第56話 ヨランと実の息子ベルナル 最後の夜となるらしいのだがよくよく考えてみると
お風呂が終わって四人部屋ふたつのうち、
片方に来た俺……というのも、みんなその片方に集まっていたからだ、
といっても居ないのがひとり、ヨラン……長男も入れたら、ふたりになるのか。
「アリナ、ふたりは」
「はい、今夜は特別に、教会に泊めていただけると」
「そうなんだ、いいんだ」「聖女ハンナ様が、そういった事情なら仕方ないと」
だったら封印へ行く時も俺ひとり泊めてくれても、
とか今更ぼやいた所で仕方が無いか、坊ちゃんのお付き衛兵も、
教会で警備しつつ順番に眠るらしい、えっ飯?! 喰ったんじゃね、そりゃあ。
「母子水入らずってやつか、ヨラン、情にほだされるのかな」
「どうでしょうね、もうラスロの元へ戻る事しか考えていませんから、
どうやって説得しよう、とばかり……説得できなくても、取る行動はひとつかと」
このあたり、
俺がどうこう言う話では無いのかもしれないが、
ひとつだけ引っかかる事がある、これ、正しいのかわからないが……
「ええっと、ここはエミリ、ネリィ」「はい」「はいぃ」
「もし、もしもだが、俺がエミリとネリィと改めて結婚したとしてた」
「します」「はい、喜んでぇ! えへへェェェ」「こらネリィ、遠い世界に行かない!!」
まったく、その年齢で
……姪っ子も渋い顔してるし!
って今はそこに触れている話じゃない。
「よくよく考えてみると、ヨラン含めて俺と再婚した場合、
別れた夫との子は、一応、俺の義理の子供、という事に……なるのか?!」
「そうね、引き取ればそうなるけど、私はそこは考えてないわ」「間違いは置いてきましたァ」
うーん、
そのあたり各家庭の判断によるのか。
「その場合の、二人の、エミリとネリィの希望は」
「私はラスロとこれから、子を三人か四人、出来れば五人以上を」
「このネリィめは、アリナとヨランとエミリの子育てを、我が子のようにバッチリとォ」
うーーーん、
ヨランは確認していないが、
子を半分引き取って一緒に、という気持ちは無いっぽいな。
「ねえラスロ」「どうしたアリナ」
「ラスロとしては、引き取りたいの?」
「いや、あくまでも改めて結婚したら、すでに居る子は俺の子と呼べるのかな、と」
というのもだ、
少ししか話していないものの、
あのベルナルという子が父を捨て、母について来たいと言った場合にどうなるか……
(侯爵家の長男となると、普通はありえないのだがな)
しかし血の繋がった母と息子、
いくら父の命令とはいえ会いに来たくらいだ、
しかも王都で待たず、途中のこんな街で待ち伏せまでして……
「ラスロ、いちど検査をしましょう」
「えっ、何の?!」「魔界へ十二年間も行っていたんだもの、子を作れる能力があるかどうか」
「お、男の俺にか?!」「それでもし駄目だったら、三人の子をいくつか引き取る手もあるわ」
いや、魔界に長く居続けたからといって、
そんな事は無い、はず、あっちの水や食料の副作用とかなければ……
だがそんな検査って出来るのか? いやまあ、やっておくに、越したことは無いのだが。
「その検査は王都で出来るのか」
「おそらく聖女様なら関係できるかと」
「ハンナさんかあ」「後で行きましょう」
もう遅いから、
明日の朝で良いかな、出発前。
「うん、わかった、その意見はわかった……で、ミオスはどう思う」
「はい、先輩方、以前の、昔のハーレムの方々に失礼な言葉になってしまうかもですが」
「構わない、ミオス達だって俺の立派な、今の婚約者だ、そのあたりは言う権利が、資格がある」
どっちを選ぶかは別にして。
「ありがとうございます、まず普通に考えて、勇者ラスロ様の血を残す相手は、
これは一般論、普通の当然な事として、相手は若ければ若い方が良いと思います」
「まあそうだよな、いやもちろん遅く産んでも丈夫な赤ちゃんは誕生するだろうが」
でもリスクだの成長だの、
様々な事を考えれば若い方が、
というのは十二年前から変わらない。
(ネリィなんかまさにそういう理由で第四夫人になった覚えがある)
現に七人も子を産んだんだっけ、
相手は俺じゃないけれどもなっ!
しかもそのせいで、もう母体は……
「なので、これは国単位、国家単位、そして勇者と言う伝説単位で言えば、
勇者様が年齢を重ねてらっしゃる以上、相手の、孕む妻はやはり我々四人が適任かと」
ロズリもハミィも頷いているな、
一歩遅れてナタリも、まあ彼女は年齢が、
とはいえ旧ハーレムよりもは……そうか、そういう考え方も出来るな。
「ねえラスロ、やはり一番大切なのは、愛だと思うの」
「アリナの意見は、そういうことか」「やはり愛が子を授かるはずよ」
それはちょっとハミィにはキツい言葉では。
「ラスロ様、やはりここは肉体的に若い相手の方が、子を宿しやすいと思います」
「ミオス、まあ言いたい事はわかるよ、理に適っているし、陛下もそう判断しそうではある」
「ではラスロ、こうしましょう」「アリナ、名案でも?」「はい、いっそ『早い者勝ち』で行きましょう!!」
そ、それはまずいだろう!!!
「いやいや、肉体交渉ありきかよ!」
「ラスロの年齢的に、あと我々の年齢的に、早ければ早い程、良いかと」
「俺にちゃんと選ばせてくれよ」「孕んでから考えましょう!」「いや順序が」
と、廊下から扉がノックされる。
「あ、はい」「そろそろ消灯だよ」
おかみさんの声だ、
うるさいから黙れってことか、
封印への行きで、教会で話し合ってた時とは違うからね。
(とりあえず、お開きだな)
去っていく足音、
時間切れっていう感じか。
「わかった、一晩考えるよ……さあ、寝るか」
「はいラスロ、では」「ラスロ様、また明日」
「うん、ってみんな出て行くんだ……って、みんな?!」
集まっていた七人、
旧ハーレム三人と新ハーレム四人、
みんな出て行っちゃった、残ったのは四人部屋に俺ひとり。
「ラスロサマァ、ご指名があれば残りますがががァァァ」
「ネリィ、もし誰も呼ばなければ?」「このネリィ、ハミィと同じベッドですねェ」
「ま、まあそれも叔母と姪の水入らずで」「およよョョョ」「ラスロお兄様、お休みなさいませ」
こうして気を使われて、
四つあるベッドのうちひとつに適当に眠ったのだった。
(帰りも帰りで、なんだか悪い事しちゃっている気が)
起きたらみんなこっちで寝てたりして、
まあいいや、今夜はのびのびと眠ろう……
さて、明日朝、ヨランと長男のベルナルくんは、どうなっているのやら……??




