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色を司りし者  作者: 彩 豊
第三章 桃色脳であるエン公爵との決闘
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1-3-15(第65話) 彩人、看病される。~クリム編~

次はクリム=ヴァーミリオンの看病です。

 二日目、


「次は私の番ですね♪」


 クリム王女の日、だそうだ。

 何度も言うが、俺の怪我は既に完治しているため、看病も一日中ベッドで横になっている必要はないのだが、何故かそのことを言うと、


「そのおしゃべりなお口は私のお口で塞いだ方がよろしいでしょうか?」


 という返しが来る。

 やはり二日目ということもあり、俺はあっさりとクリム王女の看病を受けることにした。

 といっても、俺もクリム王女もやらなければならないことは無く、ただ無言の時間が過ぎる。

 そして、十分ほど経過したあたりで、


「……何か、話しませんか?」

「……そうだな」


 だが、王族と何を話せばいいのだろうか?イブとは何を話していたっけか…。

 …食べ物のことしか話していなかった気がするな。本当にあの一家は俺の作る料理が好きだよな。 美味しく食べてもらうことは嬉しいけど。


「フェニックス」

「え?」

「クリム王女が知っている範囲でいいので、あのフェニックスのこと、教えてくれませんか?」


 そういえば決闘後、あのフェニックスを一度も見ていない。ちょっと気になるな…。


「分かりました。それではまず、フェニックスの生まれについてですけど………」


 こうして、俺とクリム王女の二人きりで、勉強会が始まった。


 クリム王女の話でいくつかわかったことがある。

 あの決闘の後、フェニックスはルリの元へ飛び、何かを話した後、どこかへ飛び去ったらしい。

 クリム王女が推測するに、親の元へ帰った、ということなのだろう。

 ちなみに、ルリが言うには、

「あの人には、後でお礼をするから、絶対受け取ってね!」

 とフェニックスが言っていたらしい。

 フェニックスがくれるものか。何がもらえるのか、興味があるな。

 こうして、俺とクリム王女の会話は続く。


 会話が順調に弾んだおかげで、もう日が暮れ始めていた。

 俺達、話し過ぎじゃね?と思うくらい話したと思う。欲を言えば、まだまだ話足りないくらいだ。

 

「それでは、本題に入りますね」


 急に、クリム王女の雰囲気が変わる。

 これは俺でもわかる。きっと大事な要件なのだろう。

 俺はただ黙って頷き、クリム王女に話を促した。


「今回のこともそうですが、戦争の件は本当に、本当にありがとうございました」


 そう言って、クリム王女は深く頭を下げる。

 やめて!そうやって下げられると、なんか罪悪感があるんですけど!?


「べ、別にいいってそんなこと!!」

「そんなこと?」

「え?」


 え?何で急に呆れ始めているの?


「はぁ~。なるほど。リーフさんが言っていたことは本当だったようですね」

「えっと、何がです?」

「その自覚の無さです」

「自覚って…」

「そうです!アヤトさんがしたことはこの赤の国の常識を覆す偉業を成し遂げたのですよ!?」

「偉業?何が?」


 正直、何が偉業なのかわからない。

 俺が今までやってきたことといえば確か…修行したな。あと、あのペルセウス、じゃなかった。グランを倒したり、魔王の城に行ったり、魔王と闘って勝利したり、イブと結婚させられそうになったり、後は…。

 ふと思ったが、俺の生活、内容が濃すぎないか?

 どうやったらこんなハードな人生になるんだ?あの神を殴ったら、少しは落ち着くのかね。

 …少し考えが逸れてしまったな。それより今はクリム王女の話だ。


「…はぁ。あまり直接は言いたくありませんでしたが、仕方ありませんね」

「そうですよ~。俺は直接言ってくれないとわからないのでーすよ」

「…真面目に聞いているのですか?」


 怖っ!?ちょっとふざけただけなのに、急に俺を睨まないでほしい。


「いいですか?あのエン公爵の使った赤魔法【蒼月】は最強の魔法、本来なら、詠唱が完成し、発動した時点でアヤトさんだけでなく、この王都が滅んでいてもおかしくなかったのですよ!?それをアヤトさんとルリちゃんのたった二人で凌いだのですよ!これを偉業と呼ばずして、何が偉業ですか!?」

「クリム王女。二人じゃありませんよ。フェニックスも入れて、二人と一匹ですよ。さらにいえば、ルリはヒュドラなので、一人と二匹ですね」

「そんな些細なことはどうでもいいのです!!」

「ひぃ!!?」


 何故だ!?大事な情報を真顔で言ったのに、ぎゃくぎれされたぁ!??


「いいですか、アヤトさん!あなたは凄い人なんです!それを自覚してください!」

「自覚も何も…」

「言い訳しないでください!」

「はいぃぃ!」


 なんか今日の俺、怒られてばっかりだな…。

「だからアヤトさん」

「はひっ」


 急にクリム王女の手が俺の頬に触れる。

 …柔らかい。このまま触れていたい。


「アヤトさんが今、してほしいことは何ですか?」

「俺のしたいこと…」


 この世界に来てからあまり考えてこなかったな。

 したいこと、か…。

 

「耳かきしてほしい」

「えっ?」

「え?」

「「………」」


 あれ、何だこの空気。気まずいな。

 もしかして、俺、やっちまった?


「そ、そうなので…」

「いやいやいやいやなしなしなしなし!!何も言ってないよ!?」


 やばい!?つい声に出しちまった。何やっているんだ俺はぁぁぁ!?


「…えい♪」

「うわっ!?」


 クリム王女が俺の頭を持ち、自分の膝に乗せる。

 ああ。クリム王女の膝、気持ちいい♪

 俺の求めている枕はきっとクリム王女の膝だな。今後寝る前に毎日膝枕してもらいたい。そしてそのまま子守歌でも歌ってもらえると最高だな!


「うふふ♪どうですか、私の膝枕は?」

「さいこ、こほん。なかなかじゃないですかな?」

「………」

 急にクリム王女がジト目で俺を見下ろす。

 すいません嘘です。めっちゃ気持ちいです。

 このまま寝たいぐらいです。

 

「アヤトさんって…、素直じゃないのですね♪」

「ぐぬぬぬ…。絶対にこの借りは返させてもらいますからね!」

「そんな幸せそうな顔が見られて私は幸せです♪」


 ちくしょう!後でほえづらかかせてやる!

 俺は耳かきされながら誓う。


「大変有意義な時間を過ごさせてもらいましたよ、アヤトさん」

「…こちらも大変ためになったのでおあいこです」


 もうこんな辱しめを受けぬよう、細心の注意を払って生活しよう。

 俺はそう心に決めた。


「それではお休みなさい、アヤト?」

「え?えっと、お休み?」

「そこは名前を呼ぶ場面でしょう、アヤト?」


 え?なにこれ?何かの罰ゲームか?

 だが、クリム王女は俺のおどおどしている態度が面白いのか、今もくすくす笑っている。

 …上等だ。俺も男だ。やられたらやり返す。

 倍返しだ!

 俺はクリムを壁まで追いやる。そして、クリムの近くの壁を思いっきり叩く。

 所謂壁ドンだ。

 …まさかこの俺がやるなんてな。人生、分からないもんだな…。

 そして俺は、クリムの耳の近くまで顔を移動して、


「お休み、クリム」

 

 と、呟いた。

 すると、クリムの顔は見る見るうち赤くなっていく。

 やった。やったぞ!ついに借りを返せたぞ。


「ふふ。これで借りは返しましよ、クリム」

「…そんなに顔を赤くして、何を言っているのですか?」

「…お互い様さ」


 しょうがないじゃん!壁ドン、初めてだったんだよ!

 緊張と恥ずかしさでもうクリムの顔なんて見てられない!

 俺は自分の顔の変化に気づき、そのままベッドに潜り込んだ。


「…お休み」


 そうクリムが小さく呟くと、顔を俯かせたまま、俺がいる部屋から出て行った。

 …ちょっとやり過ぎたかな?

 今さらながら、少し反省した俺であった。

いつも読んでくれてありがとうございます。

次はメインヒロイン?のイブ(真名はカナ=デビル)の看病です。

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