だめだ
「だめだこの人。」
それがミリちゃんの母親の第一印象だった。
俺は、姉貴の食堂でちょいと飲んでたら思わず寝ちまってた。半年前、中央から新しい神父のやつが派遣されてきたんだが、そいつが持ってきた何って言ったか・・・、レイ・・・レイ・・・レイ・・コ?まあなんだ、名前は忘れちまったが、鉄だか銅だかでできたの箱を、姉貴のことろに置いていきやがった。神父のやつが言うには『中に入れたものを冷やせる』とかなんとか言ってたっけか。うさんくせーと思ったもんだったが、そいつが殊のほかよくできた代物でな。エール酒をそいつで冷やすとな、めちゃくちゃうめーんだよ。で、思わず飲みすぎちまったって訳さ。どうせ猪を狩りに行った連中は遅いだろうし、俺の仕事はそいつらが帰ってきてからだしな。夜に飲めん分、昼から飲んでも問題ないさね。
酔い潰れてた俺は、娘のミリに起こされたらしい。ぼーっと周りを見ると、ミリが俺を揺すっている。姉貴や親父に起こされるのはかなわんが、かわいい娘の声で起こされるのはやはりいい。娘の「おかーさん、起きてー。」は最高だ。ぜってー娘は嫁にやらん。毎日、起こしてもらうんだ。娘は俺の嫁・・・・・・。
「娘は俺の嫁ぇーー。」
俺は傍にいるミリを抱きしめ、思わず頬ずりして叫んじまった。げ・・・、姉貴がニコニコしてやがる。やべぇ、あの笑い方はやべぇやつだ。相当怒ってる。とりあえず、そっぽ向いて知らん顔しとくか。いや、一瞬視線が合った気がする。取り繕うと余計に悪化する、これは過去からの経験則だ。とにかく今の俺にできることは、姉貴のお仕置きまでの間、目一杯娘を愛でることだけだ。
「娘は俺の嫁ぇーー。」
ええ、ドン引きですよドン引き。ぼーっと見てたかと思ったら、ミリちゃんを抱きしめ頬ずりを始め、遂には「俺の嫁」発言ですよ。嫁って、ミリちゃんはあんたの娘でしょうが。いけない薬でもやってんのか。酔っ払いの行動はよくわからない。ちなみに隣にいるおば・・・いや、お姉さんの笑顔がめっちゃ怖い。ニコニコしてるんだけどめっちゃ怖い。あ・・・こっち見たのに、あわててそっぽ向いてる。なんか隣のお姉さんから、ピキって効果音が聞こえてきそうなんですけど。正気になってるなら取り繕うなりすればいいのに、そっぽ向いて知らん顔するから余計にひどいことになりそう。ほら、隣からぶつぶつと「お仕置き」やら「縄で」やら「鞭を」不穏な言葉が漏れ聞こえてますよ。あーあー、なにもきこえない。きこえませんよー。僕は今から貝になります。
「はぁ・・・、何を言ってるいるのでしょうか、この駄妹は。」
私は、あほな振る舞いをする妹をみて思わずため息をついてしまいましたわ。妹が、娘を溺愛してるのは知ってし、愛する旦那が、1年に亘る中央勤めにでてから半年が経ち寂しいのもわかってるわ。でも、娘を嫁と叫ぶのはどうなでしょうか。旦那の嫁はあなたでしょう・・・。隣にいらっしゃるシアンさんも引いていらっしゃるわ。せっかくフォローをしましたのに・・・。もう、これはお仕置きが必要でしょう。どう仕置きしましょうか。まずは正座は必須ですわよね。あと逃げ出せないように縄で縛って・・・あと鞭も・・・うふふ、楽しくなりそうですわね・・・。って、いけないいけない。思わずいけない笑みがでてしまいましたわ。




