第61話 王都凱旋! 大盛況で迎える民衆の中に、あの子供達は……!!
「ふう、やっと到着か」
あれからなんだかんだあって、
一か月は持つであろう封印を施してからの、
改めて勇者凱旋である、手前の街で止められて何かと思ったら、これかあ。
(勇者様御一行の馬車がお戻りになられる、と王都に住む国民にお達しがあったらしい)
俺は運転席の隣でわざわざみんなにお披露目、
ズタボロで十二年ぶりに王都へ来た時は対して見られなかった、
いやむしろ、なんかやべえのが歩いてるぞって思った民も居ただろう。
「勇者さまー!!」
「おお、あれが伝説の勇者様!!」
「アリナ様まで、お戻りになられているぞ!!」
そう、運転のダンジュくんを挟み、
反対側ではアリナが座ってくれている、
俺が本物かどうか疑わしい人のためにアリナも居れば……
(とはいえアリナだって十二年間、姿を消していたんだよな)
この通る馬車を見守る観衆の中に、
アリナが破壊してきた教会の関係者が居たらどうしよう、
と思ったが沿道にちゃんと警備の衛兵が点在している、大丈夫そうだ。
「ラスロ、こんなにみんなが!」
「お、おう、特に子供も多いな」
しかも丁寧に並んで。
「でんせつの、ゆうしゃさまー!」
「あれが絵本でよんだ、ラスロさまなのですね!!」
「ゆぅしゃしゃま~、だいゆ~しゃさまぁあ~~!!」
うん、なんていうかこう、
こういうのをサクラって言うんだよな、
まあ全員が全員、そうではないと信じよう。
(ちらっと馬車内の様子を見ると……)
一列目の窓際にはミオスとロズリ、
二列目はナタリとハミィで新ハーレム、
三列目はなぜかカーテンを閉め、真ん中に旧ハーレムのあと三人が固まっている。
(あれは、どうしたんだろう?)
しばらくすると理由らしき声が……!!
「あっ、ハミィお姉ちゃん!」
「いとこの、ハミィ姉ちゃんが乗ってる!!」
十歳前後の姉弟、
ハミィのいとこ、ということはだ、
うん、あれだよな、つまりは、そういうことだ。
(やはり来ているのは、ヨランの息子だけじゃなかったか)
しかし東の魔導都市って相当遠いぞ?
いや西のヨランが住んでいた場所もかなりのものらしいが、
確かあっち、東は湿地帯やら山脈やら険しい道のりだったはず。
(ということはだ、子供達の中にはひょっとして……)
一瞬、ハーフエルフの姉弟が見えた気がする。
「ラスロ、気が付いたみたいね」
「ま、まあ、話だけは聞いていたからな」
「安心して、一気に全部はラスロが処理できないから、まずはヨランの件からよ」
と、いうことは、
更にもう2件あるということだ、
まだ俺の中で確定もしていないのに、やっかいな……
(いや、最後に下手すれば、もっと大きい話が)
そう、アリナの修道院破壊の件が。
「さあ、お城よ」
「おお、ここまでくるとみんな騎士団員だな」
馬車の後方にも視線が行っているなと思ったら、
カーテンを開けてヨランが手を振っているみたいだ、
ここまで来ればもう大丈夫っていう感じなのだろう。
「入場よ」
「もうか、さっさと入れってか」
「お城に仕舞われちゃいましたね」
……別に旧ハーレムを護ってくれたって訳じゃ、
まあ大々的にパレードするみたいな事を言っていたから、
城の予算的に今ので終わりにしたいのかもな、その方が俺も助かるかも?
(何せ根本的な解決は、していないのだから)
中庭で降ろされる俺たち。
「あ、ダンジュくん長旅ありがとう」
「いえ、かなりの勉強になりました、次回も是非」
「わかった、陛下に指名しておくよ、とりあえず休んでくれ」
握手、と……
アリナも感謝して会話している、
その間に他のみんなを……エミリとネリィは暗い顔している。
「どうした、もう着いたぞ」
「そ、そうですね、一休みですね」
「ラスロサマァ、ネリィは、早く挙式したいデスゥ」
……それで過去が無かった事になる訳じゃ、ないのに。
「とりあえず陛下に報告だ」
「あっ、ダンジュくんも来るかい?」
「恐れ多いですが、勇者様がおっしゃられるのであれば」
ということで到着早々、
陛下とお話をしなくちゃだな、
そこで言わないと、結婚式は……延期だと。
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「ヨランに逃げられた、だと」
「申し訳ありません、まずは無理してでもと」
「……きちんと来るように命令したのか」「私共では、その」
苛立つヨランの夫、モリス。
「やはりこの私自らが、迎えに行くべきか……ベルナル」「はい父上」
「ヨランの様子はどうだった」「はい、今は陛下からのミッションに集中しておりました」
「魔界封印か」「不完全らしく、まだ忙しいようです」「それで逃げたのか……」
どこまでも真面目なヤツだ、
だがきちんと説明をし、終わり次第すぐ戻ると言えば、
私とて待たない訳ではないのに……もちろんわかってはいるさ。
(私の命令より、陛下の命令の方が上なことを)
陛下も陛下だ、
ヨランにあのような形で言わずとも、
私に、国王から侯爵への依頼として出せば良いものを。
(いや、それだとスタヴィック公爵家を通さなければ、まずいな)
陛下→公爵家→侯爵家への依頼だと手間も時間もかかり、
色々と面倒くさい事も起きると考えて直接、呼び寄せたのだろう、
こうなると長男に連れて来させようとしても、無理なはずだったな。
「よし、私が陛下に直接、お伺いを立てよう」「ははっ」
その様子を心配そうな表情で見る長男、ベルナルくん。
(母上……父上はやはり、母上の事など、何もわかってはいないようです)




