第1話:神授の儀と、ただの烏
久しぶりの投稿です。
宜しくお願いします!
「次、天野 漣!」
神殿の厳かな声に、俺――漣は深く息を吐き、青く輝く『神授の祭壇』へと一歩を踏み出した。
周囲の同級生たちからの視線が突き刺さる。座学の成績は優秀だが、実技はパッとしない俺への、期待と好奇の目だ。
(……何でもいい。前衛で戦える、火属性の精霊か、せめて牙を持つ魔獣であってくれ)
祈るように手を組み、祭壇の中央にある水晶に触れる。
瞬間、神殿の天井がまばゆい黄金の光に包まれた。パチパチと空間が爆ぜるような音が響き、光の粒子が中央に集まっていく。クラスメイトたちから「おおっ」と歓声が上がった。
だが。
「……あれ?」
光が収まった後に残ったのは、燃え盛る火竜でも、神々しい風の精霊でもなかった。
祭壇の石畳の上にポツンと佇んでいたのは――濡れたような黒い羽を持つ、一羽の、どこにでもいる「烏」だった。
「カー、と鳴いた」
烏は首を傾げ、つぶらな瞳でじっと俺を見上げてくる。
それと同時に、俺の脳内に無機質なシステム音声が響き渡った。
『――神授の儀を完了。テイマー:天野漣。パートナーモンスター:黒烏(初期状態)を登録しました』
『ステータスを展開します』
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【黒烏】
現在のレベル: Lv.1
属性: 星 ※戦闘魔法・物理適性なし
保有スキル: 【導き(未覚醒)】
戦闘力評価: 測定不能(一般野生動物と同等)
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「ぷっ……はははは! おい見ろよ、カラスだってよ!」
「属性が『星』ってなんだよ! 火とか水みたいな戦闘用じゃなくて、ただのハズレレアじゃねえか! ダンジョンの一階層のゴブリンに一突きで焼き鳥にされるぞ!」
静寂の後、神殿内に爆発的な嘲笑が沸き起こった。
エリートコースを歩む同級生たちが、お腹を抱えて俺を指差している。神殿の神官さえも、哀れみと同情の入り混じった目で俺を見ていた。戦闘力、皆無。ハズレ枠。それが、俺に下された神の評価だった。
だが、笑い声が耳に届くなかで、俺は不思議と冷静だった。
足元から羽を羽ばたかせ、俺の肩へと飛び乗ってきた黒烏。その小さな爪の感触が、なぜかとても愛おしかった。
「お前、戦う力はなさそうだけど……すごく賢い目をしてるな」
指先で頭を撫でてやると、カラスは嬉しそうに目を細め、俺の頬に嘴を寄せてきた。
その瞬間。俺の視界の端で、カラスのステータスの文字がかすかに歪んだ。
『――【導き(未覚醒)】の条件が一部満たされました。これより、および隠しダンジョンへの最短ルートの限定探知を開始します』
「……え?」
俺の目に、神殿の床を透過して、遥か地下の奥深くへと伸びる**『光の道標』**がはっきりと見えた。他の誰にも見えていない、まばゆい光の矢印。それは、この街のダンジョンの、誰も知らない秘密のエリアへと真っ直ぐに伸びていた。
「カー!」
肩の上のカラスが、ニヤリと笑ったように鳴く。
「……なるほどな。お前は『ただのカラス』なんかじゃない」
俺は肩のカラスの羽をそっと撫で、嘲笑を背に受けながら、静かに神殿を後にした。
戦闘属性は皆無。だけど、夜空の星が旅人を導くように、この『星属性』の烏は俺を最強へと導いてくれる。
ここから始まるんだ。レベル1の俺と、この「導きの烏」の、世界をひっくり返す百鬼夜行の旅が。




