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42 四天王ゲーデ

昨日は更新できずごめんなさい。

例の如く寝落ちました…

書庫の扉を魔王とツヴァイ、ヴラドが見た。

ガエルは身じろぎすらしない。



「来たか」



扉を2回ノックする音が響いた。

だれか部屋を訪ねて来たようだ。



「入れ」



扉を開けて書庫に入ってきたのは一度は会ったことのある人物。

短髪に吊り目で右眼には眼帯をつけ、腰に剣を履いている。まだ成長途中を思わせる身長や肩幅、体の厚み。あらためて観察してみれば歳の頃はわたしと大差ないのではないだろうか。

その人物は室内に入り扉を閉めると、胸に手を当て魔王に向かい一礼した。



「四天王が一人、ゲーデ戻りました」



死王ゲーデ、四天王最後の一人が会議に参加するため馳せ参じた。



「よく戻ったな。首尾はどうだ?」

「念話を聞いて急いできた。まだ途中だから早く続きをしたい」

「そう言うな。久方ぶりに城に戻ったんだ、しばらく滞在し疲れを癒せ」

「…それは命令か?」



空気が一瞬ピリッとした。

ゲーデが魔王の命令に反発したからだ。

しかしその緊張感はすぐに魔王の発言に霧散した。



「いいや、これは願いだ。ゲーデ、お前にはできれば城に滞在してもらいたい。紹介したい者もいるしな」

「…必要とは思わない」



城にいて欲しいと意外にも柔らかい対応をする魔王の姿とは反対に、ゲーデの対応は拒絶が含まれどこか冷たさも感じる。仕える主人に対する態度としてはいかがなものかと思わざるを得ない。

けれど何故か魔王はおろか他の四天王の誰もゲーデに対して注意も叱責もしない。

それどころか困った子どもを見るような慈愛の眼差しをむけている。彼は魔王幹部の中でどういう立ち位置なのだろう?



「俺は必要だと思う。お前にとっても」



そのゲーデに真っ向から否やを突きつけ魔王はわたしの方に手を差し示した。



「知っているだろうが、聖女リンカだ。俺たちに協力し現在魔王城に滞在して邪神と瘴気対策に助力してもらっている」

「…久しぶり、わたしはリンカ。あの時はごめんなさい。いまは…」

「馴れ合うつもりはない。オレには近寄るな」



こちらを一瞥もせず、にべもない完全な拒絶。

わたしは取り付く島もない態度に何も言い返せず固まった。



「ゲーデ」

「さすがにそれは良くないです」



魔王にたしなめられツヴァイが意外にも機微を読み注意した。さすがの空気の悪さにガエルが死んだ魚の目をしながら顔を上げ、ヴラドは静観を決め込んでいる。



「むしろ何故貴殿らは聖女を大事に扱い信頼しているかのように接している? 弱味でも握られているのか?」

「ゲーデ」



彼には突然降って沸いたわたしが同僚や主人に受け入れられている状況が理解不能らしい。



「リンカ様は我々に事実協力しています。あなたもこの魔王城内の瘴気が格段に減っていることは気づいているでしょう? リンカ様が城内を浄化してくれたためにこれほどまでに状況が変わったのです。

信頼するに値する仕事ぶりだと思います」



ツヴァイがわたしの働きによる成果をもって信頼していると意見を述べた。



「そうさな、俺様はツヴァイの言うように働きぶりに感心しているのもあるが、事実を知ったからとはいえ単身敵対していた一派に迎合した胆力を買っている。老若男女問わずたいていの人間は気持ちの切り替えや価値観が邪魔をするであろうし、恐怖や不安もあろう。なかなかできることではない。たいしたものだ」



ガエルはわたしの根性を評価してくれていた。

わたしはそんなに抵抗がなかったけれど、とくにこの世界に生まれ育った人間には受け入れ難いだろうとは思う。



「僕は、聖女様が可愛い女の子だから」



ヴラドはほんとヴラドだね。

女の子みんなに言ってるんだろう言葉を間に受けるわけもなく、さっきまで二人のわたしへの評価にじんわり感動していたのだけれど遠い目になってしまった。



「俺は協力を乞い、リンカは応じた。そして俺とこいつは約束を結んだ。それで充分だろう?」



最後に魔王が締め、共に立ち向かう約束をしたことが信頼に値すると言った。真名を教え合う以前の城に連れてこられた時にした謁見の間での魔王本体を前にした約束。あれで充分だと彼は思ってくれていた。そのくせ接し方には困っていたようだけれど。



「オレには理解できない」



彼は憎しみを宿した瞳をして顔をしかめると、わたしを視界に入れない位置の壁に寄りかかった。

微妙な空気を断ち切るように会議は再開し、いくつかの事を話し合うと終了となった。

夕食の鐘がちょうど鳴ったのでみんなで食堂に向かう中、ゲーデは一人自室へと戻っていった。食欲がないと言って。

これは完全にわたしは避けられている。

…わたしはなにか彼に嫌われる事をしてしまったのだろうか。

ぽんっと肩に手を置かれた。



「気にするな、というのは難しいだろうが聖女殿はなにも悪くない。あれは人間全般を憎んでいるのだ」

「…そうなの?」

「聖女様には負担をかけてしまってごめんね。けれどあれはゲーデ自身の問題だからおいそれと僕らが首を突っ込むのも良くないからねぇ。なるべく近寄らない方が聖女様には気が楽だと思うよ」



そうアドバイスをしてくれたヴラドの提案にわたしはそうした方がいいかもしれないと思った。

わたしも辛いけれど、わたしを視界に入れたくもないゲーデに近寄ると彼にとっても辛いだろうから。

だというのに。



「さぁ、僕らで仲良くオーランドの王子様を見つけよう!」



ヴラドはわたしとゲーデを魔王支配領域と人の世界の境界に接している国、オーランド王国に連れてきた。なぜこんなことに…!?


お読みいただきありがとうございます!

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