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28.魔法使いは魔法使いでもそっちじゃない。

この宿にも、ずいぶんと思い出が詰まっている。


過ごした時間自体はそこまで長くないが、何せ初めてのことばかりであった。


初めての世界で、初めてのモンスターで、初めての狩りで、初めて命を奪った。


店主も優しいし、ほとんど毎日訓練所に行っては練習してきた。


当然引っ越しても練習は続けるつもりだが、ここで過ごしてきた日々は久しぶりに新たな体験の連続を味わうことができた。


引っ越しまではもう少しあるが、なんだか少し感慨深くなった。


とはいえ、明日からも狩りに行く。


いつまでものんびりと過ごしていることは出来ない。


休息をとることも冒険者の仕事の内の大事な部分だ。


俺はベッドに入って目をつむり、身体を休めた。



次の日からは、怒涛のトレント狩りだった。


毎日トレントの森に向かい、トレントを狩る。


一日に最低でも2体、調子のいい日などは4体倒すこともあった。


さすがに4体倒したときは、処理したり、持って帰ったりするのが大変で、街に帰ってきたときにはすっかり日が落ちていた。


時間管理ができていなかったことは反省したが、それでもいつも以上の報酬に俺たちはルンルンと宿に帰った。


宿では店主が夜ご飯を作って待っていてくれた。


「次はないからな。」


「すみませんでした。

気を付けます。」


そう言いながら料理を出してくれたが、どこか安心したような顔をしていた。



そんなこんなでアリスさんと家を見た日から2週間。


とうとう俺たちのランクが上がり宿から出る日が来てしまった。


「とうとうね。

準備はできてるの?」


「はい、いつでも引っ越せます。」


俺たちは今日一日、最後に宿で泊まり明日引っ越す。


「店主さんもお世話になりました。」


「ああ、またしばらく宿は暇になっちまうかな。

俺も久しぶりに2人も泊まって楽しかったぜ。」


店主は宿に冒険者が泊まっていないときは普通にギルドで仕事をするのだそうだ。


また、ギルド出会うこともあるだろう。


「少しだが、俺からの餞別だ。」


そう言って店主は夜ご飯の時にいつもより豪勢な料理を出してくれた。


オークのステーキに始まり、他にも色々な料理が机いっぱいに広がっていた。


「「「いただきます!」」」


最後の食事は店主も一緒に食べた。


さすがに量が多く、何とか完食できたものの、お腹がはちきれそうだった。


「これで、店主さんの料理も食べ納めですね。」


「そうね、明日からは私たちで準備しなくちゃいけないものね。」


「はい、頑張りましょう!」


お腹いっぱいになった俺たちはしばしの間話に花を咲かせたのだった。



部屋に戻り、荷物をまとめた俺はベッドに座っていた。


明日は久しぶりに狩りは休みだ。


こちらの世界に来てからというもの毎日狩りに出かけていた。


基本的に冒険者には決まった休日と言うのはない。


まあ、自営業みたいなものなので当然といえば当然なのだが。


その分、働けば働くだけ報酬も入ってくるので分かり易い仕事ではある。


今の俺たちの収入はトレントが1日3匹倒せるとすると大体金貨60枚。

一人頭金貨30枚だ。


日本円で考えると30万円。


日給30万円なんてお金を稼ぐことができるのはかなりのお金持ちか危ない仕事をしている人ぐらいだろう。


実際問題、俺たちも危ない仕事と言えばそうなので、命を懸けて得た報酬と言えるのではないだろうか。


少なくとも俺が日本で一日に30万円も稼ぐなんてことは想像できない。


しかし、この世界には基本的に社会保障なんかはない。

特に冒険者は大量勝負な部分が強く、体力がなくなったときに貯蓄がないとその先の未来は暗い。


運が良ければギルドなんかで雇ってもらえるらしいのだが、ゴードンさんを見ればわかるようにギルドで雇われるのは基本的に高ランクの冒険者である。


高ランクになれるか分からない俺は今の内からコツコツとためていくしかないのだ。


それにそろそろ武器の買い替えも必要になってくる。


いくら貯蓄を考えても、命を預ける武器や防具をおろそかにするわけにはいけない。


次に買おうと考えている武器はおおよそ金貨300枚ほどなのでそれだけでも10日分の稼ぎがすべて吹っ飛んでしまうことになってしまう。


・・・考えるだけで頭が痛くなってきそうだ。


『異世界の才能』がもっとチートじみた性能だったらと考えることもあるが、もらえているだけ感謝するべきなのだろう。


何もない状態だったら、いまだに剣を扱えていたかどうかすら分からない。


そう言えば、ナハナさんに魔法を教えてもらいたいと思っていたのにすっかり忘れてしまっていた。


明日引っ越しが終わってから暇だったら少し聞いてみよう。


でも、もし魔法が使えなかったらどうしようか・・・


『異世界の才能』様、よろしくお願いしますよ。


前の世界では魔法使いになることを恐れていたが、こちらの世界では魔法が使えるようになりたい。


いや、こちらの世界でもまだ違う意味で魔法使いになる可能性は残っているのだが・・・


何とかなるだろ。

いや、何とかして見せる。


俺はこの世界では変わったんだ。


美人の女性と2人暮らし!


前世の俺が聞けばうらやむような環境になっているのだ。


なんだか少し興奮してしまった俺はしばらくの間眠りにつくことができなかった。


ブックマーク登録ありがとうございます。

これからも面白いお話が書けるように精進します。

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