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23_初めての回復魔法

「このバカー!なにしてんの!」


 ネイアが青い顔をして砂埃を上げながら駆け寄ってくる。


「お嬢様、お怪我は・・・って怪我してるうううう!!!」


 あ、青から白になった。


「お、終わりだわ・・・」

「このくらいの擦り傷とか、子供なら普通だろ」

「仕事でやってんのよ!近所の子供と遊んでるわけじゃないの!お叱りじゃすまないわよ・・・」

「そ、そんなにか?」

「そんなによ!常識知らず!あんたは水月に入ってから貴族とのやりとりがなかったの!?とりあえず急いで病院に行くわよ!」


 ネッシーも段々やばいと思ってきたのかワタワタしだした。

 流石に煽った私も悪いから助け船を出すか。


「このくらい、すぐ直るから大丈夫だよ。気にしなくてもいいよ。」


 実際、訓練をすればそりゃ怪我くらいするだろうし、今も転んだ時についたかすり傷くらいで打撲すらしているわけじゃない。


「お嬢様!そういうわけにはいきません!私たちは任務を受けてやっているので帰った時点でばれて任務不履行です。とにかく急ぎ病院にいきましょう!」

「わかった、すぐ運ぼう」

「うお」


 そう言うとネッシーはは私を抱っこしてすごい勢いで走り出した。

「うおおお」

「わあああ」

「ちょっと怪我人なんだからゆっくり!」

 私は目を回しながら連れていかれた。


 ちょっと走ったら病院についた。こういうのって訓練場と併設してるとかじゃないのかよ。っていうか別に擦り傷で病院いらないだろと思いつつも診察を受ける。


「先生!大丈夫ですか!?お嬢様が転んでしまって!なんとか助かりますか!?」

「落ち着きなさい。擦り傷だけだからすぐ直りますよ。塗りポーションだけでいいでしょう」

「いや、回復魔法をお願いします!」

「え?この程度で!?」

「お願いします!」


 医者は初めてみたけど、白衣で普通に中年のおじちゃんだ。回復魔法は見たことがないが前に聞いた話だと、かなりレアな魔法で大抵はポーションだっていうことだったはず。この病院も入るときにちらっと見えたがポーションはいっぱい売ってるようだった。この程度で高額な魔法治療を頼むやつはそうそういないんだろう。医者の先生はこいつらマジかって感じで驚いてる。


「すぐ直らないと困るんです!わざわざ治癒魔法が使えるから医務室やポーション屋じゃなくてこっちにきたんです!」

「これは、大変な怪我じゃないか!そうでしょう!?我々は水月ですよ!」


 すぐに直して怪我をなかったことにしないと自分たちの首がかかってるからか、二人が必死すぎてうける。とはいえ、回復魔法には興味あるんだよな。ゲームだと神聖魔法で普通に回復もしていたし、それとは違うのかな?それとも名前が違うだけで見せてもらえば自分も回復魔法として覚えることができるのか気になる。

 ということで別にいらないけど、魔法を見せてもらおう。


「先生、魔法ですぐ直してほしいです。勉強したいので魔法を見せてもらえませんか?」


 私の言葉に気づいたのかネッシーとネイアが乗ってくる。

「そうです!そうです!勉強のためにもお願いします!」

「特別にお願いします!」


「う~ん、そうは言われても医師会のガイドラインで決まりがあるからねぇ。特別扱いというのはちょっと・・・」


 医師も資格制っぽいし、魔法の使用基準も決まっているとは。医師会ってしっかりしてるんだな。


「まあ、今日は患者もほとんどいないし、子供ということもありますから特別ですよ」


 おー、やってくれるのか。二人もほっと胸をなでおろしている。その後、私は横にある寝台に寝かされた。わくわくしながら先生が魔法を使うのをガン見する。


「そ、そんなに見られるとやりにくいんですけど・・・在るべき姿へ癒しを」


 先生から淡い緑の光がこっちに向かって流れてきた。一瞬の出来事だったが、少し暖かい感覚があり、あっという間に擦り傷が何もなかったかのように綺麗になった。


「すごい!ほんとに治った!これがヒールってやつか!」


 ん?なんかみんな悲しそうな眼でみてくるけどなんだ?


「お嬢ちゃん、子供の夢を壊すようで悪いんだけど、今のはヒールじゃなくて医者の処置オペレイション魔法の一つだよ。ヒールみたいな物語で出てくる強力な魔法はそうそう使える人はいないんだ。今のこの国の医師会でもヒールまで使える人はいないんだよ。世界には何人かいるんだけどね。そう、使える人も本当にいるからね」


 一応夢を壊さないように配慮しているのか実際にできる人もいるんだよっていうことをやたら協調して教えてくれる。


「そうなんだ。教えてくれてありがとう」

「お嬢様、見たかった回復魔法は見れたのでよかったですね」


「先生!回復魔法ってどうやったら使えるようになりますか?」

「ん?お嬢は医者になりたいのか?」

「君は医者志望なのかい?」

「いや、医者になりたいわけじゃないけど回復魔法は使えるようになるはずなんです」


 私はゲームだと神聖魔法の使い手で回復魔法や支援魔法を使っていた、もちろんヒールも使えていたし、覚えることができるはずなんだよな。できれば回復魔法なんて最高に使い勝手がいいから今すぐにでも覚えたいんだけど、そもそも覚え方がわからない。生活魔法は簡単にできたけど、本来の魔法は学校に通えって話だったし。

 あと、魔法体系もよくわからない、物語や一部の人物は一緒っぽいけど、ゲームとは違うところもかなりあるし「魔法」も違う方なのか?

 というかよく考えたらゲームででてきたキャラ一人も見ていない。

 名前は確かに一緒な部分があるだけで、あまりゲームを意識するのはよくないか?

 そう考えるとそうかも、そもそもゲームには生活魔法もなかったし、ヒールも序盤で覚えていたはずだ。こっちだと大層な魔法で常人には使うことすらできないみたいだし。


「ははは、回復魔法は医師じゃないと使えない、というか回復魔法が使える人は医師だからね。使えるようになって医師会に入れば君も医者だよ」

「どうやったら回復魔法を覚えられるの?先生はどうやったの?」

「大学だよ。君も医者を目指すんだったら医学部に入れるように頑張って勉強するようにね」


 先生は子供に言うように優しく教えてくれる。というか私子供だった!


「もう大丈夫そうですね。お嬢、そろそろ帰りましょう。遅くなる予定は言っていないのでそろそろ帰らないと」

「先生、ありがとうございました」

「もう転んでけがしないようにね。お大事に」


 ネイアが会計をしている間に周りを見る。以前にトラクーンでふらっと入ってみた診療所よりはさすがに都会なだけあるのか大きい。併設のポーション屋の品ぞろえもかなり多く入っているみたい。

 それにしても医学部か。魔法大学にそんな学部があるのかな、ゲームにはそんなのなかったっていうかゲームじゃ大学じゃなくて学園だったしな。


「おい、ネス子、医学部って魔法大学にもあるのか?」

「おい、こら無視すんな」

「ん?私ですか?」

「お前意外に誰がいるんだよ」

「ネスコってなんですか?」

「ネッシーと言えばネス湖だろ」

「よくわかりませんが、まあ、お嬢がそう呼びたいなら別にいいですけど・・・」

「で、私が行く予定の魔法大学にも医学部はあるのか?」

「お嬢が行くところってトールランドの王立魔法大学ですか?」

「トールランドがどこなのかは知らんけど、王立魔法大学って言ってた気がする」

「この国で一番いい大学ですよ。貴族も大勢いますね。ちなみに私はヴィクトリア戦闘魔法大学卒です!」

 ドヤ感をだしてるが全然いい大学なのかどうか知らないからな。


「で、医学部は?」

「やっぱりお嬢は医者志望だったんですね。王立魔法大学に医学部はないですよ。医者向けの魔法は医師会の管轄なので、医学部専門の大学がちゃんとありますよ。魔法適正もですけど、偏差値がかなり高いのでしっかり勉強しないと入れませんね」

「医者の魔法とはちょっと違うっぽいから、医学部にはいかないよ。そもそも私は王立魔法学院に行かないといけないからね」

「貴族の子息は大抵行きますからね」


 私は乙女ゲームを体験したいから行くんだけど、その話をしても意味が解らないだろうからとりあえず、貴族だから行きたいとことにしておくか。

 そうこうしている間にネイアが戻ってきた。


「お会計も終わったので、馬車で帰りましょう。色々話していたみたいですけど、何か気になるポーションとかがあった感じですか?」

「いや、お嬢と医学部について話をしていたんだ」

「やっぱり医学部志望だったんですか?」

「私は王立魔法学院にいくから医学部にはいけないって話だ」

「王大ですか?だったら私の後輩になりますね。大学のことを知りたければまた今度色々教えますよ」


 そんな話をしながら帰路に着いた。

 なんだかんだ病院にも行っていたから夕方だ。城の受付を通ってそのまま中に入るとラブロフが迎えに来た。


「お帰りなさいませ、予定より帰りが遅いので心配しておりました」

「いやー訓練にすこーしだけ熱がはいったのだ。すこーしだけ、な?」

「はい、ちょーーっとだけ熱い訓練だっただけです!」

「初日からこれですか、ほどほどでお願いしますよ」

「もちろんですよ、ははは」


 あ、こいつら病院に行ったことはなかったことにする気だ!


「そうそう、びょ・・」

「お嬢様!お疲れですよね!ささ!部屋まで送りますよ!送るまでが護衛ですからね!」

「ですです!行きましょう!お嬢様!」


 そう言って背中を押されて無理やりはがされた。


 ちょっと歩いたところで話しかける。

「お前ら、私の部屋知ってんの?」

「そ、そうでした!お嬢様の部屋も知っておかないとと思って!ね?」

「そういうのいいから、今日のは貸しだからな?」

「助かります~!」


 そういうと部屋に行くまでもなく二人は安心した顔でそそくさと帰って行った。

 いや、部屋は把握しておけよ。護衛なんだろ。


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