7-1-60(第549話) 虹無対戦~その後の未来~~FIN~
各国の重鎮達との会合後、俺はどうしているのかというと、
「・・・こっち出来たぞ!頼む!」
「うん!それじゃあ持っていくねー♪」
とある店で働いている。
「リーフ!ホットケーキが足りないわ!追加で焼いて!」
「了解!イブも手伝って!」
「・・・ん♪」
「リーフ様、イブ様、焼くタネの準備が出来ましたので、後はお願いします」
「ありがとう、クロミルちゃん」
「・・・ん」
「道具の方はきちんと点検して問題ありません。いつでも使用可能です」
俺だけでなく、クリム達も一緒に働いている。
そして今働いているこの店は、無の国にあった城跡を一部改装して使わせてもらっている。元の城の持ち主だと思われるセントミアさんに使用してもいいかと聞いたところ、
「元々、私が建てた城というわけではない。建ててあった城に勝手に住んでいただけだから、わざわざ許可なんてとらなくていい。好きなだけ使って構わない」
無事、セントミアさんから許可をもらったので、堂々と改装して使っている。
そもそも、どうして俺達がこの無の国で店を開いたのかというと、この無の国に住む理由から遡る必要がある。
俺達の処遇についてなのだが、旅行で訪れる分にはいいが、一国に留まり続けるのはまずいということなのでどうしようか考えたところ、
「ここにいればいいんじゃね?」
と思い至り、リーフ達に相談した結果、ここ、無の国にしばらく住もうということになった。そして俺達は、この無の国の土地を一部使い、自宅を造って生活を始めた。生活基盤を整えたら、次は何をしようか考えた時、他国への旅行も考えたが、
(せっかくだし、モミジの願いを聞いてみるか)
もしかしたら以前にも聞いていたかもしれないが、俺はモミジに何かやってみたいことはないか聞いてみた。
そうしたら、
「であればその・・・このホットケーキをみなさんに振る舞ってみたい、です。駄目、でしょうか?」
と返ってきたので、俺達はこれを機に料理店を始めることにした。
店舗を用意し、どんなメニューを提供するか考え、食材も調達出来るよう、畑や水田も用意し、自給自足出来る環境まで整えた。そこまで準備をして、肝心なことを忘れていた。
それは、集客力である。
この無の国付近に人は一切いない。なので、この店に来たい人がいても来ることは出来ず、来客出来る人がいないのだ。
(俺ってばなんてアホなのだろうか)
自分に絶望してしまうな。そういえば店を準備している間、どうして誰もこの集客力の無さを突っ込んでくれなかったのだろうか。クリムやルリはともかく、リーフやイブなら気づきそうなのに。そう思い質問してみたら、
「確かに、ここに店を建てること、店周辺の設備等の話を聞いた時に気にはなりましたが、この畑のように何か考えがあるのだと思い、聞きませんでした」
「・・・リーフに同じ」
「そ、そうか」
どうやらリーフとイブは、俺に何か考えがあると思い込み、何も聞かなったみたいだった。いや、みんなが思っている以上に俺、馬鹿だからね?ちゃんと考えてくれても・・・いや、人のせいにするのはよろしくないな。全部、何も考えずに行動した私が悪いです。すみません。
(とはいえ、ここまで店を準備したわけだし、出来れば開店したいところだが・・・、)
どうしようか考えた時、俺は考えを逆転させた。
(ならいっそ、誰も来ないことを利用してやろう)
というわけで、客層を出来るだけ絞ることにした。客層は、
「・・・アルジン、一応出来ましたが、これで大丈夫です?」
「・・・ああ。バッチリだ」
俺はレンカに扉を作ってもらい、そこにある【付与】を施す。
【付与】の内容は、【転移】、【回収】、【不壊】だ。
この扉の転移先は、同時に作ったもう一つの扉である。
「この扉をくぐると・・・よし!」
どうやら【付与】は成功したらしい。
(後は防犯面だな)
このままだと、誰もがこの扉をくぐることが出来てしまうので、制限をかけることにした。
「形は・・・まぁ、こんなものか」
羽みたいな形のブローチに六つの穴を開ける。そこに丸く加工した石をはめる。
「まずはこの扉に制限をかける必要があるな」
その前に、他の人も通れるかどうか試してもらった。結果、セントミアさん、レンカ、モミジは無事に通ることが出来た。なら、全員通ることが出来るだろう。
「制限は・・・これにしよう」
扉に、【通過制限・赤無】を付与する。
【通過制限・赤無】の付与内容は、【赤無】を付与されている物を持っている者しか通過出来ない仕組みだ。次に、この丸く加工した石に【赤無】を付与する。そして、この【赤無】を付与したブローチを持って、扉が通れるか検証する。
検証した結果、
「・・・よし!」
通ることが出来た。次に、ブローチを持たないまま扉を通ることが出来るのか検証してみた。
「うん・・・うん!」
俺が思った通り、通ることは出来なかった。つまりこの扉を通る為には、このブローチを持たないと転移出来ない、ということだ。
「・・・流石はアルジンですね。このようなものを作るとは」
「これなら、通したい人にだけ通すことが出来そうですね」
「このようなものを作ってどうするのです?」
「ん?こうするん、だよ!」
俺は扉を設置する。
「これでよし。後はこの扉を赤の国に設置すれば完了だ」
「・・・もしかして、この扉を使えば、ここと赤の国を簡単に行き来出来るとか、です?」
「ああ」
「それって凄いじゃないですか!?」
「そうか?あの宝珠があるから、この移動手段は普通なものかと思っていたのだが・・・、」
「ここから赤の国までという長距離を一瞬で移動出来る手段が普通なわけありませんよ。アルジンは凄いです」
「そう・・・なのだろうか?」
モミジとレンカは俺を褒めてくれた。ちょっと嬉しい。
褒められて嬉しくなった俺は、この調子のまま青、緑、黄、白、黒それぞれの国用の扉を作り、それぞれ専用の石も作り、ブローチにはめ込んでいく。もちろん、ちゃんと使えるか検証済みである。
「これで六カ国分作ったな」
この扉を作ってまで、俺達がこの店に招きたかったお客様というのは、
「ようやくアヤトが作ったホットケーキを食べることが出来るのか」
「やっと・・・やっと、ですわね」
各国の王族である。俺達のこの店は、王族御用達のお店となったのである。
「・・・うむ。やはりここのホットケーキは天下一品だな」
「そうですわね。最高ですわ」
そして、各国の王族の目当ては、俺達が作るホットケーキである。どうやら俺達が作るホットケーキは格段に美味しいらしく、頻繁に来てくれている。
「それで、今回は食事のためだけにわざわざここまで来たのか?」
「うむ。それはな・・・、」
そしてこの店は、単に王族が食事するだけの店ではない。王族からの依頼もこなしていっているのである。主な依頼内容は強力な魔獣、カラー種共の討伐だが、他にも料理の指導、政策に関する話し合い、雑談等、マルチに使用されている。
(ここにいるルリ達が協力してくれているからな)
王族からの依頼は、俺だけでなくリーフ達も協力してもらっている。正直、リーフ達の協力が無ければこの店の経営も王族からの依頼もこなすことは出来なかっただろう。
そして、大きな変化は他にもある。
「それじゃあこの件は・・・俺とジャルベ達でやるか」
「・・・大丈夫?ジャルベ達にも生活はある」
「それは分かっている。空いている奴らを誘って協力してもらうつもりさ」
その変化は、この無の国にジャルベ達キメルムが住み着き始めたことである。どうやら俺達がこの無の国に住み始めたことをどこかで聞いたようで、キメルム達はこの国に住むことを決意したようだ。生活基盤どころかほぼ何もないこの地に移住するなんて正気の沙汰ではないな。そう思った俺は何度も忠告した。
「本当にここに住むつもりなのか?」
「やめておけ。見ての通りなにもない場所なんだぞ?」
「移住して、すぐ後悔するかもしれないんだぞ?それでもする気か?」
忠告したのだが、
「もちろん」
「大親分がここに住むなら、俺達もここに住む!」
「これで俺達も大親分と一緒に過ごせる!やったー!!」
こいつら、正気か?そう思った時もあったが、
(・・・信頼出来る者が近くにいることで安心出来る、みたいなものか)
そう考えることにした。俺も近くに両親がいた時、どこか安心出来たもんな。あれ?ジャルベが近くにいるのだから、俺が近くにいなくてもいいのでは?
(違うな)
信頼出来る者は、多ければ多いほどいいからな。出来るだけ信頼出来る者の近くにいようと考えた結果、この無の国に移住することを決めたのだろう。
(まぁ、一度あいつらが決めたわけだから、俺が口を挟むわけにはいかないか)
何度も忠告したから口を挟んでいない、という口実は嘘になると思うが、そんなツッコミは聞こえないふりをしよう。
というわけで、キメルム達がこの無の国に移住してくれたおかげで、俺達の生活が賑やかになった。
(本当はこの国でひっそりと過ごす予定だった気がするけど・・・。まぁ、この賑やかな生活も悪くないな)
俺達、国の王達、キメルム達・・・。本当、退屈しない日々だ。
(でも、悪くない)
この後、俺がどうなるか分からない。
すぐに死ぬかもしれないし、永遠に近い時を過ごすかもしれない。
だが、少しでも俺は幸せな生活を送ってみせる。その幸せな生活を送ることこそが、今の俺に出来る最大限の親孝行だと思うから。
(見ていてくれ)
俺はふと、首を上に上げる。俺の視線の先には、この世界にいるはずのない両親がいた。
(俺、生きるよ)
さて、
「?・・・アヤト、どうかした?」
突然、イブが俺に話しかける。
「さて、今晩・・・どう、です?」
「逃がしませんよ?」
俺は今、三人の女性から迫られている。
(今日も俺は絞られるのか・・・、)
最近は毎晩何度も何度も迫られて困っている。女性から迫られて困るなんて幸せな悩みだと思うが、毎日は辛い・・・。
「ぼ、僕も混ざってもいいかな!?混ざるからね!!」
「お、大親分!俺みたいな体に興奮しないかもしれないけど・・・俺もいいか?」
「ヤヤもやるんヤー♪」
更にラピス、ジャルベ、ヤヤ達も混ざり始める。もうカオスな状況である。
(ど、どうしてこうなった!?)
誰か、俺に平穏な生活を送らせてくれ~~~!!!
時は経過する。
ある国はとても賑やかで活気に満ちていた。
「アヤト~!こっちにホットケーキ三枚頼むー!!」
「あいよー。というかお前ら最近来過ぎじゃないか?」
「いいではないか。たまにはこの絶品ホットケーキを堪能したいのだよ」
(たまにはって、このところ毎日来店していないか?)
その場所はある飲食店で、多くのお客で満ちている。
「ホットケーキ追加で三十枚だってー」
「おう!クロミル、手伝ってくれ!!」
「承知しました」
その中で忙しなく動いている者達がいる。
「・・・それでは例の件はどうなったのか聞いたのかね?」
「・・・ん。成果はこれ」
一方、少し離れた場所でイブとその父、ゾルゲム=デビルは依頼に関する報告をしていた。
「ほぉ~?これが例の魔獣か?」
「・・・ん。こいつが今回の騒動の原因」
「なるほど。となると、これで当分夜の騒音問題は解消されたな。本当に問題がなくなったかはこちらで確認しよう」
「・・・ん♪」
「それでは報酬の方は後で渡すとして・・・私達にもホットケーキを作ってくれないか?」
「・・・ん。分かった」
報告を終えたゾルゲムはイブにホットケーキを要求し、イブはホットケーキを作る為に席を立つ。
「ただいま戻ったぞ」
「お♪セントミアさんおかえり。それで結果はどうだったか?」
「無事に採ってきたよ。これが欲しかったんでしょう?」
セントミアと呼ばれた者は持ってきたものを彩人達に見せる。
「そう!それだよ!!」
「一応、これが今後もここで採れるよう、周辺の環境もこれに記しておいたから、参考にしてくれ」
「色々と気を利かせてくれて悪いな。ここでも栽培出来るか色々研究してみるよ」
「ああ。私も惜しみなく協力するつもりさ」
「期待している」
その彩人の言葉に、セントミアは笑みを一瞬こぼす。
「あぁー!セントミアお姉ちゃん笑ったー♪」
「・・・笑っていない。ルリの気のせいだ」
セントミアは彩人達と馴染み、良好な関係を築く。
「突然すみません!緊急事態です!!」
「?何かあったのか?」
「緑の国近辺に突然、魔獣達が大量発生しました!詳細は不明ですが、現状では魔獣の総数は一万を超えているのだとか・・・、」
「一万越えか・・・。俺、だけじゃ難しそうだな・・・、」
彩人は周囲を見る。
「私、お供しますよ!」
「魔獣討伐ですか!?腕がなります!!」
「・・・上等」
「おねーちゃん達も行くの?じゃあルリも行くー♪」
「ご主人様の行くところが、私の行き場所となります。ご主人様、ご一緒させていただきます」
「わ、私も行きます!緑の国に住んでいる方々を助けられるのなら助けたいです」
「もちろん、私も行かせていただきます。アルジンを独りにはさせませんからね」
リーフ、クリム、イブ、ルリ、クロミル、モミジ、レンカ達は自ら名乗りを上げた。
「ぼ、僕も行くよ!他の国のことだけど、放ってはおけないよ!」
「ヤヤ達もいくんヤよ!」
「ユユ、頑張ユ」
「ヨヨも行くヨ~」
「俺達も行くぞ!」
そしていつの間にかこの国に住んでいるラピス、ヤヤ、ユユ、ヨヨ、ジャルベも行くことになった。
「みんな・・・悪いな」
彩人は周囲の人々に頭を下げる。
「ここにいる者達は、アヤトが悪いだなんて思っていない。だから、謝る必要はないと思うぞ?」
「・・・そうか?」
彩人は周囲の人々を見る。周囲の者達は一斉に頷く。
「そう、なのか。それじゃあみんな、よろしく頼む」
こうして彩人達は緑の国に向かう。
彩人達の冒険はまだまだ終わらない・・・。
次回予告
これで『色を司りし者』はひとまず完結とさせていただきます。長々と読んでくださった読者の方々、真にありがとうございました。
評価、要望があれば続編を書こうと思います。(続編の内容は未定ですが)
感想、評価、ブックマーク等、よろしくお願いいたします。




