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ハーレム崩壊、十二年後  作者: 風祭 憲悟@元放送作家
第二章 エルフに嫁いだ弓使い しかし本当に愛する人が戻ってきた以上、抱きしめずにはいられない!

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第82話 今となっては間違った選択 十二年経って取り戻したい、やり直したい一心でやってきた

「……という報せを受けて、私はなにより真っ先に『ラスロを抱きしめなきゃ』ってなったの」


 エミリの話が終わった、

 おそらく嘘偽りなく本当の事を……

 彼女なりに、死んだ男を復帰って幸せになった人生を聞いてしまった。


(そう、俺が生きて帰ってきてしまうまでは)


 こうなると、

 ひょっとして俺が悪いんじゃないか?

 とすら思ってしまう、が、おそらく誰も悪くない。


「……エミリさん」「はいナタリさん」

「それでは娘さん、息子さん、なにより旦那さんが可哀想ですよね」

「でも、それでも一番可哀想なのはラスロよ!」「えっ、俺?!」「……ラスロよ」


 最後はまるで自分に言い聞かせるかのようなエミリ、

 いや俺をダシに夫と子供を捨てた事を正当化しているが、

 俺は戻って来てくれちは……勝手に『待ってくれている』と思い込んではいたが。


「それで解決は出来るのか」

「エルフの世界に婚姻届は無いわ、

 ヨランのように離縁の手続きもいらないの」


 そうは言っても夫と子供が来ているんだが。


「うーん、それでエミリは、どうしたいんだ」

「今となっては間違った選択をしてしまったわ、

 だから取り戻したいの、十二年前のラスロとの関係を」


 やり直し、か……

 俺としては婚約者が寝取られてて、

 急に戻って来たいと言われたようなものか……なのか?!


(待っていると思っていた婚約者が結婚してたんだから、そうといえばそうなるが)


 そして結婚したまま戻って来た、

 元の夫と子供は捨てたい、と言われても。

 ここは今居る中で一番賢そうなメンバーに改めて聞こう、エルフ除くね。


「ナタリ、感情論は別にして客観的に見てどう思う」

「はい、エルフの世界にいかに契約書や婚姻書が無いとはいえ、

 口約束も立派な約束であり子供も出来ています、全ての納得が無ければ問題かと」


 そりゃそうだ、

 しかもこの場合は『言った・言わない』って話じゃなく、

 きちんとエルフの国に住んで子供も作っているからね、それを一方的に捨てるのは……


「私は事実誤認をしていただけで、やり直したい一心で」

「エミリ、もしエミリが本当に別れたいのであれば、それこそ『別れる掟』みたいなのはないのか?」

「そ、それは……」「エルフという種族が書簡・書類の契約を疎むのであれば、逆に自然と別れる方法だってあるんじゃ」


 まあ、『そんなものは無い!』

 って可能性も十分、考えられるんだけどね。


「……ヨランではありませんが、勝負です」

「となると、弓矢勝負か」「でもそれはあくまでエルフ側の主張、私は人間よ」

「人間の立場で考えれば、そんなもの無視できると」「人間ならね、もう私は人間側、ラスロ側だから」


 勝手にこっちに付かれても!

 それに今までずっとエルフ側に居た人間が、

 急に都合よく人間だからって言い出すのは卑怯というか酷いというか。


(旦那さんも子供も、可哀想になってくるな)


 俺が可哀想あとかいうエミリの意見は別にして。


「うーーーーん……とりあえず、わかった」


 と話を一旦終わらそうとした所へ、

 さっきから名前が何度も出されたヨランが口を出す。


「だったらだったで勝負してしまえば良い」

「駄目よ、勝負したら負けるわ、ハルラはここ一番で私に勝つ方法を持っているもの」

「ではそれを打ち破ってこそ、正々堂々とラスロと一緒になれるのでは」「負けたらどうするのよ」


 さすが脳筋ヨラン、

 勝てばいいと言って負けた場合を考えない、

 ヨランの場合はだからこそ勝てると言えるが弓勝負となると話は別な気がする。


(だからって、逃げ続けるのはなぁー……)


 これで俺がエミリを引き取る、

 復縁して側室に入れるというのであれば、

 俺は(かくま)い続ける事も出来るのだが……おそらくアリナと一緒に。


「あの、よろしいでしょうか」

「おおロズリ、挙手までしてどうした」

「綺麗な方法を思い浮かべました、提案します」


 ここで新ハーレムの騎士団員が、

 いったいどんなアイディアを??


「では言ってくれ」

「はい、いっそエミリさんの旦那さん、ハルラさんでしたっけ、

 その方とラスロ様が対決するのです!」「ええっ?!」「決闘ですね」


 そんな展開?!


「それだと嬉しいわ、ハルラも諦めてくれるでしょう」

「いやいやいや、俺はまだ、その、なんだ、そういのは……」


 結婚式の真似事をさせられたとはいえ、

 まだ俺はエミリを受け入れると決めた訳じゃないぞ?!

 戸惑う俺に言葉を足すロズリ、まだ挙手してら降ろしていいのに。


「何もかも含めて、全ての判断として、一回の決闘で終らせましょう」

「だから俺は……」「ラスロ様も含めてです」「えっ」「ラスロ様の判断も、です」


 ……あっ、意味がわかった、

 つまり俺がハルラというエミリの夫と対決し、

 結婚したくなければ俺が負ければ良いってことか。


(確かに、これはこれで『ざまぁ』になる……のか?!)


 だが魔界封印の前にそんなことしたら、

 抜け殻で使い物にならなくなる可能性もあるな。


「ロズリの言いたい事はわかった、腕を降ろしてくれ、

 エミリ、とにかく俺から言いたいのは、いや言って欲しいのは、

 魔界封印というエルフの国にも関わる重大案件を最優先させてくれってことだ」


 でないとエミリも集中できないだろう。


「……一応、そういう話もしているのだけれども、わかったわ改めて」

「なんなら陛下に言って、城からエルフの国王に正式に書簡を送って貰う手もあるが」

「ハルラ達は、ハルラさん達は森(エルフの国)に帰ってないから」「ならこっちのエルフの責任者経由で」


 と、ここで馬車運転のリンダディアさんが顔を覗かせた。


「そろそろ出発致します」

「あっはい、よろしく頼みます」


 俺のちょっと気の抜けた声に頷くエルフの運転手、

 こうして馬車は再び走り出したのであるが……この後、

 街に到着した俺は、このベテランエルフからとんでもない話を聞かされるのであった。

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