68 転移の魔法陣のその転移先
「リンカ様の服は冒険者風ですが昨日の物とはまた違いますね」
「うむ、新しく買ったのか? 似合うと思うぞ。聖女のローブ以外もどんどん着るといい」
「あ、ありがとう」
あなた方の上司が買ってくれた物ですと思い、上司に視線を向けるとしれっとした顔をしている。
それはどういう心境なんだと思いながら表情をじっと見ていると、ブルースがワゴンに乗せた朝食を運んできて配膳してくれた。「ありがとう」とお礼を言えば「どういたしまして」と優しい声色で返してくれた。いい人だ。
今朝のメニューはパンにソーセージにスクランブルエッグにクリームシチュー。昨日は夕食を食べていないからお腹がぺこぺこなのでいつにも増して美味しそうだ。
そんな最中に食堂入り口の扉が勢いよく開いた。
「やぁ、みんなおはよう! 良い朝だね!」
朝からテンション高い吸血鬼がお帰りのようだ。
朝はいつも気怠るい感じなのに今日はどうしたのか?
「朝から騒がしいですよヴラド。おかえりなさいお二人とも」
「おうおう、ヴラドはいつもの寝ぼけ眼とは雲泥の差の元気具合だな。まさか完徹か?」
「そのとおーり! 王都についてから酒場と夜のお店を朝までハシゴしたんだよー」
徹夜明けテンションな上に酔っているのか。
王都に先行しておくのは知っていたけれど、そのまま朝まで飲み明かしたのか。元気だね。
「む、ゲーデ、顔が死んでいるぞ! どうした?」
「…酒場で酔っ払いと酒盛りするヴラドに連れ回されて、飲んでもいないのに匂いに酔った。気持ちが悪い。うぷっ …それに酔っ払いどもは殺気を放っても絡んできて下世話な話題をふっかけてきて…殺したくて仕方なかったが堪えなくてはならず…! やはり人間など嫌いだ…」
人嫌いを克服させるどころか悪化させてるじゃないか酔いどれ吸血鬼。
「そうか、災難だったな。そら、水を飲め」
「窓を開けて空気を入れ替えましょう」
「ヴラド、酒の匂いが酷いですよ。一体どれだけ散財したんですか…?」
「うーん、金貨300は使ったかな〜?」
ツヴァイがどこからか取り出した髪の束を丸めヴラドの頭を引っ叩いた。
なんてカオスな朝の光景だろう。
魔王は目を瞑り肘掛けに肘をつき顎を乗せため息をつき「静かにしろ」と一喝し場をおさめた。
そんな落ち着きない朝の食堂はやや合って食事が終わり、皿を下げると報告会の場となった。
「まずは昨日の一件を全員に共有する。ヴラド、報告しろ」
「かしこまりました」
ヴラドはさっきまでのテンションの高さはなりをひそめて淡々と鉱山跡での出来事を報告した。時折わたしが見た過去の幻視について詳しく質問を受けたのでありのままを話した。
ツヴァイとガエルは一連の内容でやはり『ミコ』という存在に注目した。二人も初耳だそうで何やら思案している。
そして魔王が鉱山から持ち帰った箱を取り出した。
「この中にある魔法陣をツヴァイと共に調べた。魔法陣はよくある転移の術が施されていて、今も生きている。この術の先はとある一つの場所に指定されている。その場所はすでに調べがつき特定済みだ」
「さすが陛下。そんな針の穴に糸を通すような繊細な調べ方そうできるものではありませんよ」
「…難しいの?」
わたしにはそれが難しいのかわからないので質問してみた。これにはツヴァイが答えてくれた。
「相手に悟られぬように転移の術を通常発動させずに魔法陣の回路を掻い潜り、指定された転移先に自らの魔力を微弱に流します。それを感知能力を使い世界のどこに繋がっているのか調べる神経と技術を駆使した高度な手法です。世界中を探してもできる者は一握りいればいいほうでしょう」
「そう難しいことはしていないだろうに」
「してます」
電話とかネットの逆探知みたいなことしたってことか。その身一つで。やはり魔王は魔法の天才のようだ。
「それで、だ。特定した場所が場所でな」
話を戻して魔王が結果を発表するもののなにやら歯切れが悪い。
「場所が場所?」
「どこですか?」
「オーランド王国の王都にある、王城だ」
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