その2
薄ぼんやりと視界が開ける。
「う……」
体を包む暖かな毛布、視界を染めるオレンジ色の淡い光源、
鼻に香りるほのかな木材の匂い。
頭は、綿だろうか…柔らかな枕の上にある。
回らぬ思考のまま、辺りを見回す。
「お!ばぁちゃん、気付いたか?」
近寄ってくるのは、人間の青年。
「ほら…水だよ」
青年はコップを口に運んでくれる。
「コレ、さっきの残り食べれるかい?」
何かの果実が、口に入る
(…違う…コレじゃない……さっきはもっと美味いかった…)
「もう少し寝てな ばぁちゃん…明日、朝一で医者が来てくれるって」
(何だろう…良い匂い…)
食欲をそそる匂いの方へ、ふっと手が伸びる。
「いてぇ!!!!傷口、触んなよ ばぁちゃん!」
手のひらに着く暖かな液体。
「この傷なら大丈夫!明日には綺麗さっぱり塞がってるから、ホラもう寝な」
優しく膝の辺りをポンポンとされる。
その感触に気持ちが落ち着く
部屋の明かりが少し暗くなった。
瞳を閉じれば、また意識が遠いていく。
先程伸ばした手はまだ生暖かい、
無意識でそれを口に運んだ。
(あぁ…これだ…この味だ…体が…生き返る)
〜次の日〜
窓に射し込む朝日で目が覚めるオグナ。
大きなあくびを一つしながら、ボサボサの寝癖頭をかく。
そのまま、腕と背中を んーと伸ばし、1日を初めて行く。
「痛っ!…あれ?」
痛みが走り、ストレッチで伸ばした腕に目をやる。
昨晩の負傷した腕の傷口から出血みられる。
傷は小さくなっている様だが、いつもより断然に治りが遅い。
「たく!遅延魔法か…面倒くさいなぁ。」
オグナの傷は、治りが早い。
それはオグナの才能によるのもだ。
【超加速再生】コレがオグナのスキル
このスキルは、生まれ変わりの際に手に入れ能力だ。
欠損以外の傷は立ち所に治ってしまう。
指の骨折程度なら10秒もかからず完治する。
そんな腕に血が滲む、
昨晩の戦闘で様々な攻撃をしてきた人造人間達の中に、与えた傷の治りを遅くする魔法かスキルを持った者が居たのだろう。
『遅延魔法と出血を伴う攻撃』
暗殺者や狩人が好む戦術の組み合わせで、
魔法やポーションで回復を行なっても、傷はゆっくりとしか治らず、出血によるダメージで敵を追い込む手法だ。
「ま…飯食う頃には塞がんだろ」
朝の支度を整え、老婆を寝かした寝台に向かう。
「ばぁちゃん!生きてるか!もうすぐ郷医者が……」
寝台を見て戸惑うオグナ。
「…え?だれ????」
そこに寝ていたのは、老婆では無く若い女性だ。
オグナの気配に気付いたのか、女性が目覚める。
目をこすりながら女性が体を起こす。
オグナの腕に、すっと人差し指を一本伸ばし、
つーッと垂れた血液を指に取ると、パクり!と口へ運び
「うま…」と、もう一眠りを決め込んだ。
(((あれー?お婆ちゃんは…あれー?)))
しかし、何となく推理は出来ている。
①昨日、裸姿で海岸に倒れていた老婆を助けた!
②助けたら、変な奴等に襲われた!
③老婆を宿屋のベッドに運んだ!
④今、ベッドに寝ているのは助けた老婆じゃなくて若い女性!
⑤でもってその女性は、助けた老婆に着せてあげたオグナ服を着ている。
⑥しかも手足には、老婆が付けられたいた物と同じ、ちぎれた鎖付きの枷。
答えは1つ!
(((若くなってるーーーーーーー!!!!!)))
コンコン!!とノックの音
「怪我人がいるのは、こちらかなあ?」
ドア越しに、医者と思われる男の声がする。
(((ヤバーーーーーーーーーーーーーーーーい)))
何がヤバいか!そんなの簡単!
ベッドにいるのは、裸同然の姿で眠っている手足に鎖を巻き付けられた若い女性!一緒いるのはマッチョな男!
変な勘違いが起こるコトは明白である!
「少々ー!!!お待ちをーーーーー!」
焦るオグナ!人生で一二を争うパニックが襲う!
今すぐ女性を隠すコトも出来なければ、服を着せてあげるコトも出来ない!どうする、どうするの4文字だけが頭の中を激しく埋めていく!
ふと、手足の鎖に目が止まる!!
「コレだーーーーーーー!!」
裸の女性がいるよりも、鎖を付けられた女性がマズい!
急いで、この枷と鎖を外さなければ!!!
なおも、コンコンと震えるノックの打音が、
焦りを加速させる。
鍵は無い!しかし、それなら壊せばよい!!
寝ている女性の足首の枷部分を両手で握る!!
あとは、力いっぱい ちぎるのみ!!
「硬ッ!!」
しかし、魔法が施してあるのか、枷が簡単に外せない!
焦るオグナ!ここはもうやるしかない!!
オグナの服が、パンと弾け飛び!筋肉が膨張する!
隆起した筋肉、盛り上がる力こぶ!!!
丘を思わせる発達した胸板!!
大砲の砲身よりも太い首筋!!
ロッククライミングが出来るほどにそびえ立つ、広い背中!!
深い渓谷を思わせる腹筋の割れ目!!
太ももは大地を締め上げる世界樹の根の様だ!
この世の筋肉!
それらを一点に集約した様な猛き姿!
沸騰した血液に!筋肉が喜び勇む!
これぞ!シドウの者の証【益荒雄】の姿!!
指先に少し力をこめると、
硬い鋼鉄の枷がグミの様にグニャと曲がる!!!
足の枷をパパっと外し残りの手首に取り掛かる!!
手足の異変に気付いて女性が目を開ける!
すると目に飛び込んで来る巨大な筋肉フェスティバル!
上半裸で焦り顔の男の姿!!!
「ギゃぁぁああああああああ!!!!!」
バチーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!
…
…
…
「本当に診察は、このお婆さんだけでいいのかい?」
「ひゃい、らいびょうるれふ(はい、大丈夫です)」
「………君、すごい顔だよ」
「らいびょるれふ(大丈夫です)」
ぱんぱん腫れ上がったオグナの左頬、その顔には赤々と手のひらの形が浮き出ている!
「体は健康だよ、少し栄養失調気味だけど…まぁこの年齢で旅は辛かろうよ…しかし、昨日は大怪我だと聞いていたけど、それは君の方だったのかな?まぁ…少しこの郷で休んでから、また出発するといい。じゃあお婆ちゃんを大切にしてあげなさい…」
「ひゃい、らりがとうごじゃいました。(はい、ありがとうございました。)」
オグナは頭を下げると、医者が出て行くのを見送る
「ぶははははは!」
オグナの顔を指差して笑う老婆
「うるへーーーーばばあ!!!」
怒りのオグナ
全魔力のこもったビンタを受けてオグナの顔は変形している。オグナでなければ生きてはいない超威力だ。
オグナの回復能力も追いついていない程のダメージ。
ビンタでエネルギーを使い果たしたのか
女性は、老婆に戻ってしまっている。
「みゃあ、せちゅめいしてもらおうか(じゃあ、説明してもらおうか)」
オグナの問いに沈黙で返す老婆は、枷のついていた手首を撫でる。
「ん!はりゃ空いてんだろ(ん!腹空いてんだろ)」
おもむろにオグナが、傷付いた腕を老婆に差し出す。
オグナの顔を見上げる老婆。
「話しは、ひょれからだ(話しは、それかだ)」
「…えっと」
「はやく!傷が塞がっちまう」
更に顔に腕を近づけるオグナ
溢れる涎を我慢し老婆が、ごくりと唾を飲み込む。
パクり!と腕の傷口に直接 口を付ける老婆!
弾けるうま味!口に広がる濃厚な血液!
今までに得たどの生命エネルギーよりも美味しい!
喉越しは爽やか!なのにコクをしっかり感じる。
鼻に抜ける、血液のうっとりする様な芳醇な香り、
これがまた味に楽しさをトッピングしてくれている!
口に含んだ瞬間から体中の細胞が喜んでいるのがわかる。
舌先から食道まで味の変化を感じる。
何故、自分の口と食道はこれだけの距離しか無いか!
ひと口ひと口の味の冒険をもっと長く楽しみたい!
飲めば飲むほど新しい味を舌の細胞達が発見する!
ジューシーで、極上な生命力エナジーのドリンク!
いや生命力エナジーのスープ!
「はぁ〜幸せ♪」
女性はすっかり若さを取り戻した。
オグナの体は、世界一美味しいのだった。
_______________オグナについて_______________
今振り返る!転生時にオグナが神様に頼んだ事!!
「老いる事の無い美しい肉体を!
今世で得た魔力をも超える無限の力を!
そして!2度と神々に邪魔される事の無い、
素晴らしい人生を!」
■「老いる事の無い」の部分
長寿のバーサーカー族が転生先に選ばれる。
それに追加して【超加速再生】の才能が、
与えられた。
この組み合わせによりオグナは老化で死ぬ事が無い
※古い細胞も再生され続ける為
■「美しい肉体」の部分
美の女神・タンレの嫉妬で
『美味しい肉質』に解約が書き換えられている
※実際、筋肉美は素晴らしいが…味についてオグナ本人が知る由も無い!
■「前世を超える無限の力」の部分
オグナの肉体に宿る魔力量は前世のエウロンを遥かに超えて与えられており、その魔力は神にも手が届く程だ。
しかしバーサーカーに転生してしまった為、
魔法は一切扱え無い体となっている。
しかし、これを補う様に成長し続けるバーサーカーの筋肉が無限の『力』として与えられた。
※やったね!これぞ脳筋!パワー・オブ・ジャスティス!!
■「神々に邪魔される事の無い」の部分
人々の信仰心が軽薄になり、人類が神の手から離れた1400年後が選ばれた。
※神の力は人の信仰心に左右されるため、信仰が薄れるにつれ現世への干渉が出来なくなる
□エウロンの時から引き継いだモノ
記憶と知識、そして【絶対的魅力】の能力!
※【絶対的魅力】は、見る側の美的感覚に由来するため、目を待たない生物や感情の無いゴーレムなどには無効の能力であり、変態的にムッキムキな、今のオグナには全く持って無意味な能力だ!
なお、一部の層には爆裂に効果を発揮するとか。
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