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第30話 メルーサ、復讐の時

 以前の戦闘でマリエルを失ったダルク隊。そして、その傘下の戦闘部隊は悲しみに暮れていた。


「マリエル・フォルテシア大尉……、貴方の仇は必ず私が……」


 拳を力強く握ったメルーサ。その傍には、タニアの姿があった。


「メルーサ、私たちの力を見せてやりましょう。今度こそ……。ねぇ、皆」


 周囲にいた傘下の戦闘部隊の兵士達は再び立ち上がった。

 マリエルの仇を討つために────


「さぁ、今度こそSERTを殲滅させないと、私たちのメンツが泣くわ」

「そうですよね。私たちもいつまでも燻っているわけにもいきませんし」


 傘下部隊の隊長、アイネは彼女たちの顔を見てゆっくりと頷いた。


「行きましょう。全てはあの人のために……!」


 こうして、再びダルク隊は木星政府軍基地の方へと接近することとなった。



 それから数時間後、ラディエス達はまた来るであろう敵勢に対し、万全な態勢で護衛任務を続行していた。次にいかなる手段でミュートロン軍が来るかを想定し、シミュレーションも行っていたのだ。

 木星政府軍基地上空にて、見張りを行っていたプロメテウス隊。

 彼らは油断できない状態にあった。


「ラディー、とりあえず防衛網は完璧に近い状態だけど……」

「でも、その中の脆弱性を突かれたらそこで終わりだからな。油断できないな」


 ラディエスはレーダーを確かめながら、操縦桿を握り締め、動かしていく。


「ヒュペリオン隊から連絡が来たみたいだ。どれどれ……、おいマジかよ!? ミュートロン軍の艦隊が、またこっちに向かってるみたいだぞ!」

“嘘でしょ!?”


 少し焦りながらも、直後に戦闘システムを素早く操作するパティ。


“おい隊長さん、既にマーティー大佐は動いてるみたいだぜ。加勢するか?”

「その方が良さそうだな。行こう、二人共!」

“了解!”


 かくして、防衛網空域圏内に入ったミュートロン軍を殲滅すべく、ラディエス達は戦闘態勢に入り、各部隊は陣形を組んで動き出す。



 一方でヒュペリオン隊は既に傘下部隊と戦っており、メルーサ率いるダルク隊は木星政府軍防衛網へと突入しようとしていた。


「まずいことになったな……。早いところ仕留めないとな。行こう!」

“了解!”


 シュウはコントロールパネルで照準システムを調整し、その上でロングレンジブラスターを構えて、狙撃しようと試みる。


「喰らえっ!」


 流星のような一筋の光線はその刹那、二機のシグネスをまとめて撃ち抜いた。


“隊長、まだ来ます! ここは私が……”

「頼むぞ、エルダ!」


 エルダはすぐさまブラスターで光線を撃ち、敵機を一機撃墜することに成功する。


“へへっ、俺だって!”


 この勢いに乗り、ケビンは即座に少し近付き、ビームライフルを掃射して敵勢の機体を撃墜していった。


「何ィッ!?」


 敵の駆るシグネスはあっという間に撃墜されていく。


「エルダ、ケビン、急いでプロメテウス隊とと合流するぞ!」

“了解!”


 こうして、ヒュペリオン隊はプロメテウス隊の方へと合流することになった。



 一方、クレイオス隊は敵艦隊を相手に臆することなく攻撃を仕掛けていた。

 特にマーティーは、勇猛果敢に敵勢を相手にしているにも関わらず、余裕を見せる。


「ドニー、そっちはどうだ?」

“こちらは大丈夫です。現段階では輸送艦を一隻沈めたところですが、戦艦クラスとなると、流石に火力面では我々が不利ですが”

「そうか。そうだよな……。だが怯むなよ! 怯んだら俺たちが死ぬことになる!」


 マーティーは眉をひそめ、目を鋭くしていた。その表情を見て、ドニーは自分も負けてはいられないと思い、ソードを取り出し、ビームシールドを展開した。


「俺だって、隊長みたいに戦ってみせる! お前達、行くぞ!」

”了解!”


 ビームライフルを使い掃射するドニーとその部下達。

 攻撃の手を緩める事無く、機銃を撃ち続けながら前進する。


「敵艦隊の侵攻を食い止めろ! アルフ、ジョージ、攻撃の手を止めるなよ!」

“分かっています! ウオオォッ!”


 放たれた光線がスキッドスピアに直撃し、見事一隻撃沈させることに成功させた。

 その中でマーティーから通信が入る。


“陣形変更だ! 扇状陣形で敵艦隊を撃墜するぞ”

「了解!」


 こうして、マーティーは敵艦隊に対しているにも関わらず、優位に立てるほどの余裕を見せていた。



 一方、オルフェウス隊はプロメテウス隊と合流して、敵機動部隊が横陣形で一斉掃射を行う中で四人は突撃態勢に入り、アンディ達がジュノーを匿う形の円陣形で戦闘に挑む。


“ジュノー大尉、ここぞという時に接近戦をするというわけで?”

「勿論だ。お前達も素早くソードで攻撃を仕掛けるんだ」


 それを聞いたアンディは、好戦的にもモニターに映るシグネスやマグナイドの影を見てニヤリと笑う。


「さぁ、どこからでも来い!」


 即座に敵の駆るマグナイドに照準を合わせて、機銃で光線を撃つアンディ。


「何ィッ!? ウワアッ!」


 その機体は爆発四散し、黒い鉄屑と化す。

ジュノーは様子を見て攻撃の契機を伺う。


「さてと、ここは一発ぶちかましてやるか!」


 ここでバーストナックルを展開し、マグナイドを相手に殴り掛かるジュノー。

 バーストブレイダーの光り輝く拳が力強く唸る。


「喰らえェッ! でやァァッ!」

「くっ、防御システムが破損したか!」


 素早く拳を打ち込んだことで、マグナイドの装甲は破壊され、さらにジュノーは目を鋭く細めて、バーストキャノンで零距離射撃を行う。


「こいつを喰らえッ!」

「しまったァッ!! グハァッ!」


 バーストブレイダーの放った光線がマグナイドのコックピットを貫き、機体は爆発し、粉砕された。


「よし、上手くいったか。カール、ブルーノ、お前達はどうだ?」

“はい、現在シグネス四機を撃墜済みです”

「そうか。よくやった! 早いところプロメテウス隊に合流しないとな。行くぞ!」


 力強い威勢のある声で指示を出し、機体を操縦するジュノー達。

 だが、プロメテウス隊はジュノー達の想定よりも遥かに凄まじい闘いを繰り広げていた。



 ゼナードとパティは、ラディエスの後方からビームライフルを使って援護射撃を行っていた。


「ゼナード、パティ、油断するなよ! そうしたら命取りになるからな!」


 ラディエスは通信でやり取りをしつつ、両腕のメガ・ビームソードを使いアイネの駆るマグナイドを相手に攻撃の契機を探る。


「メルーサ中尉のために……、そして、死んでいったマリエル大尉のために私は戦う!」


 ダルク隊の傘下部隊の隊長、アイネ・トラウスはビームソードで素早く斬りかかって攻撃をするが、ラディエスは上手く間合いを取ってそれを回避する。


「負けてたまるかよ! このッ!」


 ラディエスの振りかざした大きな刃がアイネの機体に直撃するも、彼女はビームシールドを展開してそれを何とか防御してみせた。

 ここでアイネは、マグナイドのビームシールドの出力量をフルにして、防御に徹することになる。


「このまま持久戦に持ち込めば、ロードブレイダーMk-IIIも限界を迎えるはず……」


 彼女が隙を見せた瞬間、パティの放った光線がアイネの駆る機体に被弾する。


「くっ!! コントロールシステムが一部破損してるわ……。どうすれば……」


 そこでラディエスは、機体両腕部のビームソードを使って素早く連続で切りかかり、見事撃墜に成功する。


「そんなァッ! キャアァァッ!」


 アイネの機体は爆発四散し、砕けた鉄塊は漆黒の宙を漂うことになった。


「これでもう八機は撃墜したか……。パティ、助かったぜ!」

“礼には及ばないわ。このまま早いところあのスパルタロスを撃墜しないと……”

「それもそうだな。行くぞ二人共!」

“了解!”


 

 即座にメルーサとタニアのいる方へと向かう三人。

 そこへとオルフェウス隊が合流し、戦力はより確固たるものとなる。

 凄まじい火力で押し切ろうと試みていた。


「ラディー、ここは私に任せてくれるかしら?」

“いいぜ、パティ。頼むぞ”


 パティはすぐさまビームライフルを速射し、敵勢の駆るシグネスを撃墜していく。

 無数の光線が飛び交う中、彼女はその猛攻を蝶のように潜り抜け、隙を突いて即座に光線を一発放った。


「そんなッ!?」


 敵機を一機撃墜し、その流れに乗ろうとゼナードも負けじと動く。


「俺だってやってやらぁ! これでも喰らえッ!」


 即座にビームライフルで光線を撃ち、そこから間髪を入れる事無くソードで敵機を一閃。

機体は火花を上げながら爆発した。


“ラディエス大尉、敵本隊が急接近しています! お気をつけて!”

「分かった、アリカ! よし、行くぞ皆!」

“了解!”


 ラディエス達三人は、ダルク隊の方へさらに近付くため、機体全体のスラスターを吹かせる。


「いよいよ来たみたいね。行きましょう」

“そうね、メルーサ”


 メルーサとタニアは、ビームランスを展開して接近戦に備える。

 彼女達の目は闘志に満ち溢れ、マリエルの仇と言わんばかりの面持ちであった。

 こうして、マリエルの弔い合戦が本格的に始まる。


「隊長の仇ィッ!」


 タニアは勇猛果敢にもランスを素早く突いて、パティの機体に攻撃を仕掛けていく。


「流石にこのスピードの突きを躱し続けるのは難しいわ……。でも、やらなくちゃ!」

「」

「ふん、生意気ね! このランスで風穴を空けてやるわ!」


 ここでパティの隙を突いて、タニアは槍撃で機体右肩部を破壊する。


「キャァァッ! よくもやってくれたわね! これでも喰らいなさい!」


 それでもパティは怯むことなく、ビームソードで素早く何度も斬りかかり、タニアに肉薄する。


「早い!? この私より……?」


 さらにパティは己のソードでタニアの駆るスパルタロスの右腕を切断し、隙を見出す。


「そんな!? 私はこれくらいでは……、ぬゥッ!!」


 咄嗟に左腕のビームシールドで攻撃を防ぐも、彼女は既に限界を感じていた。

この機体で戦うことに────


「これで決めるわ! てやァッ!」


 パティは素早くタニアの機体を袈裟斬りにして、撃墜に成功した。


「イヤァァッ!!」


 彼女は金切り声で叫び、機体の爆発に巻き込まれ、命を散らした。


「タニア・サンディス、聞こえるかしら? いや、熱源反応が消えている……。そんな……!」


 ここでメルーサは全てを察し、すぐさま怒りの矛先をパティに向けた。


「よくもやってくれたわね……。こうなったからには、あの機体を破壊するしかないわ!」


 とうとう素早くビームランスを構えてパティに戦いを挑もうとするメルーサ。

 彼女はいつになく感情的になって、攻撃を仕掛けていく。


「あれが隊長気ね! やってやるわ!」

“待て! パティ、その機体の損傷ではお前が逆にやられる! よせ!”

「ラディー。気を遣ってくれてありがとう。ここは任せたわ!」

“オーケー、やってやるさ”


 そして、ラディエスは両腕のメガ・ビームソードを展開して戦いに挑む。

 彼のその瞳は、己の情熱に駆られ絢爛としていた。


「どこからでもかかってこい! 俺は構わない!」

「やる気ね……。でも避けられるかしら?」


 この瞬間に、二人は互いに一切の油断をしないように剣を構えた。


「これを喰らえェッ!」

「させるものですか! たァッ!」


 互いの刃は激しくぶつかり合い、火花を散らす。

 鋼鉄の機体越しに、互いに今の戦いへの燃えるような情熱が伝わってくる。

 それはまるで自らの体を焦がすほどであった。


「この一撃で決めてみせるわ!」


 メルーサはすぐさまビームランスで素早い突きを繰り出し、ラディエスを上手く翻弄する。

 この素早い動きに、彼ですらもついていけるか不安になる。


「敵は凄まじく強い。でも俺は負ける訳にはいかない……。ならやるしかねぇ!」


 ラディエスは意気揚々とメガ・ビームソードを振りかざし、メルーサの駆るスパルタロスに斬撃を繰り出すが、紙一重でメルーサはそれを回避し、左腕に機銃を持って光線を放つ。


「私は負けないわ…。マリエル・フォルテシア大尉だけでなく、散っていった仲間のためにも!」

「こいつから並々ならぬ闘志を感じる……。俺にだって意地ってもんはあるんだ! ここで負けたらジミー隊長に合わせる顔がない! このォッ!」


 メルーサの撃った光線が、ロードブレイダーMk-IIIの左腕に命中し、使い物にならなくなる。

 互いに絶対に負けられない戦いを繰り広げていく。


「このォッ! やらせてたまるかよ!」


 ラディエスは右腕の光剣でメルーサの機体左腕部を斬り落とす。


「喰らえェッ!」


 そこからさらに彼は、スパルタロスの胸部を光剣で一閃。

 ついに流石のメルーサも息絶えた。


「マリエル・フォルテシア大尉、今すぐあなたの所へ行きます……」


 彼女は最後までマリエルに対しての敬愛を忘れてはいなかった。その後、ダルク隊はゼナードやパティのみならず、他のアストライオス艦隊の面々の活躍により全滅し、戦いは無事終わった。

 それから数時間後、アストライオス艦隊の木星政府軍防衛任務は終了。

 任務を終えたラディエス達は重荷から解放され、休憩を取っていた。

 しかしその憩いの時がいつ再び終わるかは分からない。

 漆黒の宇宙で、銀色に輝くアストライオス艦が着実にセカンド・アースへと駒を進めるのだった。

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