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第29話 怒涛の剣戟

 ラディエス達はBC-2を離れ、木星政府軍本部へと向かうことになった。

 その理由は、木星政府軍の司令官から防衛依頼が来ていたからである。

 忙しない日々に、疲弊し始めるアストライオス艦隊のクルー。

 資源補給は問題ないものの、クルーたちのストレス解消の方も、辛うじて行き届いていた程度であった。

 現在プロメテウス隊は、ヒュペリオン隊やオルフェウス隊と共に護衛任務を行っていた。


「それにしても最近は木星の護衛任務が来てからというものの……、手が離せない状態になるとはな」

“アリカがいるCICの方はもっと大変よ。補助AIシステムがあるとはいえ、地球で言えば24時間ずっとフル稼働状態なんだから”


 パティの言葉に一旦黙るラディエス。

 彼は一旦手元のボトルの水を一口飲んだ。


“とりあえず、私達は防衛網の中でも中核のAエリアを見張ってなくちゃ”

「そうだな。ゼナード、とりあえずシュウたちには偵察に出てもらってるが、そっちの方に連絡を頼むぜ」


“了解! 隊長さん”


 ゼナードはコントロールパネルを打ち、シュウに連絡を取った。


「シュウ、そっちはどうだ?」

“ゼナード、Fエリアは大丈夫だよ。少なくとも遠方からも敵部隊が来る気配はないね”


 シュウはモニターシステムやレーダーを再度確認する。


「そうか、分かった。お互い疲れるとは思うが、よろしく頼む」

“分かったよ”


 その後、シュウとの通信を切ったゼナード。彼は木星政府軍本部の目印ともなるジュピトリア・タワー上空を飛んでいた。


「こちらゼナード、シュウ達のいるFエリアは問題なしとのことだ。オルフェウス隊には連絡したか?」

“オルフェウス隊から、先程連絡があったな。ジュノー曰くCエリアは問題は無いとのことだ”

「確か任務遂行時間はまだ地球時間だと……」


 ゼナードは小型端末で時間を確認した。


“丸一日だ”

「まだそんなあるのかよォ? まぁ、でもやるしかねェな」


 不満を漏らしながらも、彼らはその後も護衛任務を続けることになる。

 気の遠くなるような長い時間────

 それでも平和のためと思い、空域を飛び続けた。



 一方、ミュートロン軍の天王星付近にある補給基地では、マリエル率いるダルク隊が木星での作戦に向けて準備を整えていた。

 木星政府軍の本部を叩くという大博打に出たのだ。

以前から戦績が頭打ちになりつつあったため、彼女たちはついに動き出す。


「メルーサ、ついにこの時が来たわ」

「そうですね。木星政府軍本部を壊滅させ、そこも私たちミュートロンの植民地にするという計画ですね」


 ニヤリと笑みを浮かべるメルーサ。

 彼女は小型端末から遠隔操作してマップを表示する。


「ここが木星政府軍本部の立体地図となっています。マリエル大尉、説明を」

「分かったわ。任せて頂戴」


 マリエルが端末を操作したことで、攻撃対象に該当する箇所が赤い点となって表示される。


「攻撃対象は主にこの三点ね。防衛拠点である以上、基地のメガ・リニアブラスター二基は少なくとも潰さないといけないわ、そして三点目のキャノンベースは、このスパルタロスの追加武装、ストームブラスターで潰すことになっているわ。これに関しては、先述の二点を潰したのちに、最終的に私が破壊するつもりよ。」

「はい、分かりました。とはいうものの、敵戦闘部隊の中には当然、木星政府軍のSERTも含まれていることは確実でしょう。迂闊に攻撃をするのは……」


 深刻そうな面持ちのメルーサ。彼女は以前の戦闘でプロメテウス隊に危うく倒されかけたこともあり、攻撃することに対して非常に慎重になっていた。


「メルーサの言葉にも一理あるわ。今回は、今まで以上になるべく守りを固めることを意識しないといけないわ。彼女の件の事はタニアも知っているわね」

「ええ。今度こそ失敗は許されないですからね」


 タニアはゆっくりと頷く。

 彼女たちは作戦内容の記録された小型端末を再三確認する。


「マリエル大尉、次こそは……」

「ええ、私たちミュートロン軍の名のもとにね。ひとまず作戦会議は終了という事でいいわね。では準備をしっかりやっておくように」

『了解!』


 こうして、ダルク隊とその傘下の部隊は早急に戦闘準備を行うことにした。



 それから数時間後、木星政府軍区域にてクレイオス隊とオルフェウス隊は、防衛網圏内に敵部隊がいないかレーダーを確認しながら機体を操縦していた。

 その中でマーティーとジュノーは、久しぶりに行動を共にすることから、少しながらあの頃を思い出していた。


「ジュノー、こうしてお互いに自分たちの部下を引き連れて共に行動するのは、感慨深いな」

“フッ、粋なこと言うじゃないか。マーティー。でも、俺はお前に水をあけられちまったな。こんな事になるなんて”


 ジュノーは澄ました顔で、モニター越しに映る戦友の顔を見る。

 ここまでの差が出来るなんて、あの時思ってもいなかった。

 そういった思いを巡らせながら、彼は操縦桿を握りしめて機体の操縦を続ける。


「ん? シュウから緊急連絡が届いたぞ!」


 マーティーはすぐさまシュウと通信を行う。


“今分かりましたが、現在ミュートロン軍の艦隊がこちらへと向かっているようです。早い所この事はプロメテウス隊やオルフェウス隊の方々にもお伝えください”

「分かった。至急伝える」


 こうして、プロメテウス隊などの部隊は攻撃態勢を整え、ミュートロン軍への攻撃を行うべく、戦闘態勢を整えることとなった。


「アクティブウインガー、自動援護プログラム起動! 頼むぞ」

“了解”


 アクティブウインガーは、ストライクタイプのウェポンパックがドッキングした状態で攻撃態勢に入る。


“ラディー! 敵部隊を捕捉したわ! 前衛部隊の方に攻撃を行うわ”


 即座に射撃系統システムを再調整するパティ。

 彼女は目をしっかり見開いて、レーダーを確認する。


「分かった、ゼナードも頼むぞ!」

“任せてくれ、隊長さん!”


 ゼナードは頷き、操縦桿を動かす。

 早速機銃を構え、戦闘態勢に入る三人。彼らを支援する形でヒュペリオン隊も守りに就く。


「エルダ、ケビン、くれぐれも足を引っ張らないようにしよう」

“分かっていますわ。シュウ中尉”


 余裕の笑みを浮かべるエルダ。

 彼女には、プロメテウス隊を支えられるだろうという一定の自信があった。


“何としても奴らから木星政府軍を守ろう”


 ヒュペリオン隊の三人は、ロングレンジブラスターを構えて敵部隊に向けて砲撃を開始した。

 その攻撃により、数機のシグネスが撃墜され、早くもミュートロン軍が劣勢になるのではと慎重な戦い方を強いられる。


「マリエル大尉の顔に、これ以上泥は塗らせない!」


 傘下部隊の兵士の駆るシグネスは、大型のバズーカを構えて攻撃を図る。


「あっちもやる気だ! 行くぞエルダ!」

“分かったわ、ケビン……”


 素早くブラスターを連射して敵機を撃墜していく二人。

 さらにその中でシュウは、狙いを定めているようであった。


「ここか……。今だ!」


 素早く光線を撃っていくバーネイルを目の前にして、シュウは座標軸システムを再調整して最適化し、再度照準システムを修正し、ブラスターで光線を撃つ。


「ターゲット捕捉! 落ちろッ!」

「そんなぁッ! キャアッ!」


 そのバーネイルに、攻撃が直撃。機体は爆発四散し、もろくも砕け散った。


「よし、撃墜した……。でもまだ敵機はかなりいるな……」


 シュウは今の現状を危険視していた。



 一方、プロメテウス隊はオルフェウス隊と共に艦隊の方へと突撃し、攻防戦を繰り広げていた。


「アクティブウインガーもいるおかげで、何とかやりあえてるな。このまま敵の本隊を撃退するぞ」

“了解! ゼナード、パティ、行くぞ”

「任せな」

「分かったわ」


 また、ジュノー達も負けてはいなかった。バーストキャノンを使って敵勢の機体に光線を速射していく。

 素早く敵機を撃墜するものの、背後からもう一機のシグネスが接近する。

「来るか! このォッ!」


 素早くバーストキャノンで攻撃し、敵機を撃墜したジュノー。


“ジュノー大尉! 気を付けて……、あいつは……”


 アンディが心配する中、そこへと姿を現したのは、マリエルの駆るスパルタロスてあった。


「例の新型機か。接近戦特化型と見た! ならばバーストナックルで潰すまでよ!」


 近づこうと試みるジュノーとカールの機体を見て、大胆不敵にも笑みを浮かべるマリエル。

 彼女はビームランスで素早く敵機に攻撃を仕掛けていく。


「さぁ、喰らいなさい!」

「何ォッ! 先制されようがこっちのペースに持ってけばいいもんだ! カール、アンディ、ブルーノ、前衛で横陣形、援護射撃頼む!」

“了解!”


 三機のストライルは横一列に並び、スパルタロスを包囲しようと試みる。


「行くぞ、一斉掃射……」

「させるものですか! てやァッ!」


 まず、カールとブルーノの乗り込むストライルに蹴りを入れたマリエル。

 さらにビームランスで彼らの機体の両腕を素早く切断し、一瞬で彼らの攻撃の手を封じる。


「しまった! アンディ……、頼むぞ!」

「分かった! 何て奴だ……、こういう時はソードで……」


 間合いを取ろうと試みるアンディだったが、マリエルはすぐさま攻撃の隙を見つけて、ビームランスで素早く突いていく。


「何ィッ!? 早い……、それにしても素早い……」

「このまま、一発!」


 マリエルはすぐさまアンディの駆るストライルの頭部を一閃。機体はコントロール不能になり、そのままジュノー以外の三人は撤収することを余儀なくされる。


「クソォッ! 俺だけでは不利だな……。そうだ、ラディエス達に援護を……」


 すぐさま通信コードをコントロールパネルで打ち込み、ラディエスに援助要請を出した彼はしばしの間孤独な戦いを強いられる。


「バーストナックル展開! これで奴を倒すしかねェ!」

「ふん、実質素手じゃないの……。倒してくれるわ」


 ジュノーは必死になりながらマリエルの攻撃を回避していく。

 そして、隙を見て素早くバーストナックルを繰り出すも、不発に終わった。


「まずいッ!」


 隙を突かれて、マリエルのビームランスが機体肩部を突かれそうになる。


「もう終わりね……」


 その時、ラディエス達が合流して何とかジュノーは生き長らえることが出来た。


“ラディエス、良かったぜ! 来てくれたのか”

「ここからは俺がやる! かかって来い!」


 ラディエスは機体両腕部のメガ・ビームソードを展開し、マリエルに負けず劣らずの剣戟を見せる。


「何よ……、どうしてこっちが早さで負けるのよ……、くっ……!」


 機敏な動きを見せるロードブレイダーMk-Ⅲ。必死に斬撃を回避しようとするが、なかなか手出しをするのが難しいマリエル。それもそのはず、ラディエスはこの戦いにおいてブーストタイプで戦いに挑んでいたのだ。


「このォッ! 喰らえッ!」


素早い斬撃が、マリエルの駆るスパルタロスに肉薄する。


「マリエル大尉を倒させはしません!」


 タニアの駆るシグネスは、すぐさまビームソードを片手に素早く斬りかかる。


「ラディエス、ここは俺がやるぜ!」

“ジュノー、この機体で行けるのか?”

「多少肩をやられたくらい、どうってことねぇぜ!」


 そのままジュノーはバーストナックルを使い殴りかかる。

 この攻撃は一瞬にしてタニアの機体頭部を破壊する。


「しまった……、メインカメラが使えなくなったわ……」

「このォォッ!」


 ジュノーはもう一度勢いよくタニアの方へと殴りかかるが、それを運よく何とか回避したタニア。彼女はそのまま戦地を後にした。



 一方で、ラディエスはマリエルと素早い剣戟を交わしていた。


「このォッ! やられてたまるかよォッ!」

「私は接近戦なら負けない……、絶対によ!」


 素早くビームランスを突いていくマリエル。

 彼女の素早い攻撃を上手く回避し、ラディエスは隙を見せたタイミングで力強く刃を振りかざす。


「コイツめ……、どこまですばしっこいんだ! だが隙は見えた! 今だッ、喰らえッ!」


 ラディエスは自らのメガ・ビームソードでスパルタロスの機体左腕部を、シールドで防がれる直前で切断する。

 これにより、彼女は防御手段を失うがそれでも負けじと戦い続けていく。

 メルーサや他の傘下部隊は援護射撃をして、どうにかマリエルをフォロー出来ないか必死になって機銃を撃つ。


「まずい……。こっちも迂闊に動けばやられる。ゼナード、パティ、援護射撃頼む!」

“了解、任せといて!”

“我々も援護しよう、ラディエス”

「助かります、マーティー大佐!」


 ゼナードとパティ、クレイオス隊の駆る機体は、遠方の敵に目掛けてビームライフルを速射していく。


「よし、これでこの新型機に集中して攻撃できるな!」

“ラディー、気を付けて!”


 パティが心配する中で、ラディエスはマリエルとひたすら激しい剣戟を交わし続けた。


「素早い突きだ……。でも既に隙は見切ったぞ! これで……、決める!」


 ラディエスはすぐさまマリエルの駆るスパルタロスに斬撃をもう一発喰らわせた。


「そんな……。この……、私が!?」


 機体はそのまま爆発四散し、マリエルは漆黒の宇宙で命を散らした。


「マリエル大尉、返事を……! 大尉が死んだ? そんな」

“タニア・サンディス。このままでは危ういわ。逃げるわよ”

「りょ、了解……」


 そのまま本隊撤収と同時に、傘下部隊も去って行った。

 戦いは一旦終わったが、ダルク隊はマリエルを失い、戦意すらも失いかけていた。


「プロメテウス隊はやはり強すぎるわ……。まさかマリエル・フォルテシア大尉を倒すなんて。私は大尉の遺志を引き継いで、戦いに挑みます」


 彼女の目の前では、もう一機のスパルタロスが整備されていた。

 何故なら、以前からスパルタロスの量産化が想定されていたからである。

 果たして、メルーサはどう挑むか?


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