第49話 店主の本気
結局、一人も怪猫神を捕まえることはできなかった。
「にゃははは♪」
怪猫神は頭の上で得意げに尻尾を振っている。
「流石は神様ですね」
校長は苦笑しながらも満足そうだった。
「ですが皆さん、最後まで諦めずに走り続けました。いい訓練になりましたね」
「好奇神、約束は守るにゃ〜♪」
「わかってるよ、今度持ってくるね」
怪猫神と子供たちが遊んでいる間、料理が運ばれ始めていた。
「おい!好奇神!終わったなら手伝ってくれ!」
店主に呼ばれた俺は厨房へ向かった。
「何するの〜?」
「おう!お前が持ってきたこいつを捌きたいんだが、デカすぎてな。俺一人じゃ無理だ!お前に手伝ってもらいてぇ!魔王様もお願いします!」
「全然いいよ〜♪」
「我もか?」
「お願いします!」
「というか、さっきよくこのサイズをキャッチ出来たね・・・」
「ギリギリだわ!アホが!」
「・・・魔王さん持てる?」
「無論だ」
ヒョイ
魔王は軽々と持ち上げた。
「すげ〜、店主さんも見習わなきゃ♪」
「無理に決まってんだろ!」
「魔王様、そのままこの台に乗せてください!」
「うむ」
モササウルスを調理台へ乗せる。店主はモササウルスを捌く為の長い包丁を取り出した。
「どうやって捌くかなぁ・・・」
料理人に口を出しちゃいけないと思い、俺と魔王は黙って見ていた。
「これだけじゃダメだな」
店主はそう言うと、厨房の奥から巨大な調理器具を持ってきた。
「でかぁ・・・こんなのもあるんだね」
「お前がこの前アノマロカリスを持ってきただろ。
どうせお前のことだから、またろくでもねぇもん持ってくると思ってな!鍛冶屋に特注で作らせた!」
「流石店主さん♪」
「よし、まずは頭を落とすぞ!魔王様は頭を抑えてください。好奇神は反対側から包丁を押してくれ!」
モササウルスの解体が始まった。
首元に特注の包丁を入れていく。
「思ったよりも硬いな。好奇神!もう少し押してくれ!」
「おっけ〜♪」
二人がかりで包丁を入れていくと骨に当たった。
「この骨はこいつで切る」
店主はノコギリ状の刃物へ持ち替え、ゴリゴリと骨を切断していく。
「この骨からもいい出汁が出そうだな!」
思ったよりも余裕そうな店主だった。
骨を断ち切り、再び包丁を手に取る店主。
「好奇神!さっきと同じ要領で切るぞ!」
「わかった〜♪」
こうして頭を切り落とし、魔王が頭を持っている。
そこだけ見ると悍ましい光景だが、これは調理だ。
「次は手足を切るか。二人とも体を支えていてくれ!」
魔王と俺はモササウルスを支えていた。
あっという間に手足を切り取る店主を見て、二人は『流石店主だな』と思っていた。
「次は内蔵だ。こいつらは何食ってんだろうな!」
店主は腹を開き、内臓を取り出していく。
「さぁ、見てみるか!」
胃袋に包丁を入れる。
「どれどれ・・・くっさぁぁぁぁ!!」
店主が鼻を抑え、飛び跳ねる。
強烈な腐敗臭を放つ半分消化された魚が大量に詰まっていた。
「にゃ!クサッ!」
「そりゃ直に嗅いだらそうなるよ〜・・・クサッ」
「当たり前だな・・・クサッ」
厨房中に臭いが漂っている。
その時、俺の頭の上から何か垂れてきた。
「なんだこれ?」
「猫神が泡吹いてるぞ」
「猫神様ぁぁぁぁ!」
「さっさと洗い流して換気だ!おい好奇神!窓開けてこい!」
俺は全力ダッシュで窓を開けた。
「猫神様!生きてますか!?」
「・・・強烈だったにゃ」
その後内臓や血を洗い流し、厨房内の臭いも収まり、怪猫神も回復し、調理を再開した。
モササウルスを部位ごとに切り分け、下処理が終わる。店主は料理を考え始める。
「とりあえず食ってみるか」
店主は各部位を一切れずつ口に入れた。
「生で!?店主さん!?」
「まずは素材の味を知ってからだ!」
店主は各部位の味や食感を確認し、飲み込んだ。
「・・・よし、大体わかった」
「だが、一つの部位がとんでもねぇ量だし、初めての食材だからなぁ・・・」
「俺の直感でやるぞ!まずは脚だが、こいつは揚げた方が美味い!」
店主は揚げ物用の鍋を用意し、一口サイズにカットした脚を揚げ始める。あたりには香ばしい匂いが広がり、食欲をそそる。
「出来たぞ!」
俺たちは揚げたての唐揚げを口に運ぶ。
「・・・どうだ?」
「うまぁ!」
「うまいな」
「うまいにゃ♪」
「よし!唐揚げは他のやつに任せて次やるぞ!」
店主は城の料理人に指示を出し、唐揚げを作らせた。
「尻尾は脂もあって比較的柔らかかったからステーキだ!」
輪切りにした尻尾を鉄板で焼き始める。表面を強火で焼き、余熱で中まで火を通す。
「火を通し過ぎると硬くなりそうだからレアにした!食ってくれ!」
俺たちは切り分け、頬張る。
「うまっ!肉汁凄いね!」
「うむ、脂の旨みと肉の旨みが美味だ」
「うまいにゃ♪」
「・・・猫神様?さっきから油やら肉汁やらが顔に滴ってくるのですが」
「気にするにゃ♪」
「・・・はい」
「これは焼き加減が難しいな。俺がやった方がいいか」
店主はステーキを後回しにし、次へ取り掛かる。
その後も各部位を直感と経験で料理にしていく店主。
味見をしてお腹いっぱいになりつつある三人。
モササウルスの調理が終わり、三人が会場へ戻ると、料理はほとんど無くなっていた。
「三人とも遅かったですね」
影宰が空いた皿を片付けていた。
「俺らほとんど食べてないんだけど・・・」
「1028人以上居ますからね。早かったですよ」
少し笑う影宰。
創造神がこちらへ手を振っている。
「美味しかったよ〜♪」
「ね〜みんな〜♪」
「は〜い!」
創造神の合図で生徒全員が答えた。まるで音爆弾のような威力だった。
「美味しかったならよかったよ♪」
子供たちに囲まれて笑顔で接している創造神。
「うむ、随分と懐かれているようだな」
「あの方は好奇神様が厨房に戻られた後、私や校長と一緒に子供たちと遊んでいました。凄い方です。子供とはいえ魔族ですから、相当の体力を消費したはずです」
「創造神も俺と同じで面白いことには全力だよ。だから子供たちも懐くんじゃないかな?」
「創造神が懐かれているのも好奇神様の力かもしれませんよ?」
「まさか〜」
俺は影宰の言葉の意味を考えたが、わからなかった。
読んでいただきありがとうございました!
次回 第50話 月神
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