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ハーレム崩壊、十二年後  作者: 風祭 憲悟@元放送作家
第一章 伝説の女剣士のやり直し 錆びついた剣と言われても愛で研ぎ澄ますのみ!

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第57話 どうやら一晩で話はついたらしい だが長男は良くても夫はどうかな?

「重い朝飯だなあ……」


 もう戦う予定は無いと思うのだが、

 肉中心に重厚な朝食をいただく俺たち、

 いや特に昨夜、一戦交えた覚えは……結局、朝まで一人だった。


「ラスロ、冷たい水と暖かい紅茶、どちらのおかわりが欲しいか?」

「いやヨラン、メイドじゃないんだからそんなに世話してくれなくとも」

「私が世話をしたいんだ、十二年分を取り戻したいというか、今後の残された時間を考えると一分一秒も惜しい」


 いやそんなこと言われてもだな、

 勝手に『これからは二人の時間を』とか言われても俺の意思は……

 離れた場所で食事を採るベルナルくんを見る、横に私兵が立っているとはいえ、寂しそうに見える。


「ヨラン、ベルナルくんとは」

「一晩時間を貰って助かった、しっかり話をつける事ができた」

「本当にか?!」「そのはずだ、まあ納得しなくても私の取る行動は変わらない」


 ……もし本当にお別れなら、

 最後くらい同席してやれば良いのに、

 それとも最後にはせず、改めてお別れの席を設けるつもりなのか……


「ちょっと男と男の話をしてくる」「ラスロ!」


 食事のトレイを持って、

 わざわざベルナルくんの隣りへ……

 うん、戸惑っているな、そしてヨランを見ている。


「ベルナル、話をしてあげて」

「……母上がそう、おっしゃられるなら」

「昨夜は、よく眠れたかい?」「……少しは」


 少し、かあ。


「やっぱりお母さんが恋しいか」

「……この年齢で、そんな事を言われるのは」

「おっと失礼、ヨランは話がついたと言っていたが」


 ……やっぱりヨランの視線は気になるのか、

 ちらちら見ている、こんな状態できちんとした言葉は聞けるのか。


「……母上がそう言うのでしたら、そうなのでしょう」

「アレか、やっぱりヨランの、母親の命令は絶対ということか」

「母上というより父上ですね、私の意見どうこうより、父上がどう指示するか」


 そうか、ヨラン自体、

 侯爵家である夫の言いなりだったもんな、

 それこそヨランがこうやって自己主張する事など、そうそう無かったのだろう。


(ここでもし『ヨランと一緒についてくるか?』なんて聞いたら……)


 そうなったらヨランを嫁に貰う事が確定してしまう、

 ならばここは、あえて言い方を変えて聞いてみるか、

 うん、これなら誤解は……多少するかも知れないが。


「ベルナルくんは、父と母が別れたとして、どっちへついて行きたい?」

「……私は長男です、それは弟たちに聞いてあげて下さい」

「まあ、そうなんだが、だが長男が断れば次男が、というケースも」


 侯爵家でそれは厳しいか。


「そういった教育は、受けていませんから」

「つまり選択肢は無い、と」「無いというより父しか選べません」

「それで、いいのかい?」「良いも悪いも無いですね、ただ……」


 食事の手を止めて俯くベルナルくん。


「……言い難い事なら、小声で」

「母上と、もう二度と会えないというのは……辛いです」

「まあ、そうだよな、そりゃあそうだ」


 これは心に来るなあ。


(これ、他の二人となると、もっとダメージが深そうだ)


 いやふたりって、

 弓使いエミリと魔女ネリィの事ね、

 厳密にはふたりの子供達の話であってだな……今は目の前のベルナルくんだ。


「ただ、昨夜の母上は、今までに見た事の無い母上でした」

「それはどんな?」「今まで聞いた事のなかった、勇者ラスロ様の話を……

 今まで話せなかった分、伝えたいだけ伝えると……その時の母上は、まさに別人でした」


 嬉々として話してたのか、

 ネタには事欠かないからなあ、

 十二年間、憶えていたのかそれとも俺が生還したと聞いて思い出したのか。


「そんなに違ったんだ」

「まさに、その、活き活きとした、これが本当の、本来の母上なのだなと」

「ちょっと引いた?」「いえ……こんな母なら、良かったのに、と」


 あー、やっぱり心の死んでいたヨランは、

 全然違う表情というか、やはり別人になっていたか、

 もはや『違う母』としか言いようが無いんだろうな、しかも、その母が良かったと。


(あっ、スープとか冷めそうだな)


 このあたりにしておくか。


「王都まで行くんだよね?」「ええ」

「ヨランと一緒の馬車で行くと言うのは」「断られました」

「そっかそっか」「私より……後は父上が、どう出るかです」


 そう言って食事を再会した。


「わかった、ありがとう」


 結局、自分はほとんど食べなかったな、

 と席に戻ると隣にヨランがやってきて顔を寄せてくる。


「ラスロ、言った通りベルナルとは話がついていただろう」

「お、おう、それなのだが……王都までの馬車、同席はしてやれないのか?」

「してもまたラスロの話をするだけとなるが」「それで良い」


 少し考えて……

 思わぬ提案を出してきた!


「ではベルナルに、私とラスロが結婚するという話をはっきりしてくれ」「えっ」

「さすれば言う通り、離縁する前にラスロの話をもう少し、ベルナルにしておこう」

「……それをせず同乗しろと言ったら」「一言も喋らないかも知れんな」「えええぇぇ……」


 いや実の親子でしょうに。


(まあここは、ヨランを言い包めるか)


 十二年前のように行くと良いのだが。

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