41 地脈についての魔王城首脳会議
城に着いてひとまず書庫に魔王、わたし、ツヴァイ、ヴラド、ガエルが集まった。
主要メンバーを魔王の命令で念話を使って呼び出したので、昼夜逆転体質の吸血鬼ヴラドも眠そうに目を擦りながら参加していた。
ガエルはテーブルに突っ伏して微動だにしない。嫌いだという本の検閲作業をしていたから精魂尽き果てたのだろう。拝みたくなってきた…。ツヴァイにイケニエとして差し出して出かけてごめん。
なお四天王最後の一人ゲーデにも招集をかけたそうだけれど姿は見えない。間に合わなかったのだろうか。
「ゲーデは放っておいていい。そのうち姿を現す」
魔王一派のみんなもゲーデの扱いに異論はないようだった。どうも彼独り欠けている状況に慣れているようだ。彼はいつもこんな風に独り行動が多いのだろうか。
「では進行役はわたしツヴァイが担います。このたびリンカ様の協力により地脈が瘴気に汚染されていることが判明し、魔王支配領域内の複数か所の調査を陛下と共に行っていただきました。お二人ともお疲れ様でした」
ツヴァイが首を垂れて礼の姿勢をとったので軽く会釈を返した。そんなわたしを微笑ましそうにヴラドが見つめうんうんうなずいている。
「僕が眠っている間にふたりでデートに行くなんて羨ましいな。楽しかったかい?」
「ええと…」
「リンカ、それは捨て置け」
デートだなんてまたそういう色恋に結びつけて…
この吸血鬼はなにかというと男女の話題に持っていくようだ。
「では調査で現在までに判明した情報を共有します。魔王支配領域内の魔物の湧きが頻繁または凶悪化していた地点は異常に濃い濃度の瘴気が感知されました。またその地の地脈、水脈も瘴気に汚染されています。地脈の汚染が感知された地はすべて魔王支配領域となっています。また、領域内の破壊された神殿跡を調査したところ、人為的に破壊された痕跡がありました。リンカ様がそこで見た過去の幻視と見られる光景によれば、邪神信仰者とおぼしきローブを着た二人組が複数人を巻き添えにして神殿を破壊したようです。神殿跡からは祭具だったと思われる砕けた昌石が見つかっています。この行為により瘴気がその地を汚染し魔王支配領域拡大の一因になっている模様です。報告は以上です」
「へー、ずいぶん調べたね。しかしまあ地脈かぁ。古い民話の中の話かと思っていたよ。実際にあるんだね」
眠そうにしながらもしっかり聞いていたようで、ヴラドは感心したようにウンウン頷いている。
そしていい笑顔で言った。
「邪神信仰者たち忌々しいね。もうおいたできないように皆殺しにしちゃおうか」
「賛成します。うろちょろしていて目障りでしたが我々に怒りを覚えさせた罰として命で償ってもらいましょう」
「えっ」
邪神信仰者たちは確かに残酷で身勝手な方法で彼らの悲願である世界の滅亡を推し進めているから怒りの感情を持つのはわかる。長らく邪神対策に動いてきた彼らにしてみれば万死に値する凶行だろうけれど皆殺しはちょっと。手を染めていない人たちだっているだろうし。
「静まれ。あまり物騒な事を口にするな」
魔王の発言で二人の話しは中断され、魔王の顔をまじまじと見た後にわたしを見た。え、何でわたしを見たの?
「これは失礼したね、聖女様には刺激が強かったか。発言はもっと穏やかな内容にするようにするよ」
「申し訳ありませんでした」
「い、いいえ」
わたしに気を遣って会話をやめてくれたのか。
そりゃあ焦ってしまう発言だったけれど、わたしに合わせていつもの彼らの会話リズムを邪魔したくない。
「あのね、気にせずいつもどおり話して。わたしに気を遣って話し合いがしにくくなったらその方が嫌だから」
そうわたしが言うと二人は少し驚き感心した顔をした。
「僕たちに遠慮していたようだったけれど心境に変化があったようだね。自分の意見を言えるようになってよかったよ。言いたいことを言えずにいる関係は健全ではないからね」
ヴラドはちょっと楽しそうにわたしに柔らかい笑顔を向けた。なんだ、お見通しだったのか。わたしはよっぽど硬い雰囲気を出していたようだ。
「遠慮していたのですか。気付きませんでした」
「君はまだまだ人の機微を読む修練が必要だね、ツヴァイ」
ヴラドがツヴァイの頭をぽんぽん叩こうとするもツヴァイがさっと避けている。クールな顔をして絶対拒否の気配を発している。四天王の中では若手(400歳ちょっと)のため可愛がられているのかもしれない。
「しかし邪神信仰者どもはこのままにはしておくわけにいかないね。みなごろ…はするしないは置いておくとしても、これ以上神殿を跡地にされてはかなわない」
「隠れている拠点を探してころ…身柄を押さえますか」
「目星はいくつかつけているけれど、もっとうちの子たちに働いてもらうよ。一網打尽にするべくすべての拠点を洗い出させるね」
優しい言葉に変換してくれていい人たちだ。
しかしこの上司さらっと恐ろしい指令を眷属の吸血鬼たちに出そうとしている。まだ見ぬ眷属のみんな過労死しないようにね…




