……それにしても、テルセドリッド殿下がいらっしゃるとは……。王族主催の夜会だから、王族の方がいるのは何も不自然ではないけれど、夜会の参加者のほとんどがデビュタントを今日終えたばかりの令嬢や、近い年齢の令嬢、あるいは令息ばかりなので、少し……いや、それなりにテルセドリッド殿下は浮いている。
若い男女ばかりだと問題だから、と、何か間違いが起きないように来てくださったのかしら。
それはそれとして。
テルセドリッド殿下がいらっしゃるなら、カノルーヴァ家の者として、一言二言、挨拶くらいした方がいいわよね。あの方がいなければ、父様と母様は結婚式を挙げられなかったかもしれないのだし。
そう思い、テルセドリッド殿下の周りにいる令嬢だちが離れていくのを待ち、話しかけるタイミングを待っていると――。
テルセドリッド殿下の影に隠れるようにして、男性が一人立っているのが見えた。テルセドリッド殿下にばかり気をかけていたから全然気が付かなかった。
褐色肌の人が多いグラベインにしては、珍しく肌が白い。陶器のような白さだわ。
もしかして、外国の方かしら、だからテルセドリッド殿下が直接ここにいるのかしら、と思って彼を見ていると――ふと、彼の目線がこちらに向き、目が合う。
あら、綺麗な瞳の色。母様が入れた紅茶の色みたい。




