男女共学のバイビー68
寂しくて不安で震えが止まらないのよ、松田と雅は言った。
直ぐ横で断末魔の絶叫が上がり、松田は込み上げる自殺願望を振り払うべく激しくかぶりを振り、濃霧の中勇躍立ち上がり、上り坂を歩き始めた。
自殺者が相次ぐ中、敵も味方もなく、殺し合いは一切なされていない。
自分の自殺願望を制御するのに精一杯で、自殺する仲間を助ける事は出来ないと松田は判断し、ヒロを捜すべく立ち上がって歩き出したのだ。
歩いていると、まだ不安や孤独感が緩和されるのを感じつつ、松田はぼんやりと点在して見えるナトリウム灯を頼りに、濃霧立ち込める山道を手探りで上って行く。
その状況を松田は雅に電話連絡した。
「松田、あなたも自殺して果てたヒロになんかには会いたくはないでしょう。ならばヒロを何が何でも絶対に生きたまま確保して頂戴。それが出来るのは松田、兄たるお前だけなのよ、分かったわね?松田?!」
「押忍」
深くため息をつき、雅が続ける。
「その山道を真っ直ぐに行くと、欅というオートキャンプ場があるわ。そこを虱潰しに隈なく捜して頂戴、分かったわね、松田?!」
「押忍」
その時、再度濃霧の中悲痛なる断末魔の絶叫が上がり、それを雅が電話越しに聞き付け、固唾を飲む間を置いてから続ける。
「そしてもしそこでもヒロが見付からなかった場合、一旦引き返し、私の処に戻って来て頂戴。私も窓越しにその霧を見ていると、ヒロの事が心配でいたたまれないの、松田。寂しくて不安で震えが止まらないのよ、松田。だから私の処に引き返して来て頂戴。分かったわね、松田?」
松田は冷たい霧を取り込むように一度深呼吸してから答えた。
「押忍…」




