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ハーレム崩壊、十二年後  作者: 風祭 憲悟@元放送作家
第一章 伝説の女剣士のやり直し 錆びついた剣と言われても愛で研ぎ澄ますのみ!

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第78話 そして事実上の結婚式を済ませた気でいる旧ハーレム 幸せな家庭を築けると信じて疑わないようだが俺は、俺は……

「ラスロ、ここよ」


 アリナに連れて来られたのは古びた教会、

 形式から国教のだろうが少々荒れているな、

 十二年前に見かけた時はまだ普通に使われていたと思うのだが。


「ここが、新しい拠点なのか?!」

「ええ、修繕に一か月はかかるけど、陛下が直してくれるって!

 だから再封印に行って、戻って来た頃にはここが愛の巣になるのよ」


 いや『愛の巣』って、

 そんな新婚みたいな言い方を……!!

 ヨラン、エミリ、ネリィも見上げながら話す。


「ふむ、なかなか土台がしっかりしている、これなら古くとも、どうにでもなる」

「そうよね、ここで誰にも邪魔されず、ラスロと愛を奏で続けられるわ、ふふっ、楽しみね」

「お部屋もいっぱい作れそうですぅ、子育ては一手にお任せクダサァイィィィ……イヒッッッ」


 みんな、思い思いに俺との生活を描いているようだ、

 確かに俺が十二年ぶりに魔界から帰ってきて、ハーレムを取り戻すというのは、

 ずっと、ずっと待ち望んでいた事ではある、この旧教会だって陛下の計らいだろう。


(そういう意味では昔の約束は守ってくれた、のだが……)


 しかし現実は、俺のハーレムは、彼女達はみんな揃って俺が完全に死んだと思い、

 アリナは残りの生涯を修道院に投じ、他の三人は『アリナの犠牲』と引き換えのような形で、

 新しい家族を作り、幸せになっていた……約十二年もの間、俺が苦しんでいた期間のほとんどを。


「さあ、明日から改修を始めるそうですが、中を詳しく見ましょう!」


 入っていきなりの講堂、

 いやここエントランスにするには豪華過ぎるな、

 神の像も綺麗にすれば立派なインテリアに……っていいのかそれ。


「さあラスロ、どこから見ますか?」


 軽く俺を引っ張るアリナ、

 他の三人も俺の腕や背中に手をあてる。


「ラスロ、食堂は広いが奥の調理場を充実させようと思うのだが」

「お風呂は基本、水で清める場所だったみたいだけどお湯を沸かせるようにしましょう」

「ラスロサマァ、ハーレムベッドというのがありましてぇ、五人乗っても大丈夫でェ……ェヘッ」


 もうすでに幸せの絶頂へと登り始めている四人、

 俺の確固たる意志を確認しないまま……いやもちろんそんな意思などまだ固まっていないのだが、

 新旧ハーレムの間で揺れ動いていた俺のせいで、こんな事になってしまったのだろう。


(いったい俺は、どうすればいいんだ)


 旧ハーレムは俺との復縁、いやもう結婚した気で居るみたいだが、

 それをどんどんどんどん押し進めて、崩壊したハーレムの完全復活を目論んでいる、

 そもそもここへ信仰や家族を捨てて集まって来た時点で、そうなる事しか考えていないのだろう。


「ほらラスロ、トイレだけは最初に直してもらいましょう」「お、おう」


 改宗してまで俺の所へ戻って来たアリナ、

 やっと本当に幸せになれると信じて疑わない笑顔……

 それに対してまだ戸惑いを感じている俺を、アリナはどう思っているのだろうか?


「ラスロ、階段は上の階へ行くにつれ急になっている、老後を考えて改修するか?」「ど、どうだろうな」


 正式に離縁が決まったというヨランもすっかりハーレムに戻った気でいる、

 ベルナルくんたち子供が可哀想に思えるが、これもヨランの選んだ道とも言える、

 だが、俺の選ぶ道はどうなるんだっていう……これで俺に拒否されたら、ヨランは……??


「ねえラスロ、教会いえ屋敷の中も大切だけど、お庭はどうしましょう」

「ラスロサマァ、子供のために魔法練習場なんかもいかがでしょうかァァァ」

「ま、まあ、それは好きな感じで、いいんじゃないかな」「それでは私共で」「好きにしますぅ……シュキィ」


 そしてこのエミリとネリィ、

 あえて後回しにされているがヨランの件が一応は解決したらしく、

 次はこの二人のどちらかの番だ、ただ、本当に解決して良いのか。


(俺が旧ハーレムを選ばないのであれば、傷口は小さい方が良いよな)


 そのあたりも考えなくては、

 魔界封印完了の時にこのふたりまで離縁が解決し、

 全員、俺の所へ戻れてさあ、幸せなハーレムを、という所で……


(新ハーレムだけと、幸せな家庭を築くと言ったら)


 ……どうなるか考えただけで恐ろしい、

 怒るか、泣くか、喚くか、殺しにかかるか、

 だったらもっと早く、とか言われないためにも結論を……


(ミオス達は、アリナ達をまるで『裏切った悪』のように捕らえているんだよな)


 だからそういう発想が出てきた、

 魔界封印までは何食わぬ顔で互いに協力し合い、

 時には俺と旧ハーレムの仲を取り持つような仕草まで。


(若さゆえの発想、過ち……いや、どっちが正しいかとかいう話よりもだ)


 とにかくこれからの一か月、

 封印への再出発まで俺は新旧ハーレムと過ごす、

 そこで俺はじっくりと、そして確実に判断を下さないといけない。


「ラスロ、ぼーっとしちゃっているわね」

「いやアリナ、ま、まあ、あまりに豪華な教会に圧倒されてだな」

「ひょっとしてだがラスロ、我々に隠している、後ろめたい事でもあるのか?!」


 そう言ったヨランの表情が、怖い。


「い、いや、そのだな、ま、まあ、流れが速すぎて、ついていけない」

「まあラスロ、なら抱きしめてあげるから、落ち着いて頂戴、さあ、さあ」

「エミリ、い、今はまだちょっと、ってそこの壁、本当に大丈夫なのか?!」


 と誤魔化したが、

 後ろめたい事といえばもちろんある、

 ミオス達の『ざまぁ』作戦とは別の、俺の魔界での……


「このネリィの魔法にお任せくださいマセェ、

 土魔法で補強をしたうえ、綺麗に直しますからぁ、

 ついでに防音も魔方陣できっちりやって夜の営みも……キャッ」


 とりあえずはここの改修が終わるまで、

 旧ハーレムと城に泊まったり新ハーレムとグレナダ公爵家に泊まったり、

 相変わらず行ったり来たりフラフラするかも知れない、まあそれが俺なのだろう。


(そして、この結末を決めるのも……俺だ)


 旧ハーレムと十二年ぶりの幸せを共に過ごすのか、

 新ハーレムと十二年分の『ざまぁ』を実行して新しい幸せを手に入れるのか、

 それとも……そもそも魔界封印を完全に成し遂げなければ、話は終わらない気がする。


「よし、アリナ、ヨラン、エミリ、ネリィ」

「はい」「どうした」「なあに」「ラスロサマァ」

「とりあえずは魔界封印再構築、全力で頑張ろう」「「「「はいっっっっ」」」」


 こうして俺は、

 崩壊したハーレムの残骸を前に、

 どう進むかという決断を考えるのであった。


「……さあラスロ、屋上よ」

「夕日が綺麗だな……お城もよく見える」

「ラスロ、良いか」「ヨラン」「皆、少し済まない」


 ヨランだけが俺の目の前へ、

 他の三人は引いて、見守る感じかな。


「どうしたヨラン」

「……ラスロ、離縁が決まったばかりだが、はっきり言わせて欲しい」

「どうした」「……十二年で私の剣は錆びついたかもしれない、確かに決闘でロズリに負けた」


 うん、あれはびっくりした。


「時代の流れだから仕方ないだろう」

「だが私はラスロのために、錆びついた剣を研ぎ直そうと思う、

 それは剣だけではなく、この十二年経った身体も、そして……ハーレムの一員としても」


 俺の胸におでこをつけるヨラン。


「研ぎ直す、か」

「ああ、この愛すらも……だからラスロへの愛を、やり直させて欲しい」

「また、昔のように、と」「そのために出来る事はやったし、これからもやれる事は全てやろう」


 俺にぎゅっと抱きつくヨラン。


「私は剣聖になる、そうする事で生まれ変わった事にする、

 そしてその称号は、ラスロのためのものだ、つまり私は、

 少なくとも私の中では『ラスロだけの剣聖』だ、どうか、受け入れて欲しい」


 つーーーっと涙がこぼれるヨラン、

 うん、気持ちは伝わってきた、今の気持ちは……


(でも、俺は、俺の気持ちは……!!)


 そっとヨランを離す俺。


「まだ、何も終わってはいない、

 十二年前の魔王討伐、その後始末がまだ残っている」

「ラスロ……」「全てがあの続きという訳では無いが、とにかく今は、平和最優先だ……答えは、その後で」


 その俺の言葉に、

 そっと頬にキスをしたヨラン。


「……わかった、では、それまではラスロの剣として、集中しよう」


 そのヨランの目には、

 瞳には俺を信じる心を感じた、

 もし、もそこれを俺が拒絶したとしたら……!!


(いったい俺は、どうするべきか……どうすれば……!!!!)


 悩みに悩んだまま、第二章へ続く。

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