平穏な生活の終焉
俺は意識を取り戻した。
確かトラックに轢かれて、、、なんだっけ?よく思い出せない。
そういえばかなり勢いよく頭を打ったから記憶が一部飛んでしまったんだろうか。
ん?じゃあ今の俺って死んでるからこれから天国か地獄に行くのかな?
自身の実体がないのでそうなんだろうと思う。
感覚で周りはぼんやり認識できるみたいだが、声を出したり匂いを嗅いだりはできない。
前進や後退はできるのだが、歩いているというよりかは漂っているという方が妥当であろう。
そう頭の中で理解し、進み始めようとしたのだが、どこに向かうべきなのか分からない。そもそも道がない。
どうしたものかと思案し、思い切って勘で進んでみることにした。
地面は酷く荒れており、もうちょっと整備して欲しいものだ。
そんな感じで漂うこと数分。遠くで何者かの会話が聞こえてきた。
俺は近づくことにした。声が目の前ぐらいに来たとき、突如何かに触れた。
実体がないのに触れたなんて変な話だが本当に触れたのだ。
と、同時にその物体に向かって吸い込まれ始める。俺は慌てたが、抗うこともできず、成す術もなかった。
そして、再び俺の意識が遠のく、、、
「起きやがれ!ボケェ!!」
俺は突如襲い掛かった激痛により目覚めた。
「うがああああああ、、、、、、くぅうううああ」
手足体は壁に固定されていた。
痛さのあまり、たまらず俯くと、血だらけの足が見えた。とても痛々しい。
というかなぜ足があるんだ?それに体も。さっきは声だって出ていた。突然の変化に理解が追いつかない。
顔を上げると、そこには防護服を着用した人間が3人いた。俺のことを冷酷な目で見ている。
そのうちの1人が俺に向かって叫ぶ。その右手には赤く染まったノコギリが握られていた。
「さっさと吐きやがれ!」
流石にゲロのことじゃないだろうが何を言ってるんだ?
「あの、、、なん、の、、ことで、すか?」
困惑した俺は、痛みに耐えながら質問した。だが相手側は聞く耳を持たない。
「しら切ってんじゃねぇ!さっさと例の極秘実験について知ってることを全て話せってんだ!」
と怒鳴り、持っていたノコギリで俺の足を両方とも切り落とした。血がぼたぼたと滴り落ちる。
「がああああああああああああああああぁぁぁぁぁ、、、」
痛みのあまり涙が溢れる。そしてその理不尽さに憤慨し、3人を睨みつける。
だが、相手側3人は困惑していた。信じられないようなものを見るような目で俺の切られた足を見ている。
そして俺も気付く。痛みが消えていた。恐る恐る足を見る。そして驚愕する。
なんと足が生えていたのだ。くっついたわけではなかった。その証拠に、地にはさっき切られた足がある。
「これが、、、例の無限再生?」「足が生えやがった?!」「、、、こんなの反則じゃん」
とまぁ、3人も驚愕の表情を浮かべている。
俺も何がどうなったのか分からず現実を受け入れきれない。
そもそも俺は死んだんじゃないのか?体だってさっきまでなかったじゃないか。
そこまできて俺は中学生の頃から好んで読んでいたジャンル、異世界系の小説のことを思い出す。
まさか異世界転生とか転移とかそういう系ってことか?もしそうならなんとなく説明はつく。
俺はトラックに跳ねられ死んで異世界に転生あるいは転移した。そしてその行き先がここだったわけだ。
恐らくだがこの体の持ち主が死んだタイミングで俺がここに宿ったのではなかろうか。
とするとこの再生能力は恐らく持ち主のスキルなのだろう。
そしてこの拷問野郎3人組がいう極秘実験ってのはこのスキルのことだろう。
ん?ということはこのスキルは実験によって植え付けられたスキルといったところか。
じゃあ持ち主は実験体にされていたとなる。だったら死因もなんとなくだが察することができる。
度重なる実験で本来、耐えられたはずの実験の反動がきて死んだとか、システムが不完全なものだったとかね。
脳が覚醒したかのように状況把握がスムーズに完了する。
まずはここから脱出する必要がある。そしてこの世界について、いろいろ知らなければならない。
もう俺の高校生活の平穏な暮らしは戻ってこないのだ。
終焉に導かれたのは人生だけではなかった。
前の世界での俺の平穏な生活も終焉を迎え、これから新たな冒険が始まる。
物語は始まったばかりだ、、、。




