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「好きだ」と言えなくて  作者: 水城
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5、陽人【オレの好きな人】

 一樹がやっと自分の気持ちに気づいた日。中学生組の学校の昼休み。

 オレはクラスの仲良い奴とご飯を食べるために食堂へ向かっていた。他愛もない話をしている中、後ろから女の子に呼び止められる。

 「高瀬くん……! あの……話があって」

 僅かに顔が赤く、緊張しているかのような表情から俺は瞬時にその子の言いたいことを理解し、他の奴らには先に行ってもらった。

 呼び止めた女の子を連れて中庭へ向かう。

 連れ出してから5分。一向に彼女は何も言わない。いい加減俺だって腹が空くし、イライラしてくる。ようやく彼女が口を開いたのはそれから1分後。

 「あの……私、6組の水川です! その……高瀬くんのこと好きなんです」

 顔というか耳まで真っ赤にして言う彼女はどっちかって言えば可愛い部類。知香と比べたらおとなしくていい子そうだけど。

 「も、もし彼女いないなら私とつき合ってもらえませんか?」

 そう言って見上げる彼女はうっすらと涙目。別にまだ振ったわけじゃないのに……。

 「ごめん。オレ、好きな奴いるから」

 「同じ……学校の子?」

 「……いや、ちがう」

 「そう。ごめんね! 私のことは忘れていいから!」

 彼女は誰が見ても明らかなほど無理をして笑っていた。オレはその場から動けずにしばらくただずんでいた。

 その後は昼飯もろくに食べることができず、ぼけーっとしていた。放課後になっても変わらずぼーっとしていたから優介に頭を叩かれるまで授業が終わったことに気づいていなかった。

 「何やってんの?」

 叩かれた頭をさすりながら見上げるといつもの無愛想な顔が見下ろす。オレは机の横にかけてあるかばんを持って帰り支度を始める。

 「んー、考えごと?」

 「何で疑問形なんだよ。っていうか、お前さ、また女の子振っただろ?」

 相変わらずこいつは情報早いだろ……。何で知ってるんだよ。

 「お前に告った水川って俺のクラスだし」

 あぁなるほど……ってエスパーか!? こえーっつうの!!

 「なあ、水川が他の奴に言ってたんだけど、好きな奴って誰?」

 真剣な顔で見つめてくる。そんな顔、見たことないんだけど。なぜか視線がそらせない。

 「……俺、夕飯の支度あるから。じゃあな」

 優介は昔から勘がいい。オレは優介から逃げるように教室を出た。

 この想いは決して誰にも知られちゃいけないから。


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