表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私が書いた悪役令嬢の世界に転生したのですが、キャラが全員設定と違います  作者: 夜凪 蒼


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/17

第2話「悪役令嬢が、設定より全然いい人だった」

レイア・ヴォルンと初めて会ったのは、王都到着の翌日だった。


 私の書いた設定では、レイアはこういうキャラだった。


 冷酷。高飛車。笑顔が計算されている。ヒロインを見ると目が細くなる。「あら、随分と地味な方ですこと」が口癖。


 完璧な悪役令嬢だ。自分で言うのもなんだが、よく書けていたと思う。


 その設定を頭に叩き込んで、私はレイアの部屋の扉をノックした。


 「どうぞ」


 入ったら、レイアが窓辺に座って本を読んでいた。


 顔を上げた瞬間、にっこり笑った。


 「マリア! 来てくれたの、嬉しい」


 (え)


 「元気だった? 馬車の旅、疲れたでしょう。お茶、用意させるわね」


 (え?)


 「ねえ聞いて、昨日読み終えた本がすごく面白くて。マリアも好きそうだと思って取っておいたの」


 (ちょっと待って)


 (これ、誰?)


 私は固まったまま、レイアを見た。


 艶やかな黒髪、切れ長の目、整った顔立ち。外見は設定通りだ。


 でも笑顔が違う。設定では計算された笑みのはずだった。今の笑顔は、普通に、素直に、嬉しそうだった。


 「マリア? どうしたの、顔色が悪い」


 「あ、いえ……ちょっと、驚いて」


 「何に?」


 「……レイア様が、とても機嫌が良さそうで」


 「機嫌はいつもいいわよ」


 (いつもいい)


 (設定では「常に不機嫌そうで近寄りがたい」と書いたのに)


 「そうですね……」


 「座って、お茶飲みましょう」


 促されてソファに座った。侍女がお茶を持ってきた。


 レイアが本を差し出した。


 「これ、読んでみて。主人公が最初は孤独なんだけど、少しずつ……」


 (好きな本の話をするのが好き、という設定は合ってる)


 (でも、雰囲気が全然違う)


 「レイア様」


 「何?」


 「最近、ヒロイン……ミア様とは、どのようなお付き合いを?」


 レイアが少し考えた。


 「ミアちゃん? この前、図書室で一緒に本を読んだわ。あの子、読書が好きなのよ。意外でしょう」


 (意外というか)


 (仲いいの?)


 (設定ではミアをいじめるはずだったのに)


 「……仲がよろしいのですね」


 「よくはないわ、まだ知り合ったばかりだもの。でも、嫌いじゃない」


 (嫌いじゃない)


 (それだけで、もう設定と違う)


 私はお茶を飲みながら、静かに考えた。


 (なぜ違うんだ)


 (私が書いたレイアは、こんなに素直な人じゃなかった)


 「マリア、また考え込んでる」


 「そうですか?」


 「いつもそういう顔をするのよね。昔から」


 (昔から、か)


 マリアとレイアは幼なじみという設定だった。それは合っている。


 「レイア様、一つ聞いていいですか」


 「何でも」


 「ヒロイン……ミア様を、最初に見たとき、どう思いましたか」


 レイアが少し首を傾けた。


 「どう、って……普通の子だと思ったわ。少し緊張してたけど、目が真っ直ぐで、悪い子じゃないなと」


 (普通の子)


 (目が真っ直ぐ)


 (「生意気な平民が」とはならなかったのか)


 「……そうですか」


 「なんでそんなことを聞くの?」


 「なんとなく」


 「変なマリア」


 レイアが笑った。


 (設定と、全然違う)


 私はお茶を一口飲んで、心の中でそっとつぶやいた。


 (ごめんレイア、私が書いた設定、全部間違いだったみたい)




    ◇


 ──柊詩の手記より。


 『レイア・ヴォルン、設定と全然違った。いい人だった。私が書いた悪役令嬢はどこに行ったんだ。でも、こっちの方が好きかもしれない。複雑』




次話:「王子が、設定より全然ダメだった」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ