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25 かつて過ごした亡き国へ

地球の神様との縁があった王女様、か。

彼女が手記やなんらかの形で神様のことや、接触する方法とか情報を残していないだろうか。

わたしが日本に帰るにも、邪神の件に手をつけるにも地球の神様にぜひ協力してもらいたい。

最終的に建国したエルグラン王国なら彼女の遺産が残っていないかな。


「エルグラン王国で王女様について調べるのは、さすがに難しいよね…」

「今はその時ではないだろう。勇者が国を手に入れたら容易に調べられる。それまで待て」

「そうだよね…」


今のエルグラン王国に行ったところで、生きていたことがわかって大騒ぎ、そしてあの国王は利用するべく捕らえようとするだろう。調べ物できる状況じゃない。

ウィルの王位継承がうまくいくのを期待して待とう。きっと彼ならうまくやれる。人望あるし正義は彼にあるし味方してくれる人がたくさんいるだろう。


「他に調べるツテはないか…」

「…そういえば王女は城にあった小さな神殿によく通っていたらしい。通っているうちに夢に神が出てくるようになり、回数が増えていったと言っていた」

「! なにか関係あるのかも。そこってどこにあるの?」

「…案内しよう。今はない、ラスタ王国の王城跡へ」


魔王は口を閉ざすと魔力を練った。


『聖女リンカと共にしばし城を空ける。何事かあれば連絡をいれろ』


「え、何これ? 耳から聞こえないのに声が頭に響いてる?」

「念話だ。どれ程離れていても話ができる魔法だ」

「便利だね」


電話もネットもなく、遠方とのやりとりは手紙というこの世界において最高の連絡手段じゃないだろうか。


『かしこまりました。行き先はどちらですか?』


これはツヴァイだとわかった。声ではなく魔力で相手が誰だか感覚で判別できて不思議だ。


『旧ラスタ王国。帰りは遅くなるかも知れん』

『う、ん〜? デートかい、魔王様?』


念話は複数人と同時に連絡が取れるようだ。吸血鬼は念話で目が覚めたようで、寝起きらしき話し方だけどいつもの調子。


『おぉ、2人は外出できてうらやましいぞ… 気をつけて行ってくると良い… まあ、王が一緒だ、何も心配はいらないか』

『それでしたら聖女様の御昼食として簡単に食せるものを早急にお作りしますので、しばしお待ちください』


え、今の元気ないのはガエルだろうけど、その後の渋い男性の声は誰?


「今のは執事長だ。食事を失念していたな。少し待つか」


会ったことない執事長と初接触が念話、か。

相変わらずアルマとジョゼフィーヌ以外の使用人の皆さんとは会えていない。いつか会ってくれないかな。城内はいつだってゴミ一つ落ちてないし、窓もいつも曇りない。食事はおいしいし、シーツは毎日取り替えてくれて、お風呂も綺麗。もちろんジョゼフィーヌがやってくれているのもあるけど、他にもたくさんの使用人が関わっているんだろう。日ごろの身の回りのお世話のお礼とかしたいし、普通に雑談とかしたいんだけどな。


ものの数分待つと、ジョゼフィーヌとアルマが平身低頭しながらバスケットに入れたお昼を持ってきてくれた。

魔王の前だからたぶん畏多さと緊張でそうなったんだろうけど、中腰で頭下げながら歩くのは腰痛めそうだからやめた方がいいと思う。

ガクガク震えるジョゼフィーヌの手からバスケットを受け取りお礼を言った。アルマなんか顔色もよろしくない。さっさと魔王とこの場を立ち去ってあげた方が良さそうだ。


「執事長さんと、料理人さんにもありがとうって伝えてくれる? わたしが直接話せたらいいんだけど困らせちゃうからね」

「つ、伝えます…」


アルマがじっと見つめて何か考えてそうだけど、すぐに立ち去ることにして魔王を促してて歩き出した。

このバスケットは荷物になるから魔導書に入れておこう。魔導書にしまうとそれを見ていた魔王に聞かれる。


「使用人とも顔を合わせたいか? そう命令しようか?」

「ううん、いいよ。みんなのペースで本人の意思で話してもいいって思ってくれたらそのうち話せたらいいなって思ってるから」

「…ゼルマにそのうちみなが変わることになると言ったそうだな」

「うん、言ったけど…」


前にゼルマと話したあのことか。

使用人のみんなと会いたいわたしに、ゼルマは昔からの習慣だから難しいだろうと言った。

それに対してわたしが言ったのはこうだ。


『外の世界は時代が変わって常識も変わったんだと思う。この城も邪神をどうにかしたら、瘴気のない普通の国になるんじゃない? そうしたら外とも交流するようになるだろうから、いつまでもこのままではなくて変わることになるんじゃないかな』

『普通の国に… そんな日が、来ると?』

『うん、きっとね。いつかは』


あの少年と直接話すこともあるのか。

四天王とばかりいる印象だったから意外だ。


「その日が来ることを、信じているのか?」


邪神がいなくなった日が来ること、それを実現できるか。

…そう問う魔王の心境はわたしにはわからない。

不安なのか、非現実的だとでも思っているのか。

わからないけれどわたしはこう思う。


「『人間が想像できることは、人間が必ず実現できる』って誰かの言葉があってね。そうかもって思ってる」

「『人間が想像できることは、人間が必ず実現できる』…」

「だから、その日を想像できてるわたしは、実現できると信じてる」

「…そうか」

「そうだよ」

「…その時が来たら、この地はどうなるだろうな」

「あなたは国王してるんじゃない?」

「それは想像できんな。お前は、ここにいて俺に協力し側で支えているかな」

「それは、どうかな…」


魔王が手を差し出してきた。

わたしはその手のひらに自分の手のひらを重ねて、旧ラスタ王国に転移した。


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