第88話 ロズリからもふたりきりで聞く その『ざまぁ』は本当に必要なのかと
途中で昼食のため小さな集落に到着、
いやほんとよくあったな飯屋、そこで情報収集だ、
大森林の近くに付属していた村の住人が逃げ出して、ここに合流したとか。
(だから飯屋があったのか、納得)
きっとその村のが引っ越してきたんだろうな、
虫は比較的大きいのがわらわら襲ってきて数が凄い、
もちろん小さいのも多く部屋の開け閉めに入ってきたりと衛生的に大変だったらしい。
「ラグラジュ大森林で何かが起きている可能性は高いな、ナタリはどう思う」
「時期的に単なる大繁殖ということもあるにはありますが、攻撃的な事を考えると」
「やはりか」「昆虫を大量に使役する魔物というのは」「もちろん居たが、もう倒した」
そう、超巨大なハエ型の魔物、
あれは魔王と同レベルだったな、
物凄い空中戦だった、え、俺? 飛べないがまあ、詳細は秘密だ。
(あまり深く突っ込まれたくない所だ)
黙っていればわからないか、
勘の良いエミリやナタリに気付かれないよう、
ここは話題をずらそう、魔界でのアレがバレないよう、上手い具合に……
「虫だらけの大森林、ええっとまずは煙で燻すんだっけ、
で虫が逃げている所へ入って行って、出来ればダンジョンまで」
「風向きが大事になるわ、そこを調べるのは私に任せて」「エミリの仕事かぁ」
朝も打ち合わせしたが、
魔法無しだと本当に面倒くさい。
「道さえ出来れば私の聖剣で」
「虫よけソードだね」「ラスロ、その言い方はさすがに」
「いやいやヨラン、期待しているから」「うむ、任せて欲しい」
という流れの確認だけして昼食後に出発、
さすがに宿は無いからね、とここで少しお願いをしてみる、
相手は運転のリンダディアさん、いったい何かというと……
「交代、ですか」
「はい、少し気分転換に」
ということで俺が馬車の引手に、
隣には補佐としてロズリに座って貰い、
大森林への道なりを走らせて行くのだった。
(これは、なぜかというとだな……)
よほどの大きな声でも出さない限り、
後ろの馬車内には声は聞こえない、いや、
一応はこの場所には中に向けて喋る装置もあるにはあるのだが。
(ラッパの先みたいなやつね、ただ、それは仕舞ってある)
だから普通に雑談している分には、
窓を開けて聞き耳しててもなかなか盗み聞きは出来ない、
ていうかそんなことをしたら馬車の中に風が入って寒くて仕方ない。
「……という訳で、ロズリと話がしたくて俺の隣に来て貰った」
「そんなに聞かれたく無い話ですか」「まあな、ナタリは勘付いていると思う」
だから今こうして俺とロズリが秘密の会話をするのを、
ヨランやエミリが聞こうとしたら阻止してくれるはず、
そこまで行かなくても、もし漏れ聞こえてたら教えてくれるだろう。
「それで、どのような用件でしょうか」
「うん、それなんだがな、ってまずこの道で合ってるんだよな?」
「とりあえずは道なりで、途中でちゃんと行先標識が立てられていますよ」
平和になると便利になるもんだ。
「実はナタリにも、当のエミリにも話したんだが……」
俺は声があまり大きくならないよう気にしながら、
エミリの夫が実はエルフ側からの作戦、ある意味で罠により、
嫁にしたというリンダディアさんの話を打ち明けた、まだ一人のエルフの情報だと念を押して。
「なるほど、それをエミリさんが知っていたかどうですね」
「それが結論としては『そんな話、どうでもいい』だそうだ」
「誤魔化したように聞こえます、後ろめたい事があるのでしょう」
あー、ロズリから見ると、
ロズリ側からこの話を聞くと、
やっぱりそう捕らえるのか、本当かは別にして。
「じゃあ、知っていてあえて」
「自暴自棄になっていたらな、ありえますね」
「だとしたら可哀想な気も」「同情の余地はありませんね、裏切りは裏切りです」
それもまた、
新ハーレム側の意見なんだよなあ。
「ではやっぱり」
「エミリさんにも、完全に結婚できると思わせておいて、身辺整理も終わらせて、
その身ひとつで嫁ぐつもりで来て、最終的には最期の最後で捨ててしまいましょう」
ミオスやナタリが言っていた
持ち上げて落っことす恐ろしい作戦……
下手をすると旧ハーレムに、四方から刺されかねない。
「なあ、その『ざまぁ』は、ロズリ的には本当に必要か?」
「裏切られたラスロ様を思えば……十二年間も魔界で戦い続け、
脱出してやっと結婚できると思っていたら裏切られていた訳ですから」
……いや、それほど恨んでは、
もちろんショックはショックだったが、
俺は……うん、それくらい憎んでいるかどうかも、考えないと。
(そもそも旧ハーレムを、選んだとして俺がちゃんと愛せるのか……?)
当然ながらもちろん、
それは新ハーレムに向けてでもあるのだが。
「ありがとう、ロズリの意見はわかったよ」
「後は今回の依頼を、とりあえずこなしてからですね!」
「そうだな、俺も言っていたもんな、平和最優先で行こうって」
……新旧ハーレムの間も、平和で行って欲しいのだが。




