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男女共学のバイビー67
弟を助けたい、その渇望だけが若頭の心を平静に保っている。
救援隊のメンバー全員に「自殺するな!」という厳命を下し、若頭はほふくしたまま深呼吸をする。
点在している外灯の明かりがぼんやりと見えるだけで、後は何も見えない閉塞感にいたたまれなく不安で、寂しさに発狂しそうになって来る。
発狂してしまえばそれは即死を意味する。
眼鏡は外しコンタクトレンズを嵌めて来てはいるのだが、この濃霧の中、レンズは全く役に立ってはおらず、逆に視界を妨げている。
いたたまれない不安に理屈抜きに込み上げる死にたい願望を、弟を助けなければならないという使命感だけが防いでいる。
ヒロは騒動を起こしては自分を困らせてばかりいる不肖の弟だ。
だが弟の為にまごまごしている自分の中に、確かな兄弟愛があるのを若頭は自覚している。
不肖の弟故可愛くて仕方ないのだ。
困っている弟を助けるのが自分に課せられた最大の使命ならば、ここで死ぬわけには絶対に行かないのだと、若頭は狂おしく念じる。
その思いを新たに若頭は、いたたまれない不安感と震えを外に出すべく息を静かに吐き出した。




