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11 リベンジマッチ

交渉は決裂し指輪は魔王預かりのままになってしまった。あきらめずに折に触れて交渉は続けていこう。



「さて、では力試しを再開しましょう」

「はい。午後の部のプログラムはどうなっていますか、ツヴァイ隊長」

「まだやるのか」

「なんだなんだ力試しだ? 腕試合でもするのか?」



腕試合とは腕相撲のことだ。

こんな格上の猛者たちと腕相撲なんかしたらわたしの腕がもげるわ。



「なるほどなるほど、聖女の力でできることを確認しているわけか。面白い! 聖女の協力が得られたからこそできる試みよな!」



そういえば中庭で「快挙」とか「とうとう」とかいっていたけど聖女に協力をとりつけようとは前々からしてたのかな。



「歴代の聖女に協力は求めなかったの?」

「うまくいかなかった」

「誰も?」

「一部は協力した。1000年前のアイツは事情を知っていたが、封印して解決したと思ったからな。封印が弱まった際の対策は立てていなかった。800年前は勇者がまだ事実を把握していたため聖女に説明していて半信半疑ながら理解していたがな。精神的にもろく聖女の力も弱く俺を前にしただけで体調を悪くしていた。無理をさせると死んでしまいそうだったから断念した。実際、数年後に儚くなったらしい 。600年前は事情を説明し幾度も協力を求めたが悪と決めつけられ拒絶された。向こうで熱心な宗教人で神は絶対という思想家だったようだ。400年前は勇者すら忘れやがって聖女ともども偽の歴史通り『魔王討伐』と信じきっていた。少しずつ情報を与えてもまったく疑いもしなかった。200年前のもな。……俺は説得を断念した相手に対しては誘導して力を使わせてきた」



うんざりした顔と声色に苦労がしのばれる。

腹に溜め込んでるものがありそうだ。



「人は信じたいものしか信じない。どれほど言葉を尽くして語りかけようとも、相手が受け入れる素地がなければどうすることもできん。まさか力ずくで言うことを聞かせるわけにもいかんしな」



ちょっと皮肉げに言った人への評は彼の人生経験から導き出された真理だろう。



「…なかなかいい巡り合わせがなかったんだね」

「だが今回はいい巡り合わせが来たようだ。期待している」

「…これは期待に応えないわけにはいかないね」



余裕のありそうな魔王の笑みに鼓舞されてがぜんやる気が出てきた。



「では盛り上がったところで再開せよツヴァイ!」

「あなたは初見でしょうに。ではこれです」

「これは…瘴気入りの壊れた昌石!」

「俺たちは『瘴気石(しょうきいし)』と呼び、邪神の信者共は『神の嘆き』と呼んでいる」



メデューサの少女も使っていたあの瘴気の漆黒の塊がテーブルの上に置かれた。

触れただけで呪われてしまいそうな禍々しさを放っている。



「どれほどの浄化をこなせるのか、魔力量を調べたいと思います。これを浄化してください」

「これにはオルトロスを生み出せる量の瘴気が詰まっている。つまりはオルトロスだと思え」

「小さくまとまっちゃって…。やってやろうじゃない」



わたしは椅子から立ち上がると清浄の杖を『瘴気石』に向けて魔法を唱えはじめた。

ツヴァイが距離をとり、ガエルは興味津々に身を乗り出して見つめ、魔王は微動だにせずにわたしをみている。

女神ウララの森でオルトロスとの戦いを思い出しながら魔法を選んだ。

あの時は足止めをする必要があったから繋ぎ止める魔法『ホーリージェイル』を使った。

けれど足止めはいまは必要ない。

ありったけの魔力を注ぎ込んだ槍をお見舞いしてやる。これはわたしにとってもいい力試しでリベンジだった。

あの時はよくもやってくれたな、覚悟しろ!



「ホーリージャベリン!」

「お?」

「大きい!」

「!」



光の槍は柱のように巨大化して顕現し、『瘴気石』に突き刺さり視界を白く染めて輝いた。

目が光で眩み、しばらく何も見えなかった。



「おおっ」

「お見事です」



ようやく視界がよくなると『瘴気石』は瘴気が浄化され、もとの『壊れた昌石』になっていた。

勝った! オルトロスに! リベンジ成功だ!



「オルトロス程度ではお前に太刀打ちできないようだな」

「もうこいつには負ける気がしない!」



コトッ、コトッ、コトッ…



「ではもう3ついきましょう」

「はあ!?」

「どれも先ほどくらいは瘴気がつまっているな…」

「この城にいくつもこういうものがありますので遠慮せずに浄化してください」

「対オルトロスを4連戦か。なんと激しい戦いか!」



ゲームだってそんな連戦ないぞ!? 鬼か!



「リンカ、無理しなくていい」

「いやーーいや、ここで逃げたら女がすたるっ」

「潔い!」

「おや、冗談だったんですが」

「お前冗談をいっているようにみえんな。わかりづらい!」



これはもはや意地だ。やってやる。

そう、これは力試し、どこまでやれるかの実験だ。



「オルトロス、ありったけ持ってきて。わたしが倒れるか、オルトロスが尽きるか、勝負だ」

「男らしいな! 気に入ったぞ聖女殿!」

「そうまでおっしゃるならばお付き合いしましょう。持ってきます」

「なにを盛り上がっている、やめろ」



勝負はオルトロス14体分を浄化したところでわたしの魔力が尽きたため、魔王のストップが入り幕を閉じた。

まだ瘴気石のストックはあるらしく、わたしの力が及ばなかったけれどガエルとツヴァイに健闘を讃えられた。ひと試合終わったかのような妙なすがすがしさがあった。


なお、わたしは魔力を使い切って息をきらせ足に力が入らずへたり込みそうになっていた。

すると魔王により強制的にお姫様抱っこをまたされてしまい食堂を出て廊下を運ばれた。

待って恥ずかしい。



「おろしてっ」

「断る」



抗議するも却下されてしまう。

2人と一匹(グリフォン)も後からついてきた。

そうして執務室まで移動するとソファーに横たえられた。



「休め。がんばりすぎだ」

「…はい」



気遣うような目で顔をのぞきこまれた。

心配をかけていたようだ。反省した。


お読みいただきありがとうございます!

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