第15話「ヴィンが、妙に協力的だった」
ヴィンに取材を申し込むと、即座に「いいぞ」と言われた。
(設定通りの反応だ)
ヴィンだけが、最初から設定通りだった。クールで、判断が速くて、余計なことを言わない。
「何が聞きたい」
「レイアのこと、です」
「何でも答える」
「どこから好きになりましたか」
ヴィンが少し間を置いた。
「最初から」
「最初とは」
「会った日から」
「でも最初は冷たかったじゃないですか」私は記憶を掘り起こした。「最初の頃、レイアのことを無視していた場面がなかったですか」
「無視じゃない」
「では?」
「……距離を置いていた」
「なぜ」
ヴィンが少し考えた。これが唯一、設定通りじゃないかもしれない、と思った。ヴィンは設定では「感情がない」キャラだったが、今は明らかに考えている。
「好きだと気づいたら、うまく動けなかった」
(人間じゃないか)
「それは書いていない設定でした」私は正直に言った。「私が作ったヴィンは、もっと計算高いキャラで」
「そうか」ヴィンが少しだけ眉を動かした。「俺は計算しなかった」
「結果的にはよかったですよ」
「分かっている。レイアが笑ってくれたから」
(この人、すごく素直だ)
(私が書いた設定より、ずっと素直だ)
「もう一つだけ」
「なんだ」
「レイアに告白したとき、何と言いましたか」
ヴィンが少し沈黙した。
「それは書かなくていい」
「なぜですか」
「二人だけのことだから」
(そうか)
(二人だけの言葉、か)
「分かりました。書きません」
ヴィンが少し頷いた。
「書いてくれてありがとう」
「え?」
「この世界を書いてくれたから、レイアに会えた」
◇
──柊詩の手記より。
『ヴィンが「書いてくれてありがとう」と言った。泣きそうになった。泣かなかった。でもすごくよかった』
次話:「マリアが書き始めた」




