115.根拠
いつもありがとうございます。
ワールハイト同盟が5年以内に崩壊する
その根拠となる資料をミヒャエルが見ると
「この資料の正確性はどれほどなのでしょうか?」
という質問が来た。情報元はどこか?それによっては全く意味のない資料となってしまうこともある。流石研究者、根本の確認は怠らないね。
「それはダンジョンコアがずっと集積しているデータからのものだから、間違いようがないよ」
「それなら確定ですね。しかし、それならマスターは非常に困るのでは?」
「大いに困っているよ。エルドたちが卒業するまではもってもらわないといけないからね。そのあとはどうでも良いけど」
「ふっ。卒業まで最低4年はかかりますね。間に合うかギリギリです」
「できればさらに1年は余裕がほしいところだ。12歳ではまだまだなところが多いだろうし」
「そうですね。しかし、この資料を見るとワールハイト領主一家に伝わる家訓“他都市との協調より自身の繁栄を考えろ”でしたっけ?そんなのがあったと記憶しているのですが、そのとおりですね。その意味を理解していない愚かな領主により、ワールハイトそのものが潰れることになるとは」
「家訓は僕も覚えていないな。ただそんな教えが伝わっていたのは知ってるけど」
元々ワールハイトは他都市の援助要請などはすべて断って、自身の繁栄を追求してきた。そこに変化があったのは今の領主になってから。領主が変わってから他都市の援助要請などを受けるようになっていった。そしてできたのがワールハイト同盟だ。
今の領主は本家ではあっても傍系に限りなく近い位置にいた。それが自分以外の候補者をすべて蹴落として領主の地位へとついた。そのため家訓が伝わっていなかったこともありえる。
しかも、救援要請をしてきた領主は皆、学校時代の同級生や先輩、後輩の間柄だ。断るのは勇気がいるだろう。
ミヒャエルに見せた資料とはワールハイト同盟全体の収支をまとめたものだ。
ワールハイト単独であれば黒字だが、同盟全体としてみれば大幅な赤字だ。そもそも、ワールハイト以外の都市は赤字経営。よくて自転車操業だ。つまり、何かあればいつ破綻してもおかしくない。
ワールハイト同盟結成のきっかけになった救援要請はニゴ帝国からの軍事介入によるものだが、それをきっかけに財政的にもワールハイト依存の傾向が高まっている。ワールハイトから各都市への貸付という扱いになっているが、回収の見通しはない。どんどん貸付金額だけが上がっていく。そしてワールハイトが支えるにしても限度がある。
ニゴ帝国とすれば、経営破綻したワールハイト同盟であれば、軍事的戦力の消費が最小限で併合できる。あとは都市連合との一騎打ちだ。
「それを防ぐために、マスターは直接ワールハイトをどうこうするのではなく、ニゴ帝国ですか?」
「そうだね。そもそもワールハイトにできる良い手が思いつかない。せいぜい、周りの都市を全部潰してしまうことだけど、そうすると貸し付け分の回収はできないし、下手すると復興費とかでさらに持っていかれることもありえるから、それもできない。だが、ニゴ帝国は間違いなくダンジョンマスターの力を利用している。そこを排除できれば大きな打撃になる。しばらく他にかまっていられないくらいのね」
「まあ、そのダンジョンマスターもニゴ帝国に協力しているのか、協力させられているのか、で状況も変わってくるのでしょうけど」
「そのためのダンジョンバトルだ。協力しているのなら『マスター支配』で無理やりにでも配下とするし、協力させられているなら交渉次第ってところだけど、交渉決裂ならそれも『マスター支配』だ」
「つまり、ニゴ帝国にいるダンジョンマスターが協力させられていて、交渉でうまくいけばバトルは回避でそれ以外はすべてバトルということですか」
「そうだね。そしてバトルになればまず『マスター支配』で隷属化だね。もちろんこちらが勝てれば、だけどね」
「バトルでの負けの心配はしていませんよ。領域100km以下のダンジョンマスターに今のマスターが負けるはずがないでしょう」
いわゆる不良債権というやつですね。貸すほうとしては貸している方が倒れられると債権の回収ができないから、どんどん貸してしまうのですが‥。その結果‥。




