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第八章 古代の海

老人は人生の終わりを迎えていた。


だが恐れていたのは死ではない。


「死後の世界ってどんな所なんだろうな」


そんな好奇心を抱いたまま死んだ男。


そして死後の世界で神と出会った彼は――


「観光していい?」


神界、世界管理庫、魔界、冥界。


見たいものは全部見る。


これは好奇心だけで神々を振り回す男の物語。

第八章 古代の海


「次どこまで見れる?」


案内神は天を仰いだ。


まだ始まったばかりだった。


管理神は光へ手を伸ばした。


景色が変わる。


地球はさらに時を進める。


海。


どこまでも広がる海だった。


陸はまだ少ない。


空も今とは違う。


見たことのない世界。


だが。


不思議と美しかった。


「綺麗だ・・・」


俺は思わず声を漏らした。


海の中。


小さな生き物達が動いている。


そして。


その中に見覚えのある姿を見つけた。


「あっ!」


管理神が振り返る。


「なんだ」


「あれ三葉虫じゃん!」


管理神は少し驚いた。


「知っているのか」


「知ってるよ」


俺は目を輝かせた。


「図鑑とか博物館で見たことある」


「なるほど」


管理神は頷いた。


俺は三葉虫を見つめる。


ずっと見たかった。


だが。


本物を見るのは初めてだった。


「本当にいたんだなぁ」


思わず呟いた。


三葉虫は何も知らず海底を歩いている。


図鑑の写真とは全然違った。


生きている。


当たり前だが。


本当に生きていた。


それだけで感動した。


しばらくして。


海の奥から何かが現れた。


大きい。


そして妙な形をしている。


俺は思わず立ち上がった。


「あれ!」


管理神は少し笑う。


「今度はなんだ」


「あれアノマロカリスだ!」


管理神は少し驚いた。


「それも知っているのか」


「有名じゃん」


俺は笑った。


「カンブリア紀のスターだよ」


「でかいねぇ」


案内神には意味が分からなかった。


管理神には少し分かった。


アノマロカリスは海を泳ぐ。


三葉虫達が逃げる。


追いかける。


捕まえる。


食べる。


その全てが本物だった。


「迫力すげぇ・・・」


俺は目を離せなかった。


本で見た。


図鑑で見た。


博物館で見た。


だが。


それらとは全く違う。


生きていた。


それだけで全然違った。


さらに時は流れる。


何千万年。


何億年。


世界は変わる。


生き物も変わる。


そして。


俺はまた見覚えのある姿を見つけた。


「あっ」


管理神が振り返る。


「またか」


「あれアンモナイトだ」


管理神は頷いた。


「そうだ」


俺はしばらく見つめた。


ぐるぐるしている。


思ったより大きい。


思ったより速い。


そして。


ふと思った。


「美味いのかな?」


沈黙。


管理神が固まる。


案内神も固まる。


「・・・何故そうなる」


案内神が聞いた。


「だって食べたことないし」


「食べる前提なのか」


「気にならない?」


案内神は気にならなかった。


全く気にならなかった。


管理神は少し考えた。


「どうなんだろうな」


案内神は管理神を見た。


「考えるな」


「少し気になった」


「感染してるじゃないか」


管理神は否定できなかった。


俺はアンモナイトを見つめる。


気になる。


ものすごく気になる。


味も。


触り心地も。


匂いも。


全部気になる。


そして。


一つの結論に辿り着いた。


「やっぱり実際に行きたいな」


案内神は顔を覆った。


管理神は少し笑った。


やはり。


そうなると思っていた。


その時だった。


後ろから声がした。


「何を見ている」


振り返る。


神Aだった。


神Bもいる。


神Cもいる。


神B

「重要機密を人間に見せているのか?」


神C

「誰が許可した」


管理神

「私だ」


神A

「なぜ許可をした」


管理神

「こいつの反応が気になったからだ」


神々

「・・・」


「あの時の神様達だ」


「神様達も世界を見に来たの?」


神A

「違う」


神B

「人間の様子を見に来た」


神C

「何を話している」


「アンモナイトが美味いかどうかって話」


「どう思う?」


神々

「知らん・・・」



神A

「あいつ管理者まで巻き込んでたぞ」


神B

「早急に手を打たねばならんな」


神C

「このままでは神界全体がやつに巻き込まれるぞ」


神々も胃痛に侵されつつあった。



古代の海には。


まだまだ知らない景色が残っていた。


そして。


主人公の好奇心も。


まだまだ終わりそうになかった。


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