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第20話 ボナパルト隊の猛攻

 地球政府軍のワシントン基地・兵器開発チームの間で、あるミーティングが行われていた。

 それは、ロードブレイダーMk-Ⅲの新型ウェポンパックの開発計画であった。

 現在プロメテウス隊がサテライトベースにいることもあり、開発チームのリーダーであるヘンリー・セヴォンは、様々な開発プランを提案する。


「さてと、我々メガテック社側のプランとしては、Mk-Ⅲが宙域圏での戦闘に耐えうるであろう強靭的な性能を誇るウェポンパックが必要になるわけだが……。そこで用意したのがこの『ハイマニューバタイプ』だ」


 ヘンリーの書いた開発プランは、要約すると以下の通りであった。


────◇────


 このウェポンパックには、一対のブースターが備わったウイング、肩部のショルダーブラスター、両腕には接近戦用兵器を、脚部にはブーストタイプの1.5倍程度の機動性を確保した大型ロケットエンジンが搭載されている。

 また、標準搭載のビームライフル用強化アタッチメントとしても使用できるヘビーブラスターがハイマニューバタイプの武装として検討している。


────◇────


 しかし、このプランは些か現実的でないと頭を捻る者もいた。

 なにしろこれをすべて実現するとなると、膨大な予算を使うことになるのは確実だったからだ。それに対し、部下のアルバ・サーストは妥協案として、ウイングパーツとヘビーブラスターのみを新規で作り、その他の武装は作らないというものであった。


「ほう、アルバはそう考えているのか……。だが、今の状態では、いずれさらに強化されたMUが登場すればMk-Ⅲとはいえど立場は危うい。そこで私の提唱した強化プランを実現させたいところなんだ……」

「し……、しかし……」


 アルバは返答しようにも、言葉を渋らせる。


「今後はこの強化プランを実現可能な範囲で開発していこう。予算面に関しては、多く見積もってその上で問題が出たら変えていくとしよう」

「はい……」


 ヘンリーの意見に賛成していた者や、そうでない者も頷く。

 開発を行うにあたって慎重に行うのが今必要なことであった。



 一方、ラディエス達はサテライトベースの護衛任務をこの一週間で何度か乗り切っていた。

今までの戦闘を経て、実力をしっかりと付けていく彼らは、胸を張って自分たちは今までよりも強くなったと言える。

ラディエスとゼナードは、束の間の憩いの時を味わっていた。


「俺達はジミー少佐がいた時以上に、少なくとも強くなってきてるよな」

「あぁ、でも指揮の出し方は上手く出来てるかと言えば……、微妙な所ではあるけどな」


 ゼナードの言葉に対し、謙虚な態度を取るラディエス。

 彼は他人に対しては優しい一面、自分に対してはかなり厳しい性格でもあった。


「隊長さんよ、もっと自信持ってもいいんじゃないか?」

「そう……、だよな。もう少しくらい自分は強いって意識してもいいかもな」


 二人が話していると、パティが通路から休憩室へと来る。


「ラディー、ゼナード、これ」

「ん?」


 パティから手渡されたものは、アリカが作ったであろう小さなマスコットであった。

 可愛らしい子犬の見た目をしている。


「ふぅん……、可愛いじゃないか」

「これ、皆がしっかり生き残れるようにってみんなに同じものを作って配ったのよ。ほら、私も持ってるわ」


 パティはニコニコと笑みを浮かべて、その子犬のぬいぐるみを見せた。


「こういうのが絆って感じでいいな」

「アリカは今、地球政府軍に定時連絡をしているわ。後で手が空いてたら、お礼言ってあげて」

「そうだな。あいつは今まで以上に忙しいし、しっかり労ってやらないとな」


 優しく微笑むラディエス。彼はゼナードやパティに一旦別れの挨拶をしてから、通路へと向かった。



 一方、ミュートロン軍のマリエルは地球政府軍の手によって、火星のサテライトベース占拠すら無駄な足踏みにされ、自暴自棄になっていた。


「どうしてなの……。ここまで敵勢が強いなんて」


 そこへとボナパルト隊のエスニア達が近寄る。


「おぉ、マリエル。またあの時の事を……」

「うるさいわね! あなただって地球侵攻作戦に何度も手こずっているくせに!」


 マリエルの態度を察して、そのまま彼は黙る。


「済まない。俺も人のことは言えんが、今後は着実に侵攻作戦を進めていきたいものだな」

「えぇ、そうね……。あなたもせいぜい頑張るがいいわ」


 不機嫌な彼女を見てから、その場を後にしたエスニア。

 彼の脳内には既に新たな策があった。果たしてその策とは。



 翌日、ついにプロメテウス隊は宙域圏護衛の任務は最終日を迎えた。

 しかし、その矢先に敵勢が接近。このことを受け、ラディエス達は出撃することになった。


「ロードブレイダーMk-Ⅲ、バックパック・ブーストタイプ、アーム・ストライクタイプ、ショルダー、レッグ・ディフェンスタイプに換装。これで行くぞ!」

“了解! アルファスティンガー、カタパルト展開”

「出るぞ!」


 そして、ラディエス達は漆黒の宇宙(そら)へと駆けた。

 これに遅れる形で、オルフェウス隊やヒュペリオン隊も出撃した。


“ラディエス隊長、敵勢は我々のいたサテライトベースへと向かおうとしています”

「分かった。至急護衛陣形を組む」


 ラディエスとジュノー達は護衛のため、半円状の陣形になって守りを固める。


「ゼナード、パティ、遠距離から敵機接近。的確に撃て!」

“了解!”


 遠距離から接近して来る敵機に目掛けて、ビームライフルを撃つ二人。

 さらにラディエスは、アームキャノン砲を構えて撃っていった。


「アンディ、ブルーノ、カール、一斉掃射だ!」

“はい!”


 オルフェウス隊は宙を舞う敵機に目掛けて光線を浴びせ、敵機を確実に撃墜していく。


「よし、いいぞ! このまま敵勢を片付けるぞ!」


 自信満々のジュノー。彼はその時、勝利を確信する。

 この勢いの波に乗れば、確実に敵勢は全て倒せると思ったからだ。

 しかし、その時であった。


“ジュノー大尉、こっちへと深紅の狩人(カーマイン・ハンター)が!”

「何ィッ!? ならばやるしかない……。ラディエス、そっちの方は?」

“こっちはなんとかなってるんで、至急そっちの方は任せてくれ!”


 ラディエスはビームライフルを構えて、敵の本隊に急接近した。

 しかし、後方からは敵軍の戦艦・メガティクスの砲撃もあり、迂闊には近づけない状況。

 そこでシュウが動いた。


“ラディエス大尉、こっちからブラスターで遠距離射撃を行います!”

「分かった、シュウ。頼んだぜ」

“はい”


 こうして、シュウは後方の戦艦の主砲目掛けて、ロングレンジブラスターを構える。

コントロールパネルを操作した上で、射撃系統システムを調整し、狙い撃った。


「このまま行けェッ!」


 シュウの読み通り、彼の放った光線はミュートロン軍の戦艦主砲部分に直撃し、何とか邪魔者を片付けることが出来た。


「なんとか上手くいったな。エルダ、ケビン、二人は敵主力艦の残った武装を叩いてくれ!」

“了解!”


 こうして、ラディエスはパティやゼナードと突撃を開始した。


「どこからでもかかって来い! ウオォッ!」


 ラディエスはアームキャノン砲を撃ちながら、凄まじいスピードでボナパルト隊の傘下の部隊を撃墜していく。


「そんな、旧人類如きにィッ!」


 シグネスは次々に爆発四散していく。さらにそこへと追い打ちをかける形で、パティとゼナードの援護射撃が加わる。


「このまま突破するわ!」

「パティやるな……。俺だって!」


 二人の光線は電光石火の如く飛び、敵勢はそれに屈しかける。

 しかし、彼らの快進撃を止めようとしていた者がいた。


「さてと、ひとまず片付けてやろうじゃないか……」


 ギラリと煌めく銀色の瞳。隊長のエスニアである。

 彼は今までの鬱憤を晴らすがごとく、機銃を構えて突撃する。


「バーツェン、ロルフ、行くぞ!」

“了解!”


 光線を乱れ撃つ三人。この攻撃で今にも打ちひしがれそうになるパティとゼナード。


“こんなところで……、倒されてたまるものですか!”


 パティはビームライフルを素早く撃ち、バーツェンの機体に攻撃を行うが、防がれてしまった。


「何をォッ!」


 そこから宙域に浮くデブリに身を隠し、攻撃から身を守るバーツェン。

 彼は、物陰から攻撃の契機を窺った。


「パティ、ゼナード、大丈夫だ。アリカから貰ったお守りが必ず俺達から身を守ってくれるはずだ」

“そ、そうよね……。大丈夫よね”


 ラディエスの言葉を聞き、自信を取り戻した二人。

 ここでプロメテウス隊の猛攻が始まる。


「このォッ!」


 さらに遠くからシュウが放った閃光が、ロルフとバーツェンを妨害。

 その隙に、素早くパティとゼナードは射撃を行った。


「クソッ! 隊長の方へ加勢できない……」


 それと時を同じくして、二人が妨害を行っている間に、ラディエスはエスニアのいる方へと向かい、対峙する。

 操縦桿をしっかりと握り締め、エスニアの方へと左腕のインパクトブラスターで攻撃を仕掛ける。


「喰らえェッ!」

“ふんッ!”


 エスニアはすぐさま攻撃を防御し、そこからヘルセイドに搭載されたAIと連携して、敵の動きをモニター越しによく見極める。


「よし。これで上手く……、いきそうだ!」


 すぐさま背面のキャノン砲で敵機を迎え撃つエスニア。

 その攻撃をひらりと回避したラディエスは、そこから敵の行動分析を行い、脚部に備わったビットシールドを飛ばして、遠方からの攻撃を防げるようにした。


「なんとまぁ結構な小細工を……」


 エスニアは、あちこちに浮遊するビットシールドの動きのパターンを捉えようと試みるが、その行動パターンは複雑すぎる上に、戦闘用AIでは見切ることは出来なかった。


「解析システムは役に立たんな。こうなれば我が手で……」


彼は、自分自身の勘を頼りに狙いを定める。

 その一方でラディエスは、右腕のアームキャノンを駆使して攻撃を行う。


「なんと! だがこれくらいで倒せるかな?」

「させてたまるかよ! これ以上このサテライトベースを破壊させたりはしない!」


 さらにラディエスは、インパクトブラスターで強力な光線を放つ。


「行くぜ!」

「やらせるか!」


 ラディエスの放った光線を素早く撃ち返したエスニア。

 このままでは撃墜されることは回避できないと確信した彼は、ビットシールドの守備範囲の隙間を縫って攻撃を繰り出す。


「今だ! このォッ!」

「ウワァッ!」


 インパクトブラスターは破壊されたものの、ラディエスはまだ諦めていなかった。

まだアームキャノン砲や標準装備のライフルが使えるからだ。


「負けて堪るか! 喰らえッ!」


 エスニアは、機銃で光線を素早く撃ち、ビットシールド二基をようやく撃墜し、素早くラディエスの方へと接近する。


「さてと、これで……!」

「やらせるかッ!」


 一度グレネードボムで攪乱しようとするエスニア。

しかし、それをラディエスはすぐさま迎撃する。そして彼はアームキャノン砲を連射する。


「どこまでも俺の邪魔をォッ!」

「喰らえェッ!」


 隙を突いてラディエスは攻撃を仕掛けて、エスニアの駆るヘルセイドの機体右腕部を破壊した。


「グオォォッ! こんなはずでは……。ボナパルト隊撤収! 至急この場から離れるぞ」

“分かりました。我々の方も丁度エネルギー切れで限界でしたから……”

「よし、戻るぞ」


 こうして、ミュートロン軍は旗艦を失いそのまま敗走。

 ラディエス達は何とかサテライトベースの護衛に成功した。



 戦闘を終え、サテライトベースの整備班は疲弊しきっていた。

 それもそのはず、ロードブレイダーMk-Ⅲのウェポンパックは破損しており、一部パーツは丸ごと失われ、修理を行うための部品調達に時間がかかったからだ。


「これだと、いくらあのMk-Ⅲの性能をもってしても限界だな……。だが、今はこれだけでやりくりするしかないな」


 整備班の一人は、疲れ切った顔で修理用の部品調達を待った。



 その影響で、ラディエス達も地上に帰るに帰れない状況となった。


「ラディエス、済まないが予定より長くここに留まることは出来ないか?」


 ロウリーの言葉に対し、頷くラディエス。


「はい、お任せを」

「我々が呼んでしまったばっかりに……。済まないな」

「いいんですよ。人間誰しも、助け合いが大事ですし」


 ラディエスは笑顔で返した。


「ラディエス隊長、ひとまず短く見積もっても地球での時間で言えば、二週間はかかりそうですね」

「そうか……。でも、しっかり任務は全うしよう」

「はい」


 にこやかな表情を見せるアリカ。

 彼女はそのままサテライトベースのオペレーションルームへと向かった。

 戦いは一旦終わったものの、まだこれは始まりに過ぎなかった──


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