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71 王都アルダムの朝市

不定期更新になってしまっていますが、待っていただいている皆様ありがとうございます。

オーランド王国の王都アルダム。

異国人を多く受け入れてきた国の歴史的背景から、街ゆく人々の顔立ちや目や髪の色、服など多種多様な人々が道を行き交っていた。

金髪に碧眼、赤髪に緑の眼、ダークブラウンの髪に灰色の眼、茶髪に青と黄のオッドアイ。そんな大陸の北から南まで、あるいは一部地域に固まって定住している民族特有の色彩をもつ人もこの街ではそう珍しくもなく出会える。

また多種多様な出身地があるために食の好みも千差万別。肉に魚に野菜に香辛料。商人がそれぞれのルートを使い"世界中のどこの出であろうと必ず故郷の慣れ親しんだ食材が手に入る"と胸を張って誇っているのが朝市だ。



「大きな魚。あれ1メートルはありそう」

「あれは大衆魚で白身魚だ。味は淡白でよくムニエルにして食される」



全長800メートルの大通りを毎朝埋め尽くす350もの店舗。わたしたち一行は先行して王都に着いたヴラドの転移術で移動した。すると大通りを見渡せる宿の一室に出た。街中に急に転移したら目立つからと聞いて納得した。

その部屋の下の通りから喧騒が聞こえ、気になり窓から見下ろせば朝市が開催されていた。

朝市を経験したことがないのでちょっと興味があった。



「寄ってみるか?」



わたしはよほどソワソワしていたのか、察した魔王がしてくれた提案にすぐのった。

階下に下りだ大通りに出ると、とりあえず1番近くの店舗から見て回ることにした。一番最初に見たのはトマトの専門店で店舗のいくつかを覗きながら魚屋の店先に並ぶ商品に目がとまった。



「おいしそうだね」

「白身魚には白ワインだよねー。懐かしい。食べたくなってきちゃったから久しぶりに飲んじゃおうかな」



朝までハシゴ酒したのにこれまたお酒の話とはよほどお酒が好きなのだろう。それと酒盛りに大金を使い込んでツヴァイに叩かれ魔王に徹夜明けにも関わらず働く命令というか罰を受けているのに反省してなさそう。



「赤ワインしかあなた飲めないって言ってなかった? 白ワイン大丈夫なの?」

「ふふふふ」

「ヴラドは赤ワイン以外は食べても吐くぞ!」

「ちょっとガエル〜? 女の子の前で僕の情けない話をしないでおくれ」

「おおっ! 生きた牛一頭が売っているではないか! 間違いなく鮮度抜群だ。よし、買おう!」

「ワフッ」

「ガエルが牛買おうとしてる」

「おい、そこの馬鹿、却下だ」



朝市は大変に盛況で人人人。

買い物袋を手に持つ人は行き交う客と多少当たりながら人の間を縫い移動する。その人でごった返した通りで白銀の狼を連れたわたしたちは周りから物珍し気な視線を受けている。大型犬ほどの大きさの狼は珍しくもないが、白銀で人馴れしていることが珍しいらしい。狼自体を怖がるとか珍しく思ってはいないらしい。

アルダムの人々がたいして驚いていないことについて、搾りたてフルーツジュースを売っている店舗のおかみさんが教えてくれた。ちなみにこのおかみさんのお店でベリー系の赤いジュースを買ったのだけれど甘酸っぱくて美味しい。

さすが多種多様な国の人が集まる国だけあってたいていのことには動じない。

そう、巨狼フェンリルのロウは、一般的な狼サイズに小さくなっている。実は瘴気で構成されている魔物の類は、体の大きさが変えられるらしい。

瘴気の体内量を減らすことで体積が減らせるそうで、元巨狼のロウはその身を瘴気を減らすことで小型化した。

魔物って器用だなと思ったけれど、魔物が自ら体を小さくしたがりはしないそうだ。小さくなるということは弱体化することと同義だからだ。

しかしそれはガエルの魔獣使いとしての契約によって小型化させられたのだという。



「俺様たちの一族の魔獣を従える方法は、まずは魔獣に一人で勝利することから始まる。俺様はこいつを預けられたその日に全回復させ一対一で戦い勝利を得た! すると魔獣は勝者に服従する様になる。そして魔獣使いと魔獣は魔法で契約を交わす。魔獣使いを主として命も体も全てを委ねるという契約だ。これを"従属の術"という。それにより、魔物が本能的に嫌がる小型化も命じてさせ、こうして街中に連れてこられたわけだ」

「それって…」

「そうだ。聖女殿がかけられた術と同じものだな」



わたしがエルグラン王にかけられた服従せざるを得ない奴隷化の魔法。契約上の主に逆らうことはできない。

それを魔獣に掛けているとなるとなんとも複雑な気持ちだ。



「可哀想だと思うかもしれんが、契約は魔獣に意思決定の自由を与えている。契約を結ぶ結ばないは魔獣の意志だ。契約を拒否すれば野に返すのが掟。聖女殿のような強制ではないのだ。それにこれは魔獣使いと魔獣が一心同体となって戦うためには必要なことなのだ。戦いにおいては上下の立場がはっきりしていなければ、指示を聞かず勝手をし連携もなにもないことになれば命を落とす危険がある」

「指揮官と兵みたいな関係性ってこと?」

「そう思ってくれて構わない。どうだ、悪いことではなかろう?」



フェンリルのロウの方を見れば嬉し気に尻尾を振っていて何の問題もなさそうにしている。

"従属の術"も使い方次第で、使う人次第なのだろう。ガエルは魔獣に愛情をもっているのがわかるから、このロウや他の契約しているガエルの魔獣たちは幸せな出会いをしたのだろう。


その後ガエルが牛肉の串焼きを抱えるほど買いロウと分け合って食べたり、ヴラドが売り子の可愛い女の子や綺麗なお姉さんにナンパしまくったりして魔王がイラつきながら寄り道しつつ朝市の通りを抜けて一行は王都アルダムで一番目立つ建物を目指した。

眼前に広がるのは王都たる王の座す王城。

ヴラドは懐から港にいた巡回の騎士から受け取った異国人推薦状なる白い便箋の紹介状を取り出しひらひらと人差し指と中指に挟んで弄んでいる。



「まずは正攻法でテオドール王子を口説こうか」


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