男女共学のバイビー42
自殺願望が擡げないようにインターバルを置いているのよと、加奈は言った。
ヒロが言う。
「客は本音と建て前を使い分けて表面だけ取り繕い、ホストに愛欲塗れの遊戯的擬似恋愛の華やかさだけを求めますよね。そして自分が本音である部分、情けない寂しいだけの男というのを見せると、華やかさとは真逆のそんな裏側事情見たくないから、皆愛想尽かして離れて行ってしまう。そして自分は擬似恋愛の華やかさからも突き放され見放され、益々寂しさは募るだけの悪循環が続くだけなのです。惚れさせて、こちらがピュアな部分で逆に惚れると、客はいつでも逃げて行く。求めれば求める程に逃げて行くのです。そんなやり取りの繰り返しに心は荒み病んでしまい、仕事とは言え、もう自分は心底疲れました」
加奈は同情しない姿勢を堅持して冷淡に言い切る。
「何を言われても私は一切同情しないわよ。君には人を自分の寂しさに巻き込んで、その寂しさを共有させて、死に追い込む権利は絶対に無いのよ。君の寂しさは私の寂しさでは無いのだから、私には関係無いのよ」
ヒロがやり切れないと言った感じで再び泣き笑いの表情を作り尋ねる。
「ならば何故加奈さんは出て行かないで、ここで自分と話しをしているのですか?」
考える間を置き加奈が答える。
「私は出て行くタイミングを見計らっているのよ。君は不条理で不可知なパズル的自殺増殖装置のスイッチをオンしてしまったのよ。それは不条理な時空間歪曲狂気促進装置でもあるから、その装置に殺されないように私はインターバルを置きながら、関連性の無いパズルを組み込んで、自殺願望が擡げるのを未然に防いでいるだけなのよ」




