第9話 恐竜時代
古代の海は終わらなかった。いや、正確にはアンモナイトの海は終わっていた。だが、俺の興奮は終わっていなかった。
「管理神」
「なんだ」
「次」
即答だった。
「少しは余韻に浸れ」
案内神は頭を抱えながら言った。
「浸ったよ?」
「どれくらいだ?」
「・・・3秒くらい?」
「短いわ!」
管理神は少し笑った。
「では次だ」
管理神が再び光に手を伸ばす。光が変化し、海が消える。大地が広がり、森が広がる。巨大な植物、巨大な生物。空気すら今とは違った。
そして、遠くで何かが動く。大地が揺れる。
ドンッ。ドンッ。
俺は固まり、目を見開く。呼吸すら忘れていた。
「・・・いる」
「あぁ」
管理神は頷く。
そいつは森の奥から姿を現した。巨大な姿だった。
図鑑で見た、映像で見た、模型でも見た。
だが、本物は全く違い、圧倒的だった。
「恐竜だ・・・」
俺は呟いた。ずっと見たかった。子供の頃からずっと。
目の前を巨大な群れが歩き、首の長い恐竜が歩くたび、地面が震える。
「でか・・・」
それしか言葉が出なかった。今だけは管理神も案内神も何も言わなかった。
時間は流れ、景色が変わる。
そして、再び地面が揺れる。森がざわめき、鳥たちが飛び立つ。
俺は振り返る。そして固まった。
「うぉ・・・」
巨大な牙、巨大な顎、圧倒的な存在感。
ティラノサウルスだった。
その存在感に恐怖はあった。だが、それ以上に感動していた。
ティラノサウルスが歩く、吠える。生きているのをみるだけで、胸がいっぱいになった。
ティラノサウルスを見つめていると管理神が聞いた。
「どうだ」
「最高」
俺は即答した。管理神は笑っていた。
その後、トリケラトプス、ステゴサウルス、プテラノドン。次々と現れる恐竜に、俺の目が輝いた。いつまでも見ていられる。目の前の光景に飽きることはなかった。
そして、ふと思った。
「ねぇ、管理神」
「なんだ」
俺は真面目な顔で聞いた。
「恐竜の肉は美味いのかな?」
「・・・」
管理神は沈黙、案内神は『またか』といった表情で顔を抑えた。
「何故そうなる」
「だって気になるじゃん」
俺は当然のように答えた。
「食べたことないし」
管理神は少し考えた。
「どうなんだろうな」
「お前も考えるな!」
案内神の声が、神界に響いた。
その頃、遠くから様子を見ていた神々は
「今度はなんだ」
「恐竜の肉らしい」
「またか!」
「そうだな」
「もう驚かん」
「慣れてしまった」
良くも悪くも、神々は成長していた。
俺は再び恐竜を見上げる。まだまだ気になる。図鑑にも載っていないこと、誰も知らないこと。知りたいことが多すぎる。
だが、一つだけ確信できる。
「やっぱり行きたいなぁ」
案内神は顔を抑え、管理神は少し笑う。
やはりそうなると思っていた。
読んでいただきありがとうございました!
次回 第10話 縄文の暮らし
感想・誤字報告などいただけると励みになります!




