その4
パリンと窓硝子の割れる音、
8人の追っ手は視線をそちらに向ける。
ローブ姿の女性が二階から飛び出してきた。
膝下までサラリと延びた薄い桃色の長髪、
薄氷の如く透き通る白い肌。
引き締まった筋肉は、なんとも健康的だ。
手に持つ紐で髪を1つにまとめながら、
ゆっくりと追っ手の前に歩みでる女性。
まとめられた髪は、日の光を受けて虹色に煌めく。
「良い加減にしとけよ!!テメェら!!」
ローブの女性が、
美しい顔と裏腹に、乱暴な声で8人の人造人間に啖呵をきる。
それを聞いた1人、赤肌の男が
「おいおい…報告と違うぜ」
とニヤついた視線で28号を値踏みする。
「確か…華奢な女か、老婆の姿だって聞いていたけど」
ボンテージ姿の女も驚いているようだ。
「…筋肉ヤバ」
尻尾のある少女は呆れ顔だ。
「…………」
静観する四つ目の青年。
「相当な生命エネルギーを吸収したんでしょうね」
長髪の男は睨みを効かせる。
「…問題ない、ここで28号を殺す」
執事風の男はいたって冷静だ。
「死にてぇ奴から!かかって来いよ!!!」
28号の怒声に合わせて老人が動く。
ビュンっ!と一足飛びに28号へと飛び掛かると
「さようなら、お嬢さん」
と笑う老人はパンっ!と手を叩き、すぐさま28号に両掌を向ける。
28号の周りの空間に魔力が注ぎ込まれると、
ぐぐぐっと空間に圧力が掛かる!
先ほど、冒険者達をボロ雑巾の様に絞りあげた様に、
空間ごと28号へ魔力を送り込む!!
異様な圧力の空間!!
そのテンションが一気に弾ける!!!!
ブシャ!っと飛び散ったのは老人の上半身!
血の雨の中、平然と立っている28号。
彼女は左手を固く握り込み、老人方に突き出している。
握った拳には魔力が、たゆたっており、
全身に浴びた老人の返り血が28号を赤く染める。
それも束の間、返り血は体にみるみる28号に溶け込んでいく。
「さあ、次は?」
鋭い眼光で、残りの7人を睨みつける28号!
四つ目の青年が四つん這いに身を屈める。
襟で隠れた口元が服を突き破りガバッと四方向に顎を開く。
その途端、開いた口から猛烈な勢いで糸を吐き出す。
それと同時に、長髪の男が天高く舞い上がる。
28号の体に巻き付く虫の糸!
その、同瞬!
天から解き放たれる光の槍!
「光魔法【龍の一角】」
ビカッ!と目が絡む一瞬の煌めき
地面突き刺さった魔法の槍、それは対象者の体を見事に貫いている…しかし!
「なに!?」と驚く長髪の男
貫かれているのは、4つ目の青年!
「24号…ハッ!!!!」
自らの頭上に影を感じ、見上げる23号
瞬間!!!
28号が振り下ろした踵が、男の頭蓋骨を粉砕した!
ドン!と叩き落とされる23号!
その頭部は完全に破壊されている。
「身を引いて…そのまま飛び上がったか…」
26号には見えた。
正面と頭上からの同時攻撃時の瞬間、
目標は24号の吐き出した糸に包まれながらも、
その健脚で、糸で繋がった24号もろとも後ろに飛び退き。
降り注ぐ魔法の槍を避け、引っ張られた24号が光魔法に巻き込まれた。また素晴らしい速さでジャンプした28号は、糸の束縛を破りつつ、空中の23号の顔面に蹴りを浴びせた。
華麗に降り立つ28号。
「殺しに来たんだろ?ほら、まだ生きてるよ?」
余裕の笑みを浮かべる。
「ち、調子に乗りやがって!頭に来る女だね!!!!」
22号の燃え上がった髪が天を突く!
「うっせぇ…ババァ!」
と、返す28号に
「ババァー!?…テメェは絶対ブッ殺す!!!」
22号は、燃える髪を機関銃の様に28号へ目掛けてぶっ放す。
それを、軽やかな身のこなしで、くるりとかわす28号。
着弾点からは次々と火柱があがる!
「オオオオオオオオラぁぁぁぁぁあ!!!!!」
掛け声と共に、駆け込んで来る20号、持った大斧を袈裟斬りに振り抜いた!
ガキン!!!と響く金属音。
完全に28号の肩口を、斧の刃が捕えた!
しかし、破壊されるのは…振り抜いた鋼鉄の斧!
「バカな!?…うぐ!!!!!!!!!!!!!」
心臓のあたりに食い込む28号の右ストレート!
20号は、そのまま後ろに吹っ飛ばされる。
飛んで来た20号を受け止めた巨体の21号!
しかし21号は、肩に乗せた22号もろともバランスを崩して
後方に30メートル程飛ばさる!
「遊び過ぎだ…暗黒魔法【地獄の稲妻】」
26号が右腕を空に向かって突き立てる。
ヌンッ!っと突然!
バリバリバリバリバリバリバリー!!!!!
地面から天に向かって、黒い稲妻が幾万の蛇の如くのたうちまわる!
空を覆い尽くさんばかりに広がる黒い稲妻。
冥界に響く悲鳴の様な不穏な雷鳴を響かせ、稲妻が消える。
電熱で焼けた大地に蒸気が上がる。
「これも耐えるか…」
落雷の中央、えぐられた大地に
「痛ッ〜、最初から全力?いいねアンタ」
涼しげな28号
「…戯言を」
「このアマーーーーーーー!!!!」
3人の人造人間が飛ばされた方向から
太い火柱があがる、あまりの熱量に空気が焦げ付く。
「よせ!」
26号の怒号が飛ぶ、その声に大気が大きく震える!
ピタリと動きを止める人造人間一行。
「ここは一旦引くぞ、28号に血を与える程こちらが不利だ」
26号の指示に従い、スッと後ろに下がる26号と尻尾の少女。
気が付くと、すでに26号が20号を肩に担いでいる。
内臓が、破壊されたのかゴボゴボっと血を吐く20号
「ごほっ!!戦ったら…すぐにババアになるんじゃねぇのかよ…ごほっ」
「奴には、異常な生命エネルギーが蓄えられている…行くぞ」
引き返す、追跡者達。
「逃すかよ!!!!」
猛烈なスピードで追いかける28号!
「ココ、俺ガ止メル、22号…生キ延ビル」
逃げる22号の目に一瞬映ったのは、
黒い小さな球体に体を潰された21号の姿だった。
「あのバカ…」
22号は小さくつぶやいた。
嵐が去った、静かな郷の中。
「………一応、追いかけてやるか」
オグナも窓から飛び出した。




