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ハーレム崩壊、十二年後  作者: 風祭 憲悟@元放送作家
第一章 伝説の女剣士のやり直し 錆びついた剣と言われても愛で研ぎ澄ますのみ!

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第59話 忘れられない一日 その記憶を胸に少年は実の母と別れの時が……?

「ほらベルナルくん、腰の入れ方が甘い!」

「は、はいっ! こっ、こうですかっっ?」

「もっと体全体を地面に踏ん張るように、でないと全身が軽くなるぞ!」


 熱心に稽古をつけてやる俺、

 出来るだけ多くのヒントを身体に刻み込ませてやれば、

 数日、いや、かなり年月が過ぎても新しい稽古を始めた時に、


『あっ、この動き、そういえば確か……』


 と、思い出して参考にしてくれるかも知れない、

 短期間で頭に詰め込める形はたかが知れているが、

 実際に自分の身体で感じた衝撃、驚きは身体が憶えてくれたりする。


(あまりやり過ぎると、それどころじゃなくなるけどな)


 それでも相手が強ければ強い程、

 衝撃というかインパクトは瞬間的に入ってきやすい、

 俺はあえて、そういった事を意識して攻撃してやっている。


「ラスロ、その技は」

「ヨランは気付いたか、でもこれは教えないでやってくれよ」

「い、いったい何が」「ベルナルくんは感覚だけ憶えていれば良い!」


 横からだと一目瞭然なんだけどな、

 この踏ん張って動いてないように思いながらも、

 実は身体を大きくずらされている、動かされているっていう……


(崖の上なら、もう落ちて死んでいるな)


 こちらに完全に注意を引きつけつつ、

 相手の動きにこちらからも上手く合わせて、

 全体が移動してしまっているのを気付かせない方法だ。


「ベルナル、感じるのよ」「母上!」

「おっ、大きなヒントを貰ったな、わかるのは数年後かも知れないが……」

「そういえば、手がっ、痺れてきましたっ!」「これもそういう手だからなっ!」


 剣で剣を防御し続けると、

 どうしても腕にダメージが蓄積してきてしまう、

 その外し方、軽減の仕方……そこまでしっかり教えられる剣術教師は、そうそう居ないだろう。


(何より、人によるからな)


 おそらく俺とまったく同じ方法、

 感覚を教えようとしても無理だろうし、

 伝わった所でそれがベルナルくんに有効かもわからない。


(ただ、だがしかし、実の母親なら……?!)


 ちらっとヨランを見ると、

 やはり少しは心配をしているようだ、

 だったら自ら、ヨランが稽古をしてやれば……おおっと!!


 ズッデーーーンッ!!


 大きく尻もちを着いた、ベルナルくん。


「ベルナル!!」


 あっ、ヨランが駆け寄って手を……


(やっぱり母親かぁ)


 自らお尻を払うベルナルくん。


「なんだ、良いお母さんじゃないか」

「……その、父上から言われているからかと」

「もう関係ないわ、ラスロ、もうそろそろ」「あ、ああ」


 んー、この感覚……

 あくまでも良き母親で居るようにと侯爵に、夫に命じられ、

 それでする行動はこれまでもあったんだろうが、今のはそれと違う気がした。


(今になって、別れる決意をして初めて、母親に目覚めたような……そんな感覚)


 もしそれをベルナルくんが感じとっていたとしたら、

 おそらく忘れられない一日になるかも知れないな、うん。

 母親の声に従ったのか、剣を納めて直立し、深々と頭を下げる。


「ありがとうございました!」

「……そうだな、このくらいか」

「ラスロ、ありがとう」「いや、まだ時間はある」


 俺はロズリが持って来たタオルで軽く顔や首筋、

 手や腕を拭くと水を飲み、落ち着いてから再び剣を構える。


「さあヨラン、次はヨランの番だ」

「えっ、私がか?! 私と、ラスロが」

「ああ、ベルナルくんとはやらないのだろう、なら俺との特訓を見せて、感じ取らせてやれば良い」


 見た事無いだろうからね、

 稽古をつけて貰えないのなら、

 せめて戦っている所を見せてあげれば良い。


「ラスロ……十何年ぶりか」

「あの当時を思い出しても良いぞ」

「手加減はせぬ」「もちろん、というか腕は戻ってきているぞ」


 やはり魔物との実践は、

 十二年の月日を埋めるには十分だった。

 嬉しそうに剣を構えるヨラン……さあベルナルくん、よく見ていてくれよ!


(そしてこの記憶を胸に……実の母との、別れの時が来るのかも知れないのだから!!)


「ではラスロ……はあっ!!」

「おっと、その踏込は、さすがだなっ!!」


 こうして俺は、

 目一杯ヨランと剣をぶつけあう。


(あっ、ロズリが少し、羨ましそうだ)


「隙ありっ!」「おおっと」


 ロズリともやれる体力、

 残せるかなあ……? ま、明日以降でもいっか。

 という訳で遠慮なく『本当の模擬戦』という物を堪能したのであった。

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