プロローグ2
薄暗い洞窟の中、10歳にも満たなそうな幼い子供たちは何かを追いかけていた。
そっちに行った!レリアっ!頼む!
レリアと呼ばれた少女は標的を定め、それに飛びかかる。
しかし容易くかわされ少女の体は地面に勢いよく当たった。
イデッ!……うぅ。ガルフ!お願い!!
任されたァ!うおおおおぉ!!!
ドンと来いやァアアッッ
呼ばれた少年は先回りしていたらしい。
標的の逃げていく方向に立ち待ち構えていた。
しかし。
彼らの入念な作戦はいとも容易く破られた。
標的のそれは勢いを止めず少年の腹部に突進した。
うげぇっ!
少年は痛みと共に込み上げてくる吐き気を何とか抑え、倒れ込んだ。
なぁにやってんのよっ!もう
ノアっ、私がそっちに追いやるから回り込んで捕まえて!!
転んだ後直ぐに体勢を取り直した少女が叫ぶ。
えぇ、、
ノアと呼ばれた少女は握っていた棍棒を構え、覚悟を決める。
友人に追いかけられた標的を見る。
あれを叩くんだ。
タイミングを逃さぬため、目を離さず
標的を見る。
標的も緊迫した表情でこちらを見てくる。
これは命を懸けた勝負だ。
もう一度言おう。
標的が、つぶらな瞳でこちらを見ながら、向かってくる。
あれを、一気に……叩…………く
無理だ。
あんな目で見られたら、同情する他ないじゃないか。
でも、あれを捕まえなきゃ私たちはーーー
少女はもう一度強く棍棒を握り、覚悟を決めてもう一度標的を見定める。
腕に力を入れ、一気に振り落とす。
やっぱ無理ぃぃ!!
思考とは別の方向に棍棒が振り落とされた。
勢い余った棍棒は少女の体を持っていく。
ぐぎぃっ!
醜い悲鳴をあげて少女はゴツゴツとした岩の硬い地面に転げ落ちた。
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ちょっとノア!
アンタ何考えてるのよ!
今アンタが叩いてれば捕まえられたじゃないっ!
だってぇ、、無理だよ。
あんなつぶらな瞳した可愛い物を叩き潰すなんて……
レリアは獲物を捕まえるのに躊躇したノアに怒りをぶつける。
対してガルフは…………
うぅ………………気持ち悪い゛ぃ゛…………
それどころじゃ無さそうだ。
お、いたいた。
おーいガキ共、大丈夫かぁ?
すらっとした長身の女性がこちらに近づいてくる。
これで試練は失敗だね。
アナウサギの1つも捕まえられないお前達を、外に行かせる訳には行かない。
アナウサギとは、地下の洞窟などに生息するうさぎの1種だ。
生まれてから地下で暮らす子供達は、いつしか外の世界に憧れを持っていた。
外の世界の存在を知った子供達は大人達に外の世界へ行けるよう懇願し続けた。
しかし大人達はそれを決して良しとしなかった。
それでも子供達は諦めずに懇願した。
しばらくして根負けしたリュカは、試練に合格する事を条件に外に出る事を許可した。
彼らの年齢に見合わぬ、理不尽な試練に。
にしても一体どうしてそんなに外を求めるかね。
ここは常若の国。みんなで安全に暮らせる。
外には危険な物がたぁくさんあるんだよ。
リュカはぬっと脅すような表情を浮かべて子供たちに言う。
そんな表情に一瞬レリアは躊躇したが顔を赤くして頬をふくらませながら言う。
行ったことないから分からないじゃない!
私のお父様は毎日行ってるわ。
大人達だけずるいじゃない!!
そうだそうだと他の2人も同調するが
そりゃぁ、マナーンはこの村一の水魔法の使い手だからね。
彼ぐらい強くなれるなら、喜んで許可するよ。
まぁ、強くなりたいんならこれから毎日大アナモグラを倒すぐらいな事しないとね。
大アナモグラとはこの地下世界の生態系の頂点に立つ巨大肉食生物だ。
この怪物から村を守るため、村の穴の壁には常に村の屈強な戦士達が見張っている。
…………。
リュカの一言に捻り潰された子供たちは黙り込んでしまった。
私はこの常若の族長、マナーンの娘よ!
魔法を学べば父様のように強くなれる!
リュカ様、魔法を教えて!
レリアに続いて
私も、魔法、知りたい!
俺も……兄ちゃんみたいになって大アナモグラなんてぶっ倒してやる!
3人は目を輝かせて懇願した。
お願いします!
確かに、もう時期この子達は魔法を学び始める時期だな……。ちょっと早いけど……
リュカは少し考えた後、
よし!では明日から、お前らにみっちり魔法を叩き込んでやる。
今日は明日に備えてもう寝なさい!
子供たちは飛び上がって喜んだ。
そしてレリアとガルフと別れを告げ、2人は家路に着いた。
ノアはこの村のドルイド (神官の様な立ち位置、村で1番の権力を持つ)であるリュカの娘である。
リュカは女手一つでノアを育てている。
これでガキ共の無謀な挑戦も暫くないな。
ノアも大人しくなるし、一石二鳥だわ……
リュカはそんなことを考えてニヤつきながら、2人でニコニコしながら家路に着いた。
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翌日、3人は村の農家が畑に水をやる時間よりも、兵士が起きる時間よりも早い時間に集合した。
まもなくリュカも朝の見回りを終えて合流し、訓練を開始した、
そもそも魔法とは、この地面を流れる静脈のエネルギーを使ってこの世の様々なものに変換する事よ。
龍脈の力はとても体に負担がかかるから、魔法も使いすぎると体を壊す。
決して使いすぎないように。
古くからエルフや神話に登場するダァナ族がこの力を使っていて、それが私たちに伝えられたのよ。
魔法には熱、水、風、土、光等の沢山の種類があって、今でも開発が……
……聞いてる?
子供たちは座学より実習を所望のようだ。
……じゃぁ今から魔法の基本、静脈エネルギーを体に送って手の方に集めるから。
しっかり見てなさいよ。これが出来なかったら、魔法もクソもねぇからな。
リュカは大人気なくイラつきながら手をくっつけて、水をすくうような形にした。
しばらくすると彼女の手は光り出した。
子供たちとて普段から大人たちの魔法を見ていた。
しかし今からこれが出来るようになるのだ。
3人は息を飲んで目を輝かせてそれを真似たようとした。
ーー30分経過ーー
うがああああっ!!出来ねぇええ
最初にぼろを出したのはガルフだった。
子供たちはいくら真似ても彼女がやった事を再現できなかった。
集中しなさい。地面の中の静脈の流れを感じ取って。
川から水をすくうような……あっ。
子供たちは川を知らない。
彼女は彼らが知らない言葉を使わないように心がける。
ごほんっ
と咳払いをして
村の水路の流れから少し水を救う感じで……
リュカはコツを一つ一つ丁寧に教えた。
ガルフうるさい。今いいとこだから……。
おぉ、レリアは筋が良いね。
そう静脈エネルギーを感じ取ったらそれを体内に送り込んで行く感じ。
お腹に力を込めてまずそこでエネルギーを練ってから腕を通して手に送る。
レリアはリュカの言葉通りになるように努めた。
レリアは血管、神経、骨、身体中に暖かいものが流れ込んで来るのを感じた。
次の瞬間、レリアの両手が光出した。
出来た……出来たぁああ!!やったやった!
これでお父様に認めてもらえるわ!!
レリアはピョンピョン飛び跳ねながら喜んだ。
今日の練習が終了した。結局初日で出来たのはレリアのみだった。
その次の日も、またその次の日も早朝からの訓練は始まった。
次第にガルフもコツをつかみ、静脈を操れる様になり、1年も経つ頃には2人は基礎的な魔法を使えるようになった。
ただ1人、ノアだけがいつまで経っても基本である静脈エネルギーを練る事も、増してや魔法を使用する事も出来なかった。
そして2人はノアをおいて次々に魔法を覚えて行った。




