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27.新しい部屋ってドキドキするけど、結構あっという間に慣れるよね。

「アハハハハッ!」


「・・・・」


「あの・・・どうされますか?」


「アハハハ

はい、一軒家でよろしくお願いします。」


ナハナさんはまだ笑いが収まらない様子で、何とか笑いをこらえながらそう言った。

目じりに涙を浮かべながら、顔は笑っている。


そんなに笑わなくてもいいだろうに。


「・・・そんなに笑わなくてもいいじゃないですか。」


「だって、クフフフ。」


「それよりも、一緒に住んでくれるってことでいいんですか?!」


「うん、それはいいよ。

セイタの思いは十分に伝わったよ。」


ナハナさんは俺が引っ込めようとした手をがっちりと握りながらそう言ってきた。


ナハナさんの手はなんとも柔らかく、それでいて強かった。


俺もこの世界に来てからはほぼ毎日剣を握っているため、手には豆ができ、それがつぶれ、また豆ができて、ということを繰り返しそれなりに手の皮が厚くなっていた。


魔法使いのナハナさんの手はそこまで硬くなってはいなかった。

それどころか女性特有のなんとも言えない、柔らかなゆで卵のような柔らかさを感じた。


それでも、今まで生きてきた苦労を感じられるその手を俺はまじまじと見つめた。


「なんだかそんなに見られると、恥ずかしいわ。

何か変かしら、私の手。」


「いえ、綺麗な手だと思いまして。」


俺は一体何を言っているのだろか。


まだ先ほどの緊張が解けていないのか、俺の口からはそんな言葉が出てきた。


「褒められるほどの手じゃないわよ。

冒険者になってから、ゴツゴツしてるし、手入れもしてないもの。」


ナハナさんはむずがゆそうに、少し照れたような様子でそう答えた。


「いえ、僕は好きです。

ナハナさんの手。」


「な、そんなこと・・・

って、さっきの仕返しでもしようとしてるの?」


「あ、ばれました?」


「まったく。

いつまでも握ってないで離しなさいよ。

この変態が。」


ナハナさんは俺の手を振りほどくようにして手を離した。


「でも、ナハナさんの手が好きなのはうそじゃないですよ。

カッコいい手です。」


「ウホン」


横からわざとらしいほどの咳払いが聞こえた。


そこには苦笑いを浮かべたアリスさんが立っていた。


「あの、いちゃいちゃするのであれば、それこそ借りた一軒家の中でしてもらっていいですか?

喧嘩売ってるんですか?」


なぜか私怨が混じってそうな表情でそう言われた。


「「はい、すみませんでした。」」


ナハナさんと俺はすぐに謝った。


美人の怒り顔は中々に怖かった。



「それでは一軒家を借りるということでいいですか?」


通常運転に戻ったアリスさんはいつもの笑顔でそう尋ねてきた。


「はい、一軒家を借りる方向でお願いします。」


「何かご要望などはありますか?」


「そうですね、できればギルドから近い方が良いですね。

それから鍵はしっかりしたところが良いです。」


「なるほど、部屋数などはどのくらいをお考えですか?」


「私は最低2部屋とリビングがあればいいけど、セイタはどう?」


「僕もそれで特に問題ないです。」


「わかりました。

では、ご紹介できるものの中からいくつか選んでご案内させていただきますので少々お待ちください。」


そう言うとアリスさんは一度カウンターの奥に行き、中の職員の人たちと何やら会話をした。


その後、いくつかの冊子と、鍵を持ってカウンターから出てきた。


「それではご案内しますのでついてきてくださいね。」


アリスさんはそのまま俺たちを連れてギルドを出た。


「今回ご紹介できるのは2件です。

どちらもギルドからの距離は同じくらいなのですが、値段が異なりますので、実際に見て決めてもらった方が早いと思います。」


そう言って、アリスさんは歩きながら色々と説明をしてくれた。


アリスさんの説明と、実際に家を見た感じをまとめるとこんな感じだ。



一軒目

2LDKで土地はほとんどが建物で埋まっている。

家賃は一か月で金貨7枚。

ギルドからは徒歩3分ほどで、ギルドと門の中間地点にある。


二件目

3LDKでそこそこの庭もついている。

家賃は一か月で金貨20枚。

ギルドから徒歩3分ほどで、ギルドと商店街の中間ほどにある。


ちなみにどちらも一階建てだ。


こちらの世界では、一般的な家は一階建てである。

貴族や、宿屋などは2階建てや3階建てになっているが、2階建て以上にすると建築費用が高くなるらしい。


土地当たりの人口は少なく、土地は安いので、2階建てにするよりも土地を買って横に広げたほうが安上がりであるらしい。


「どっちも払えない金額ではないですけどどうしますか?」


「私的には金貨7枚の方でいい気がするな。

現段階では特に部屋数が多いことのメリットもないし、庭の管理も大変そうだし。」


「そうですね。

確かに、あまり広くても掃除が大変そうですよね。」


「それに、広い方がよくなったらまた引っ越せばいいだろ。

まあ、その時にあの家が空いていればだが。」


こちらの世界、冒険者が借りるような家には敷金や礼金などはない。


借りている月だけ賃料を払い、壊してしまったり、汚したりすれば、出ていくときに払うことになる。


そのため、基本的な賃料は日本に比べると高めに感じる。


まあそもそも敷金や礼金なども、前の世界において一般的であるのかどうか俺は知らない。


「じゃあ、一軒目の家でいいですね?」


「ああ、それでいいよ。」


「じゃあ、アリスさん、そう言うことで一軒目の方でお願いします。

と言っても引っ越すのはもう少し先になるかもしれませんが大丈夫ですか?」


「わかりました。

1ヶ月以内に引っ越される感じですか?」


「そうですね。

順調にいけば一か月以内には引っ越せると思います。」


「わかりました。

ではそのように準備しておきます。」


「はい、よろしくお願いします。」


思ったよりも賃料は安かったので、俺たちの今の稼ぎであれば、今すぐにでも引っ越そうと思えば引っ越せる。

だが、まだギルドの直営宿にいれるのならそっちでもいいだろうということになった。


食事も出てくるし、掃除の必要もないし、一日銀貨1枚だし、あそこはかなり優秀なところなのだ。


「じゃあ、もう少し、あそこの宿で頑張りますか。」


「そうだな。気を抜かずに頑張っていこう。」


「はい!」


アリスさんと別れた俺たちはいつもの宿へと帰った。


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